1通のメール
「おい一」
「な…なに?」
「今の《討伐プレイヤー》って誰だ?」
「え?僕たちのことじゃないかな?」
ゴクリと二人は唾を飲んだ。
「なぁ討伐報酬2万ってリアルマネーか?」
「分からない」
「一も討伐プレイヤー名は伏せたのか」
「うん。一応念のためにね」
二人は戸惑いつつも
零と一はグレーダーウルフを討伐したあとグレーダーウルフが落としたドロップアイテムの毛皮と牙に触った。
すると
《アイテムボックスに収納しますか?》
【はい】【いいえ】
と表示されたので俺は一旦収納しておこうと思い【はい】を選択した。
《アイテムボックスはステータスボードから見ることができます》
(ステータスオープン)
と頭の中で唱えてステータスボードを開くと
右下に宝箱のようなマークがあった。
そこを開いてみると
[グレーダーウルフの毛皮]
[グレーダーウルフの牙]
と表示された。
「ステータスボードの右下にある宝箱のようなマークがアイテムボックスらしい」
「へぇーなるほどねー、僕のアイテムボックスには毛皮と牙、入ってないね」
「俺が収納したからかもな、1回出すからそれに触ってみてくれ、触った時に《アイテムボックスに収納しますか?》って出るから【はい】を選択して収納してくれ」
「分かった」
そう言うと俺は
[グレーダーウルフの毛皮]と
[グレーダーウルフの牙]を選択して
[取り出す]というところをタップした。
すると俺の目の前にさっき拾った毛皮と牙が何もないところから現れて落ちた。
「それを触ってみてくれ」
「了解、ん?表示されないぞ?」「ペタッ」ダメだ表示されない」
「おいおい演技しなくていいから、さっさと収納しろ」
「ホントなんだって!」
「おかしい、直輝がこんな演技ができる訳がない。ハッ!まさか【一】になったからできるようになったのか?」
「だから、ホントに表示されないんだって!」
「退いてみろ、俺が触る」
そうして一を横に退かせたあと俺が触るとあっさり表示された。
「表示されたぞ?」
《アイテムボックスに収納しますか?》
俺が最初に触った時同じでそれが表示された。
俺が触ると表示されるのに、一が触ると表示されない。
「もしかして、ドロップアイテムって最初に触った人が収納できるのかも」
ふむ確かにその可能性はある。
しかし、それだと討伐してドロップした瞬間に横からかっ拐うことができる。さすがに自由な世界だからってそこまでお粗末なシステムではないハズだ。
「最後にフィニッシュを決めた者か、最もそのモンスターにダメージを与えた者だと俺は思う」
フィニッシュを決めた者であればこれも横から割り込んでかっ拐うことができるかもしれない。
だが、どちらの可能性もあるのでまだ分からない。
「もう一回ボスを討伐してみたら分かるかもな」
「そうだね」
「オートラスはボスを討伐したから他のエリアに向かうか」
「じゃあ、こことは真逆のマラビラス森林に行かない?僕、前からマラビラス森林に行きたかったんだよ。あの大木を見てみたい。」
「そうか、ならマラビラス森林に行くか」
「おっけー、ところでささっきステータスボード開いた時にアイテムボックスの横のメールみたいなマーク1ってなってなかった?」
「そういえば、なってたな、開いてみるか」
「確認してみようか」
そうして二人でメールを確認するとその内容は
《おめでとうございます》
《零様は見事オートラスのボスを討伐なさいました》
《よって零様には討伐報酬2万円(現実世界)を贈呈いたします》
《今後ともNLGをよろしくお願いいたします》
二人は少しの間そのメールを開いたまま立ち尽くしていた。