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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第5章 西の国編

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76.ああ、そうか。首を絞めたら話せないのか。

「誰に雇われた?」

「…………」

「おい、黙ってたっていいことないぞ。助けが来ない時点で察しろよ。お前、とっくに見捨てられてるぞ」


 男を見下ろし、やれやれと肩を竦める。

 武器を破壊してからは簡単だった。伸して畳んでやるまでに5秒もあれば十分だ。

 地面に引き倒した男の頭をぐりぐり踏みつけながら、私は困ったように呟く。


「私、グリード教官と違って得意じゃないんだよな」


 ぐいと、正面から男の首を片手で掴んで持ち上げる。

 息苦しそうに呻く男の顔を見上げた。呻くということは、まだ十分余裕があるようだ。


「拷問」


 私の言葉に、男が眼球だけを動かしてこちらを見る。


「人間って、ほら。割とすぐ死んじゃうだろ? 苦手なんだ。細かい加減と言うか、そういうの」


 首を掴む手に力を込める。赤かった男の顔が、だんだんと土気色になってきた。


「ま、て……」

「だから万が一私が、力加減を間違えても……恨まないでくれよ」

「ぐ、がッ」

「何? 聞こえないな」


 ぱっと手を離した。男の身体が地面に落ちる。


「げほ、ごほ、ごほっ」

「ああ、そうか。首を絞めたら話せないのか。ごめんごめん」


 私は笑いながら、男の横にしゃがみこんで背中を擦ってやった。

 そして、殿下に聞こえない程度の声で、そっと囁く。


「まぁでも、話す気がないなら、一緒だな」

「え、?」

「上司の前だから、いい子にしてるけど。私は正直、君が今死んだって一向に構わないんだ」


 男がこちらを見た。

 男の髪を掴んでその顔を引き寄せ、にっこり微笑んでその目を見つめる。


 拷問は冗談にせよ、尋問の類は得意ではない。力の加減が苦手なのも本当だ。

 だが……「脅す」コマンドは、私にも実装されている。楽隠居中だが一応は悪役令嬢の端くれだ。脅しや騙しは得意分野といえるだろう。


「犯人だってすぐに調べがつく。君が手を出した私の上司、実はやんごとない身の上でね。君はどうせ死刑か終身刑だ。うっかり(・・・・)手を滑らせてしまったほうが、私は早く家に帰れたりするのかな?」

「は、話す! 全部、話すから!」

「でも、脅されて話した内容なんて、本当かどうか」

「リジー」

「もが」


 どん、と、背中に何かがぶつかった。

 回って来た手のひらが、私の口を塞ぐ。


 殿下が後ろから、私に抱きついているらしいことを理解した。

 胸部の詰め物が背中に当たっている違和感が、シリアスな雰囲気をごりごりと削いでいく。靴下か何かだろうか、これは。


「これ以上は、きみがしなくて良いことだ」

「もご」

「きみの兄さんが今ここにいたら、きっとそう言う」


 そう言われて、目を見開く。

 そして、苦笑いしながら軽く両手を上げた。


 その言い方は、ずるい。

 ここにいないお兄様に怒られた気分になる。

 お兄様にバレたら、間違いなく怒られるからだ。


 殿下の手のひらと身体が、私から離れる。

 振り向くと、殿下はいやに真剣な顔で私を見つめていた。大丈夫ですよと肩を竦める。


 ちょうど騒ぎを聞きつけてやってきた衛兵に、男を引き渡し――その日の捕り物は幕を閉じた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新感謝 [一言] お兄様LOVE
[一言] リジー、お兄様には本当に弱い。 そこが素敵(笑) 黒いリジー、お兄様に甘えん坊リジー。 やはりお兄様とセットで観たい!! たまりません(^q^)
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