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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第1部 第4章 長い長いエピローグ編

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30.弟だから、いいんだ。

なんとブクマが2000件を超えていました!(これを書いている時点では)

いつも応援いただいてありがとうございます! すごくうれしいです!

今後ともよろしくお願いいたします!

「…………」

「エリザベス! 私服姿も素敵デスね! もちろん、制服も素敵デスが」


 おかしいな。

 王族は、アポなしで来てはいけないと言ったはずなのだが。


 私は額を押さえて長いため息をつく。

 ついに家まで来やがった。これはもう、まごうことなきストーカーだ。

 何らかの条例に違反している。この国にあるのか知らないが。


「休日にもアナタと会えるなんて、ワタシはこの幸せを神に感謝しなくては」

「神はアポなし訪問を推奨していないと思うがな」

「姉上? どうしたんですか?」

「クリストファー」


 騒ぎを聞きつけて、クリストファーがやってきた。

 私とヨウを交互に見て、事情を察したらしい。そっと歩み出して私の隣に並ぶ。

 ヨウは不思議そうに首を傾げてクリストファーを見下ろし、次いで私に視線を向けた。


「ンー? エリザべス、そちらは?」

「あれ、学園で会ってなかったか? 私の弟のクリストファーだ」

「弟サン? それでは将来のワタシの弟デスね! どうぞ、仲良くしてくだサイ」

「…………生憎ですが。ぼくにとっての兄は1人だけですので」


 差し出されたヨウの右手を、クリストファーは握らなかった。

 表面上はにこやかだが、彼の声は明らかに怒っている。


 私も大概だが、クリストファーもクリストファーでかなりのブラコンなのである。

 お兄様関連の沸点の低さは、姉譲りだ。


「姉上。今日は一緒に出掛ける予定だったでしょう? まだ支度してなかったんですか?」


 クリストファーが私に向き直った。なるほど、委細承知だ。


「あ、ああ! そうだった、ごめんごめん」

「もう、忘れんぼなんだから」

「いやぁ、すまないなヨウ。そういうわけだから、今日はもう帰ってくれ」


 クリストファーの真似をして、私もにっこり笑って言った。ヨウも負けじと笑顔で食い下がってくる。


「では、ワタシも一緒に」

「すみません。ふたりで、という約束なので。ね? 姉上」


 クリストファーがぎゅっと腕を組んできた。

 小柄だが、すっかり男の子の体つきをしている。女の子に抱きつかれたときのような柔らかさがなかった。

 妙なところで弟の成長を感じてしまった。大きくなったなぁ。


「今日はぼくのスーツを仕立てて、姉上の靴を注文して、兄上の好きなお菓子を買って帰るんです。ねー、姉上?」

「そう、それ。最高」

「……調子がいいんだから」


 ぼそっと私にだけ聞こえるように呟くクリストファー。そう、私は調子もよければ性格もよいのだ。


「エリザベス。エドワードから『みだりに触らせるな』と命令されていたのに」


 私たちの様子を羨ましげに見ていたヨウが、唇を尖らせて文句を言う。

 そんなこともあったかもしれないが、そもそも私は忠臣ではない方から数えた方が早いくらいの臣下である。

 都合のいい命令しか、聞く気はない。


「クリストファーは他人じゃない。弟だから、いいんだ。ね?」

「はい」


 機嫌よく私に擦り寄ってくるクリストファー。

 ともすればあざとくもあるその仕草だが、彼がやると小動物っぽくて可愛らしい。美少年は得である。

 柔らかいストロベリーブロンドを撫でてやる。


「二人は、似ていまセンね」


 ヨウがぽつりと呟いた。その言葉に、クリストファーが反応する。


「ぼく、養子なんです。姉上とは歳も一つしか変わりません。王族の方ならご存知ですよね? 貴族が、娘と近い年頃の養子をもらうことの意味くらい」


 その言い方だと、クリストファーがまるで婿養子に貰われて来たように聞こえる。

 実際はまったく事情が違うのだが、嘘は言っていない。

 やれやれ、いつの間にうちの弟はこんなに可愛げがなくなってしまったのだろうか。


 堂々と嘘をつくあたりに、バートン公爵家ではなく私という悪いお手本の影響を感じて少々罪悪感がある。

 ゲームの中のいたずらっ子なクリストファーと比べると、普段はいい子であるぶんマシかもしれないが……いつまでも可愛い弟だと思っているのは、私とお兄様だけなんじゃないかという気がしてくる。


「ノー! 貴族だからと言って、愛のない結婚なんてナンセンスデス!」

「愛?」

「ワタシは彼女を愛していマス! 愛のある結婚をした方が、幸せになるはずデス!」


 ぶっと噴き出してしまった。愛とかなんとか、胡散臭いにも程がある。


「……貴方の方に愛があっても、姉上に愛がなければ意味はありません」


 クリストファーがヨウを見て、次に私を見た。

 はちみつ色の瞳が、僅かに揺れる。


「いくら好きだって、意味がないんです」


 彼の言葉に、私は頷いた。ヨウの方にも愛はないだろうが、私にはもっとない。

 恋は1人、愛は2人で育むものだとか。前世でなんかいい感じの人がそんな感じのことを言っていた気がする。知らんけど。


「姉上には、恋愛はまだ早いです」

「クリストファー、その言い方はどうなんだ……」

「まるで、アナタの方がお兄さんみたいデスね」

「……いいえ。姉上の兄も、1人だけです。ぼくは弟です。義理の」


 やけに「義理」を強調するクリストファー。

 お兄様が聞いたら泣いてしまうかもしれないので、やめてほしい。もう我が家の誰も、彼を養子だなどと思っていないというのに。


「お引き取りを」


 私に必要以上にくっついて微笑むクリストファー。

 ヨウは似ていないと言ったが、悪いところが少々私に似てきてしまっている気がする。

 お兄様と、弟の情操教育について話をする必要がありそうだ。……まだ、手遅れではないといいのだが。


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