3.自称「地味で普通の庶民の子」
なるほど、愛らしい。
それが彼女を見た最初の感想だった。
ゲーム内では主人公の顔はあまりはっきりとは描かれず、外見の描写としては赤とピンクの中間くらいの色のセミロングの髪、背があまり高くないことと、他には自称「地味で普通の庶民の子」という程度だったはずだ。
しかし実際に主人公を目の前にしてみれば、これのどこが地味で普通? 目ん玉どこについてんだ? と聞きたくなるほど、可憐で清楚で華奢で笑顔がキュートでありながら芯が強そうで、何もしていなくても「この子はきっと素敵な女の子に違いない!」と思わせるような力がある……早い話が、千年に一度の美少女だった。
いや、分かる。乙女ゲームの主人公は得てして自分の見た目に自信がないものだ。それは理解している。
しかしそれにしたってこれはないだろう、と思った。家にまともな鏡があれば、「地味で普通」などと謙遜であっても言えないはずだ。
これで地味で普通だというのなら、派手で普通でないのはパリコレモデルくらいになってしまう。
というか、このイケメン至上主義の世界である。
普通に考えて、かわいくない女の子が優遇されるはずがない。
ここまでかなりモテテクを磨いてきた私ではあるが、万一相手が平安美人だった場合にはその能力を遺憾なく発揮できたかは怪しい。
いや、どうであれやりきるつもりではあったが、かなり覚悟のいる話になるところだった。
よかった、アリだ。全然アリだ、むしろばっちこいだ。
「あれ? こんなところでどうしたのかな?」
長いコンパスを生かして、悠々と、しかし一気に距離を詰める。
彼女は一瞬私を見上げるが、すぐに視線を外してしまう。
俯いて落ち着きなく手で顔を触っている……言ってしまえば挙動不審なその様子に、違和感を感じた。
何だろう。何か、ものすごく。
見覚えが、あるような?
「あっ、いえそれはあっ、わた、わたみ、道に迷っ…フヒッ、オッフ、だからあの、あっ、迷子で、デュフヒッ」
彼女が小さくボソボソと、早口で呟いた。その口調に、思考のすべてを持っていかれてしまう。
私の脳内に氾濫したのは、「アチャー」という感情と、「お仲間だ」という感情だ。
そう。
理由は分からないが、私にははっきりと分かった。
彼女は私と同じ、転生者だ。
それも、オタク……お仲間だ。
何故かと言われても説明はできない。最早直感でしかなかった。しかし、間違いないという妙な確信があった。
なんと! ブクマが剣盾のポケ○ンの数はおろか、1000件を超えていました!
すごい! ありがとうございます!
応援のお礼に、活動報告にちょっとした小話をアップしました。
よろしければぜひご覧ください。
(R3.6.8追記)活動報告にあった小話は本編中の「閑話」、または「番外編 BonusStage」に引越し済みです。