18.お父様に直談判
訓練場に通うというのは、私にとってこれ以上ないほど適した提案だった。
訓練場に通うのは、ほとんどが学園に入学する前の令息たちだという。
専属の家庭教師を雇えない者から、家庭教師の指導では満足できなかった者、本気で騎士を目指す者まで通っている。
同じ年頃の子どもと自分の実力を比べる良い機会だ。
訓練が終わった後なら、グリード教官を含め他の教官たちも私への稽古に時間を割いてもよいと言ってくれている。
しかもお給金がもらえる。
グリード教官いわく「公爵家のご令嬢からすりゃ微々たる額」ということだが、お金はいくらあっても困るものではない。自由になるというお金というのはありがたいものだ。
私自身は一も二もなく了承したが、問題もあった。
訓練場に通うには、毎日のように屋敷を出入りする必要がある。
中身は大人だが、私は12歳の子どもである。外出には、お父様の許可をもらわなければならない。
黙って通うことも考えたが、お父様が仕事で頻繁に出入りしている王城と訓練場は目と鼻の先だ。
かつ、訓練場は貴族令息ばかり。そこにお父様と懇意にしている貴族の息子がいないとも限らない。
以上を鑑みると、どこからか絶対にバレることになるだろう。
悩んだ末に、お父様に直談判することにした。
さすがに教官として通うとは言いづらかったので――お母様が失神してしまうかもしれない――教わる側として通うという嘘はつくことになったが。
猛反対されることを想定していたのだが、少々渋られた程度で許可をもらうことが出来た。僥倖である。
いやぁ、お父様を力尽くでわからせるようなことにならなくて、よかった、よかった。
反対したところで隠れて通うだろうと思われた説が濃厚であるが、お兄様たちが一緒に頼んでくれたのもよかったと思う。なんとクリストファーまで一緒に頼んでくれた。
めったにお願いごとを口にしないクリストファーが頼むものだから、お父様も驚いていた。あとちょっと泣いていた。
クリストファーと私たちが仲良くやれていることが嬉しかったらしい。私も少し感動した。我ながらよい兄弟に恵まれたものだ。
まぁクリストファーは、私が訓練場に通えない状態だと、家で一緒に厳しい稽古を受ける羽目になりそうだという危険を察知しただけかもしれないが。
短くなってしまったので、明日の朝にもう一話更新したいと思います。
間に合わずに昼になってしまったらすみません。