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王都の縛りは厳しくて

書籍版「学園騎士のレベルアップ!」発売から2日! 毎日うるせえよ、って思うかもしれませんが、以前、発売前後にちょろっと告知書くだけにしてたら「もっと告知してくんないとわからないんですけど?(半ギレ)」って突っ込まれたことがあるんですよね……。

でもオイラ、それを理不尽とは思わない。だって本を買ってくれる人は無条件でいい人だから(ピュアハート)。

「あとはコイツらの売り先を見つけなきゃな〜」


 少しだけ軽くなった(・・・・・)リュックを揺すりながら俺は街を進んだ。

 あのドワーフふたりには、お金を渡したらすぐに「許す!」と言ってはくれないだろうなとは思っていた。だから別の「贈り物」をすることにした。

 成功するかはわからなかったけどね。でも、俺が持っていったのは貴重品であることは間違いないからさ。

 そう——背負ったリュックに入っている、キノコ(・・・)である。

 ふたりが選んだのは「酒のつまみに最高!」と言っていた種類のもので、薬効が低く売値としてはさほど高くないために全部あげたらめちゃくちゃ喜んでいた。それこそ売値は高くないので、あまり採取されず、市場にも出回らないらしい。

 ダメもとだったけど気に入ってもらえてよかった!


「手間暇かけて下処理しといてよかったぜ」


 森で見つけた希少なキノコは、俺が下処理していた。大抵は乾かしておけばオーケーなんだけど、ものによっては高濃度のアルコールに漬けたりする必要もある。そうすることで日持ちがして、売りやすくなるわけだ。

 ありがとう、行商人のオッサン! 俺がオッサンに卸すのを見込んであれこれ教えてくれて!「隠者の秘め事」を収穫したまま放置して、腐らせたのを見せたときには本気で切れられたからな……腐らせるくらいなら俺が飲むのにと怒鳴られたからな……オッサンは行く先々の夜の街へ繰り出すのが趣味らしい。うらやま……しくはない。なぜなら13歳の俺の性欲はまだまだ発展途上だからだ。

 いやしかし考えてしまうよな。今ならオリザちゃんなんてストライクゾーンを大幅に下回って、ボールが地中にめり込むほどだからなんとも思わないけど、俺が15歳くらいになってギンギンになってしまったらオリザちゃんにも欲情(ギンギン)してしまうかもしれない……。

 危険だ。15歳までに18歳以上の彼女を作ろう。あるいは王都の夜の街に詳しくなろう。

 ……でも誰に聞けばいいんだ?


 ——やるじゃねえかガリ勉。お前、どこの女に夜這いすんだ?


 そのとき俺の脳裏によぎった、オレンジ色の髪を刈り込んで蛇のタトゥーを入れたでっぷりしたフルチン男。

 よし……鍛冶工房での貸しを返してもらおう(名案)。


「お、ここなんかどうかな」


 あれこれ考えながら歩いていた俺は、錬金術と薬剤の用品店を見つけた。錬金と薬ってのは隣り合う領域なんだよな。材料と材料をぶっ込んで魔力的ななにかを作るという点は同じで、それらすべてを網羅した意味での「錬金」、人間の身体に効くものに限定するのが「薬」だ。

 さてさて。

 リュックに詰まったはち切れんばかりの(ドリーム)はいったいいくらで売れるかなぁ? い〜っひっひっひ。




   * リット=ホーネット *




 オリザの足の採寸が終わると、ドワーフの兄弟はテキパキとオリザとともに打ち合わせを始めた。戦闘に興味が薄いリットはそれを眺めながら、考えていた。


(ソーマのヤツ……きっとかなりのお金を支払ったんだ)


 そうとしか考えられない。

 先ほど確認のために「金をもらったのか」と遠回しにドワーフに聞いたが答えてはくれなかった。だけれどもそうとしか考えられない。

 上級生が踏み倒した借金に、迷惑料も込み。いったいいくらになるのか……頭がくらっとくるリットである。それくらい払わないとここまで嬉々として働いてはくれないだろう。


(いったいいくらなんだろう? 大金貨1枚(100万円相当)? あるいはもっと……)


 ぶるりと寒気がする。


(あのバカ! どこまでお人好しなんだよ!? ただでさえアイツは自分のお金を「投資」とか言ってクラスにばらまいているのに……)


