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学園騎士のレベルアップ! 〜 レベル1000超えの転生者、落ちこぼれクラスに入学。そして、  作者: 三上康明


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密会のお誘いは突然で

おそくなってごめんなさい! 投稿したつもりがすっかり忘れていました……これも全部花粉が悪いんや……(鼻水垂らしながら)。

   * リエルスローズ=アクシア=グランブルク *




 伯爵家に生まれたリエリィは馬車になんて飽きるほど乗っていたが、さすがにこれほど贅をこらした馬車に乗るのは初めてのことだった。

 それほどまでに、伯爵家と公爵家の財力に差があるのか——とそう実感した。


「急な招待で申し訳ありません」

「……いえ」


 馬車の室内にいるのはキール、リエリィのふたりに、公爵家の人間だった。リエリィの見るところその総白髪の男性は公爵家の家令(バトラー)のようだった。召使いのボスであるバトラーは執事とも言われる存在であり、邸宅内の把握はもちろん、公爵の仕事を手伝うことも大いにある。

 それだけにキールへの接し方も気安いものであり、単なる召使いではないとリエリィは思ったのだ。

 そしてそんな人物がここにいることで彼女もまた緊張していた。


「ほっほっ。しかしグランブルク家のお嬢様がこれほどお美しいとは……お祖父様もたいそうおかわいがってらっしゃることでしょうね」

「はい。お祖父様には厳しくも愛のあるご指導をいただいておりますもの」


 リエリィのグランブルク家は、彼女の祖父が大功を立てたことで伯爵へと位が上がっている。


「リエルスローズ嬢、今回のこと(・・・・・)について私からお願いがあるのです」


 そこへキールが切り出した——「今回のこと」とはソーマのことであることは疑いようがない。

 しかしバトラーがいる場所で話すということは、それだけキールが本気でこの問題に取り組んでいるのだろうと察せられる。

 そこまで認識した上で、リエリィはしっかりとうなずいた。


「……あの決闘場にいた貴族家のうち、およそ半分は黙らせることができました。問題は残り半分ですが、これがいくら手を回してもなびきません。確実に、我がラーゲンベルク家の敵対派閥に組み入れられていると思われます」

「それは——おかしいですもの」

「なぜそう思われます?」

「ソーマさんが目障りなのは他ならぬあなた、キルトフリューグ様を学年トップに押し上げるためですもの。でしたらキルトフリューグ様の敵対派閥がソーマさんを追放することは意味がありません」

「…………」


 ちらり、とキールがバトラーと視線を交わす。バトラーが満足そうな笑みを浮かべる。


「さすが、こういった駆け引きにはお強いですね。私も最初はそう考えましたが……結論はやはり、ラーゲンベルク家の敵対派閥だろうと思われます」

「理由をうかがっても?」

「はい。彼らはむしろ私を恐れてはいないんです」

「…………?」

「私を乗り越えてトップになれる、とそう思っているんです。しかしソーマくんだけは明らかに未知数。しかも『累計レベル12』ならば勉強だけに専念する可能性がある。そうなれば座学ではトップを取れないかもしれない——と考えたようです」


 その話を聞いたリエリィは目を瞬かせてから、ハッとした。


「——つまり、敵はこの学年にいる、と……? ソーマさんだけを排除すれば、あなたに勝って学年トップになれる——それほどの器だと!?」

「お察しのとおりです」


 まったく焦った様子がないキールを見て、さらにリエリィは気がついた。


「あなたは……それが誰かわかっているのですね」

「ええ、ですが今のあなたには関係のないこと。知っておいて欲しかったのは、私がソーマくんを本気で助けたいと思っていること。そのためにあなたの協力が必要なのです——」




