序章
あるところに、神様がいた。神様は悩んでいた。
自分の作った世界が、思った通りに動かない。なぜか、どう頑張っても好まぬ方向に進む。
神様は思いついた。
世界にヒーローを創り出そうと。
神様は早速行動を起こした。出来るだけ、純粋で強い心の人間がいい。
神様は自分の作った世界に数人の魂を引きずり込むと、時間をずらして少しずつ転生させた。
神様は嬉しく思った。これで、ようやくこの世界も自分の思う方向に動き出す。
が。
やはり、うまくなどいかない。
どうもこの人物たちでは、正義のヒーローになれない。
どうしても、力を与えたものは世界から迫害されてしまう。もしくは慢心し、傲慢に生きたり、神様が望まないパターンの人生を歩んだりしてしまうのだ。すでに、二人を残して死んでしまっていた。
どうして、うまくいかないのだろう。
神様はひどく落胆した。
しかし。神様は最後に命を与えた人物が歩み始めた人生を眺めているうちに、なんだか自分の思っているのと違う方向へと、この人物が動き出しているらしいことに気がついた。
神様は理解した。そして、嬉しくなった。
この人物なら、もしかしたら何かを変えられるかもしれない。この魂に見出した見込みは、別の方向であっているらしい。
望んだ通りの結果にならなくても、きっと大丈夫だ。先の読めない、面白いお話を見られるかもしれない。
実は、神様は世界の未来を予知する能力を、ずいぶん昔に捨ててしまっていた。その方が面白いからだ。だからこそ、より一層期待してこの人物の人生を見ることにした。
この人物に関わった人物たちの物語もきっと、面白いだろう。そちらを見るのも楽しみだ。
神様は満足そうに笑うと、その人生の観測を改めて始めた。さあ。
どんな物語が、待っているのだろうか。