 ソーマは統一テストの後に「ボーナスだ」と言って成績上位者に小金貨(5万円相当)を渡そうとした。ルチカやリット、オリザなどが対象だったのでルチカとリットが断ると、オリザももらうにもらえなかった。プライド的な意味で。

 ただ50位以内だったマール、バッツ、シッカクの3人や他のクラスメイト2名ほどがもらっていた。

 それだけで小金貨5枚! 学生が簡単に稼げる金額ではまったくない。


(もう、財布の中はカツカツだろ? 自分を滅ぼしてどうするんだよ……)


 はらはらする。今だって単独行動をしているソーマは、いったいなにをしでかすつもりなのか——。


「おいリット」

「…………」

「リット!」

「わっ!? あ、な、なに? オリザ嬢」


 呼ばれていたことにも気づかないほどに考え込んでいた。


「——お前、ソーマについててやれ。心配だろ」

「え!? な、なんで……むしろオリザ嬢をこんなところにひとりにしたらマズイでしょ」


 こんなところとはどういう意味じゃ! とデコが笑いながら言う。


「アイツをひとりにして、なにも起きないわけがないだろ」

「そ、それは確かに。……うん、わかった。ボクが行ってくる」

「頼んだ」


 そうオリザに背中を押され、リットは鍛冶工房を飛び出していった。


「…………」

「……嬢ちゃん、いいのかい?」

「なにがだよ」

「いーや、別によ。嬢ちゃん自身が行きたそうな顔をしていたからな」

「ハッ。アタシは面倒ごとには巻き込まれたくないね。それにリットのヤツ……」


 とオリザはなにかを言いかけたが、その先の言葉は出てこなかった。




   * ソーンマルクス=レック *




「ま、また、買い取り拒否……」


 がっくりとうなだれて俺は店を出た——実は売り込みに失敗して、これで3軒目なのである。

 1軒目は「子どもの持ち込みなんぞ聞く耳もたん」という理由で追い出された。

 2軒目は思いっきり安く買いたたいてきたのでこっちから願い下げた。

 3軒目は「買い取りできません。法律上の理由で」と生活にちょっと疲れた感じの巨乳美人に言われ——そこで初めて俺は、この王都における商慣習みたいなものを知った。


「売り込みには出入り業者としてのライセンスが必要ってマジかよ」


 そのライセンスは役所が管理していて、商会として登録していないとダメということだった。

 美人が教えてくれたのだが——美人を前にしても興奮よりも母性を感じてしまう自分が悔しい——つまるところ一般商店は卸業者から仕入れている。だから俺が卸業者ならオーケーということのようだ。

 だけど今から商会として旗揚げなんて面倒にもほどがあるよな? いや、ゆくゆくを考えたらやってもいいのかな……?

 1軒目や2軒目は「闇取引」として個人的に買い取っているが、逆に言うと足下を見てくるような店……ということのようだ。3軒当たって2軒がハズレって王都ヤバくない? え、俺の運が悪いって話?

 じゃあ俺は卸業者に売り込みをかければいいのかっていう話になるよな。

 だけども、業者は決まった場所からしか買い取らないらしい。

 特殊な「大規模契約農家」か、「協同組合(ギルド)」だ。

 ギルドって一口で言っても「冒険者ギルド」もあれば「農業ギルド」もある。「錬金術ギルド」や「建築ギルド」、それに「清掃ギルド」なんてのもある。

 田舎では、物さえあればお金と交換できたというのに、都会の不自由なことよ!


「……どうすっかなー……」

「なにをそんなに困ってるんだい?」

「いやー実はさ、俺が持ち込んだブツを店が買ってくれなくて……」

「そりゃそうだよ。個人からの取引を王都でやられたら、中間で利権をむさぼってる貴族がブチ切れるもの」

「えっ、これって貴族の利権なの——ってリット!?」


 なんかふつうに話しちゃったけど俺に話しかけてきたのはリットだった。

茶茶麦茶さんからレビューいただきました! ありがとうございます。

あったけぇ……レビューコメントがあったけぇよ……!

前にも書いた愚痴なんですが、今度はレビューを使ってdisってくる人がいて凹んでいました(該当レビューは削除しました)。disを外側に向けて発信するって……そんなん、心が真っ黒になるだけじゃない?

でも、喜んで読んでくださる人もいるんだなって。いやむしろそっちのほうが多いんですよね。うん、がんばります。

茶茶麦茶さんやその他の方からいただいたレビューはこの作品ページの上部にある「レビュー」から見ることができます~。

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