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9.武器はないのか、武器は!

 私は悩んでいた。


 身長は伸び悩んでいない。むしろめきめき伸びた。ここ2年でまた20センチ以上伸びている。

 夜中に足が痛くて目が覚めた時期があり、最初は剣の鍛錬のしすぎによる筋肉痛かと思ったのだが、どうやら成長痛だったようだ。


 10歳時点ですでに日本の女性の平均身長を軽々上回っている。

 5つ上のお兄様ともさほど変わらないくらいだ。子供のうちは女の子の方が背が伸びる時期が早かったりするので、妥当と言えば妥当だろう。


 悩んでいたのは、自分の方向性である。

 自室でスクワットをしている私に、侍女がお茶を持ってきた。目を合わせて、微笑む。


「ありがとう」


 ぽっと年若い侍女の顔が赤く染まる。


 メイクの腕は上達したし、身長が伸びてすらっとした身体つきになった。

 礼儀作法は、7歳時点からこのエリザベス・バートンの身体にしっかり染み付いているので完璧だ。


 剣術の方も、最近は以前の家庭教師ではなく、お父様がどこからか引っ張ってきてくれた騎士団候補生の教官に教わることができている。

 さすがにまだ勝てないが、筋が良いと褒められた。


 加えて、公爵家の侍女はたいていが花嫁修業に来ている下位貴族のお嬢さん方だ。男性への免疫はほとんどない。

 それらの要素が相俟って、男慣れしていない侍女くらいなら簡単に落とせるようになった。


 最近は屋敷の侍女を片っ端から実験台にしたことで、侍女長にそれはそれは怒られた。

 何か怒られるような真似をしたわけでもない。

 少しウインクしたり、荷物を持ってやったくらいなのだが、侍女長いわく仕事にならなくなる者が続出しているらしい。

 順調だ。順調にモテている。


 しかしそれはあくまで、男慣れしていない侍女に効果があるだけだ。

 私の相手は主人公である。攻略対象を全員落とせるだけのポテンシャルと、主人公補正で攻略対象のモーションを「やさしさ」に変化させてしまう鈍さを持った主人公である。


 そして私は、ゲームのパッケージが光り輝いて見えるほどの美貌を持ったイケメン攻略対象たちと競い合って、勝たなければならない。

 他の攻略対象を置いてでも、私のルートに入ってもらわなくてはならない。


 その2点を考え合わせると、今の私の実力では不足している。

 ちょっとイケメンで、ちょっと背が高くて、ちょっと礼儀をわきまえているだけの少年(女)だ。

 身分と剣の腕は及第点だろうが、モブの枠を出ていない。自分で言うのも悲しいが、ぱっとしないのだ。


 そういうわけで、私は自分の方向性とかいう若手芸人じみたことで悩んでいるのである。

 せめて、アピールポイントが欲しい。何か武器はないのか、武器は!


 良いアイデアが浮かばないままスクワットの回数ばかり増えているところに、規則正しいノックの音が響いた。

 軽く一礼して、侍女長が部屋に入ってくる。

 まずい。また侍女に粉をかけたことがバレたのか。


「旦那様がお呼びです」


 ……怒られる相手のグレードが、想像より2段ほど高かった。

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