25.出禁
控室でロベルトと健闘を称え合っていると――実質感想戦みたいになってきていたが――剣術の教師と学園長が飛び込んできて、来年の剣術大会出禁を直々に言い渡された。
模造剣でも鉄を切れるようなやつには危なくて試合などさせられない、とのことだ。
言われてみればそれもそうだな、と思った。一人だけ真剣で戦っているようなものだ。
そもそも、エキシビションマッチに参加できただけでだいぶ譲歩してもらったと思っている。
何より、私にとって大切なのは、ゲームの進行している今年の剣術大会で出番を作ることだった。
来年以降どうなろうが関係あるまい。
そう思ってはいはい言っていたのだが、ロベルトは納得がいっていない様子だった。
「対戦相手の俺が気にしていないと言っているのに、どうしてたい……バートン卿だけが出場禁止になるんだ!」
「そうは言いましても、御身に何かあっては」
「では俺も出場禁止にすればいいだろう!」
「いえいえ。今年は盛り上がりましたし、殿下の素晴らしい腕前を見たいという生徒も多いでしょう。ぜひ殿下には来年も……」
「そんな馬鹿な話があるか!」
ロベルトは今すぐにでも噛みつきそうな形相をしていた。
こういう表情をしていると、ゲームの中のロベルトと同一人物だったなぁと今さらながらに思い出す。ガタイが良い分、ゲームの彼よりも迫力がありそうだ。
背も高いし、腕っぷしも強いうえ、一応王族だ。すごまれたらさぞやりにくいだろう。学園長はおろか、剣術の教師もすっかり尻込みしてしまっている。
やれやれと肩を竦めてから、彼をなだめにかかることにした。
「よせ、ロベルト。私はいい。今年で十分楽しんだ」
私の言葉に、ロベルトは悔しそうに唇を噛んだ。
学園長はと言えば、私を信じられないものを見るような目で見ていた。
私が引いたのが意外だったらしい。それでは、まるで私がいつも無理を通させているようじゃないか。
心外だ。
「じゃあ……じゃあ、俺も来年までに模造剣で鉄を斬れるようになります! そうしたら俺も出場禁止になりますよね!?」
お前はどうしてそう斜め上方向の努力をしようとするんだ。
なかなか矛先を収めようとしないロベルトを、くいくいと指で呼び寄せる。
素直に寄ってきた彼に、耳打ちした。
「来年までに候補生に師範代を増やして、お免状持ちだけで『あぶれ者たちの剣術大会』でもすればいいだろう。もちろんこっそりでもいいし……」
ちらりと、学園長に視線を送る。ほんの一瞬のことなのに、彼は機敏にそれを察知して身を縮めていた。
「本会場を乗っ取ったっていい」
私の言葉に、ロベルトは目を見開いた。そして私の顔を見つめる。
にやりと不敵に口角を上げて見せれば、ロベルトの瞳から放たれたキラキラが私に降り注いだ。
「ほら、行くぞロベルト。第一試合が始まってしまう。アイザックの応援をしてやらないと」
「はい! お供します! どこまでも!」
嬉しそうに後ろをついてくるロベルトに、私は大げさなやつだなと苦笑いした。