   * ソーマ *




 あー、憂鬱だ。めちゃくちゃ憂鬱だ。

 テストが行われてから3日後には結果が発表されるのだけれども、その間、俺は「部屋に閉じこもって出るな」とリットを始めみんなに言われてそれに従っている。

 あれから丸2日経っている。

 明日はテスト結果の発表日だ。

 スヴェンはちらちらとこちらを見ていたけれども、しょんぼりしながら外へと出ていった。ふーむ……どこに行ったのかな? わからないなー(彼の手には模擬剣があった)。

 俺さ、スヴェンと約束してたじゃんか。

 テストが終わったらアイツの累計レベルを確認してやる、って。

 でもアイツのほうから言ってこないのよ。確認してくださいって。たぶんアイツなりに遠慮してるんだろうなーって思うじゃん? だから俺が聞いたんだ。


 ——スヴェン、レベル見てやるよ。


 って。

 そしたらアイツ、


 ——師匠のことが終わってからにします。


 だって。

 めっちゃ知りたそうなのをぐっと我慢してさ……あのスヴェンが俺に気を遣ってるんだもんよ……。


「……悔しいなぁ……」


 やっちまったもんはしょうがないし、後悔はしてないんだけど——もっとやりようはあったんじゃないかってそんな気がしてる。いや、それが後悔ってことか? まあいいや。

 貴族を相手にするってそれくらいめんどくさいことなんだよな……。

 今、俺が寮から外に出たら襲撃されるとかリットが真顔で言うんだもんよ。そのリットはなんか情報集めるだか裏工作だかのために出てて帰ってこない。アイツもマジで何者なんだ?


「——はい、開いてるよ」


 そのときノックが聞こえたので応えると、ドアが開いてミイラ男が……じゃなかった、包帯でぐるぐる巻きになったトッチョが入ってきた。


「……よう」

「なんだ。もう歩けるのか? 丈夫だなー」

「…………入るぞ」

「いいよ。俺しかいないけど。ってかルチカは?」


 のっそりと入ってきたトッチョはリットのところのイスを引き寄せると、顔をしかめながら座る。まだあちこち痛むようだ。


「ルチカは、さすがにこれ以上いちゃマズイだろってことで女子寮に戻った」

「そうか」


 甲斐甲斐しく手当てしてたもんなぁ……。医務室の先生を一瞬で青ざめさせたあの大ケガだもん。


「……ソーマ。ごめん」

「なんだよ急に……調子狂うな」

「決闘場のこともそうだし、俺の治療も」


 魔法的ななにかが含まれている治療薬は別料金で、しかもびびるくらいに高価なものだったけれども俺はそれを頼み、治療してもらった。

 おかげで夏まで俺の財布はもたなさそうだ。ピンチ! いやそれ以前にすぐさま退学にさせられそうではあるんだけども。


「いや、治療薬の代金は貸しだからな? 言っただろ、俺。投資だって。ちゃんと出世して返せよ」

「……わぁってるよ」


 ふてくされたようにトッチョは言ったが、こいつはこれくらいな感じがいい。調子が出てきたな。


「で、ソーマはどうすんだよ」

「どうするって?」

「やっぱり……退学(クビ)か? 寮長が『ガリ勉小僧の退学を祝って乾杯』とか言って酒飲んでたぞ」


 あのフルチン先輩め……。


「でも寮長も……なんかさみしそうだった」

「え? なんで」

「なんだかんだお前みたいな……変なヤツが入ってきて喜んでたんじゃねーの」

「そうかな」

「そうだよ」


 あのフルチン先輩がねぇ。

 まあ、そう思ってくれるならちょっとはがんばった甲斐があった——いや、俺あんまりここで実績残してないよな? むしろ女子に夜這いをかける仲間だと思われてただけじゃないのか?

 俺はそれからトッチョと、ぽつりぽつりと、特に盛り上がるでもなく会話を続けた。トッチョは槍の話をしているときだけがいちばんテンションが上がっていて「アレがあればお前に勝てるのによ」とか言っていた。ほーん? たかだかエクストラスキル1発で俺に勝てるとでも?

 手合わせしてやりたいけど……もう、ダメっぽいしなぁ。

 はぁぁぁぁぁ。

 夜も更けてから戻ってきたリットの表情は浮かなくて、彼の活動はあまり奏功していないようだった。

 スヴェン? 自主トレが終わってスッキリした顔で寝てる。こいつくらいふだんどおりだとありがたいんだけどなあ。なんかみんな、俺を腫れ物扱いしてる感じがしてちょっとさみしい。

 あとちょっとしかいられないならもっといっしょにいようよ!

 俺たち仲間じゃん!

 平日は夜遅く、休日も返上して勉強した仲間じゃん!

 ……あ、これ恨まれてますわ。むしろ嫌われてる可能性すらありますわ。


「……寝よ」


 日付も変わった深夜、ひとりで眠れなかった俺だったけど——そりゃそうだ、一日中家にいて疲れもなんもないんだから——さすがに寝るべきだと思って目を閉じた。

 明日は、試験結果の発表だ。

いよいよ試験結果発表です。

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