24.ワンフォアオール、オールフォアワン!
コーチと呼ばれないまま迎えた、御前試合当日。
集団で型を披露している候補生たちを眺めて、私は一人頷いた。
東の訓練場の候補生たちの動きも、非常によい。きちんと鍛錬を積んでいる者の動きだ。
今までこちらが負け越していたというのも、頷ける。
動きだけではない。我々西の訓練場の候補生より、全体的に背が高かった。
体格差というのは、子ども同士であれば特に、それだけで有利不利を決める材料になるものだ。
リーチが長い。身体が重い。単純だが、侮れない。
そして、顔が美しい者が多い気がする。
うちの候補生たちもなかなかだと思っていたが、向こうの候補生たちは何というか、髪のキューティクルがつやつやしている令息が多い。
あと、信じがたいことに、制服が白だった。
うちの候補生用のグレーの制服だって、何故こんなに汚れや汗が目立つ淡色にしてしまったのだろうと不思議に思っていたのに。白て。
誰が洗うと思っているのだ。いや、お貴族様のお屋敷では使用人が洗うのだろうが。
それにしたって、白はないだろう。泥汚れとかどうするのだ。……もしかして、東の訓練場では汚れるような訓練をしないのだろうか。
ぼんやりしているうちに、前座はすべて終わったようだ。候補生たちが、私たち教官の控えている競技場の隅へと戻ってきた。
少し競技場に向けて出っ張っているが、屋根もあるし椅子もある、野球場のベンチのような場所だ。
見慣れた候補生たちの顔を見回す。皆、緊張している様子だが、目は爛々と輝いていた。
相手の動きも、非常に良かった、体格差では、こちらが不利だ。
だが、決して勝てない試合ではない。一連の動きを見て、私はそう考えていた。
教官たちも、黙って私の言葉を待っている。私は息を吸って、声を張り上げる。
「ワンフォアオール、オールフォアワン!」
「ワンフォアオール、オールフォアワン!!」
私の言葉を、候補生と教官たちが繰り返した。
たぶん誰一人、意味をよく分かっていない。私を含めて。
「無様な真似は許さんぞ! 蛆虫ども!」
「サー! イエス! サー!」
キリの良いところで切ったら短くなってしまったので、明日の朝も更新します。
頑張って書いていますが、間に合わなかったら、昼になるかもしれません。





