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異変が起きるのはいつも唐突で

直前ストーリーのあらすじ

ーー

冬休みとインノヴァイト帝国での冒険

冬休み、ソーマはスヴェンと共に彼の故郷であるインノヴァイト帝国を訪れます

スヴェンの父親が「流水一刀流」の当主であるアラン=ヌーヴェルであり、「剣匠」の称号を持つことが判明します。スヴェンの天稟は剣術に特化しており、父アランは息子の才能を諦め、あえて剣術をデタラメに教え、王国に送っていたことが示唆されます。

ソーマはスヴェンの父アランと、帝国の剣の頂点に立つ**「剣聖」**に立ち会い、スヴェンが父の剣術を超え、その実力を認めさせる手助けをします。

ソーマは自身のエクストラスキルを駆使して剣聖と渡り合いますが、最終的には敗北し、改めて己の未熟さを痛感します。

この旅で、ソーマはウェストライン校の双子、リッカ=フランケンとテムズ=フランケンと再会し、彼らの真の天稟(リッカは身体能力全般に優れる「歩みを止めぬつわもの」、テムズは「魔導」に優れる「道を求むる聖者」)を発見します。ソーマはテムズに魔法の基礎を教え、彼の才能を開花させます。

ソーマは旅先で得た「隠者の秘め事」などの希少なキノコを売却して資金を得たり、学園で**「物産展」**を開催する計画を立てるなど、その商才も発揮します。

ーー

AIの要約すごい。すごいけど、アランが勝った剣匠戦とか「雷火剣術」とかスヴェンの兄弟子のジャンの話とか一切なくなっちゃった!

思い出せない方は読み返してみてね。


本編再開です。

 1月も中旬になると朝はめちゃくちゃ冷え込んでくる。空はどんより曇っていて今にも雪が降り出しそうなんだけど。


「……寒々としてんなあ」


 今日から3学期が始まるっていうのに黒鋼寮を出た俺たちが見たのは閑散としている学園内だった。

 最高学年の5年生が卒業しちゃったからね、と言うには閑散度合いがエグい。

 1〜4年生はまだ在籍していて、それぞれ白騎、蒼竜、黄槍、緋剣、碧盾、黒鋼の6クラスがあるというのに、校舎付近に他のクラスの生徒もほとんどいないのである。

 いっぱいいるのはうちだけよ。黒鋼オンリー。さすがの団結力。いやいや、そうじゃない。

 あ、でも上級生は少ないけどな。やる気もないし、大体辞めちゃったしね。アハハハ。

 ……笑い事じゃないんだわ。


「…………」


 黒鋼クラスの1年生は全員が冬休み明け最初の授業に現れた。

 入学してから誰ひとり欠けることなく。

 みんな仲のいい同士でおしゃべりして、先生が来るのを待ってる。


「誰も辞めずに……みんなで卒業か」


 それができたらどんなにいいことだろうか。

 毎年黒鋼クラスの生徒は成績によって辞めさせられ、あるいは他クラスとの格差に嫌気が差して辞めていく。

 俺はそれがイヤでがんばったわけで。

 勉強も、武技も。

 俺には「試行錯誤トライアル・アンド・エラー」っていう、相手のスキルレベルを確認できる特殊な天稟があったからそれもやりやすかったってのはあるけどな。

 だけど——俺は知ってしまった。


 ——黒鋼士騎士団の新人騎士は、最初の1年で20%が命を落とす。5年にまで拡大すると30%が命を落とし、30%が退団し、正騎士を返上する。つまり10人正騎士になっても5年後には4人しか残らない。


 これは白騎獣騎士団(ホワイトライダーズ)の正騎士であるラスティエル様が言ったことだ。その場にいた学園長も同意していた。

 黒鋼クラスの2年生以上は、どこかのタイミングでそれを知る。あるいは最初から知っている貴族もいるだろう。

 最初から黒鋼クラスは「どのみちいなくなる人員ならば最初からふるいに掛けておこう」という意図を感じる設計になっている。

 黒鋼士騎士団を維持できないぶんは、別の騎士養成校やら一般公募で集められるという。

 どこかのタイミングでみんなにも説明したほうがいいんだろうな……。


「どしたん? ソーマ。これから授業だっていうのにたそがれちゃって。休暇が長すぎた?」


 横から俺と同室だった《・・・》リットが聞いてくる。

 毎年、2年生になると相部屋ではなくなる黒鋼寮なんだけど、今年の1年生は全員進級見込みということで相部屋は継続している。

 ただ、俺がね。

 寮長になってしまったせいでね、1階の部屋に移ることになったワケ。

 ……フルチン先輩が汚しまくった部屋にね……。

 びっくりしたね。ゴミが散らかっているくらいは覚悟していたんだけど、下着よ、下着。女物の下着がいくつか転がってたの。

 なんで?

 盛り上がって脱ぎ捨てちゃうくらいは、まぁ、わかるよ?(体験したことはないけどな?)

 だけど脱いだら着るよね? あと、1着ならともかくいくつも転がってることある?

 絶対嫌がらせだと俺は気づいたね……アイツ今度出会ったら許さん。

 そんな部屋を俺はスヴェンとともに片づけ、きれいにし、清潔に整え、そしていっしょに部屋を移った。

 ……いや、おかしくね?

 俺、ひとり部屋だと思ってたけどね?

 スヴェンがついてきたんだよ!


 ——師匠、俺は隣の小部屋でいいです。


 当然のように、続き間の小部屋に自分の城を築いた(着替えと剣だけだけど)。

 いや〜寮長の部屋って広いんだな〜まさか付属の部屋がひとつついてるなんてな〜……まさかそこにスヴェンが寝起きするとはな〜。

 ……つまりその瞬間をもって、気になってる女の子を部屋に誘うとかできないことが確定した。


「ソーマ?」

「あ、ああ……いや、なんでもない」


 おかげさまで勝手にひとり部屋に昇格したリットは相変わらずだ。

 相変わらず、さすがの守銭奴。

 さす奴。


「……今、アホなこと考えてるだろ?」

「妙なことを言うな。俺はいつだって学園の平和について考えている」

「はいはい」


 扱いが軽い。軽いのよ!


「おう、お前たち元気だったか。ふむ……全員揃っているようだな」


 そこへ入ってきたのが我らが黒鋼クラスの担任ジノブランド先生だ。


「揃ってますよ。むしろ他のクラスがやたら少ないように見えるんですけど……」


 俺が言うと、


「なんだ、ソーンマルクス。知らないのか」

「え?」

「……まあ、そうか。知ろうにも彼らは王都に籠もっているだろうしな」

「なになに? どういうことですか?」

「今言っただろう。王都に籠もっているんだよ。3学期は欠席するそうだ」

「……は?」


 いや、ちょっと待って。3学期まるっと欠席? 確かに期間としては2か月くらいしかないし、武技の試験もなくて冬の統一テストがあるだけだけど。

 そのテストも欠席?

 っていうか、それで進級できるの? ズルくね?


「今、お前は『欠席しているのに進級できるの?』と疑問に思ったな? 先に答えを言うが、できる。伯爵位以上の貴族家の子女は冬の試験に限っては免除される……まあ、これほど大規模であることは珍しいがな」

「それって、冬が『政治の季節』だからですか?」

「そのとおり」


 マジか。

 確かに、この世界の冬は、正直やることがない。

 農閑期だし、動物も出てこないし。

 それは貴族にも言えることで、冬の間は戦争も起きないために貴族は政治活動をすると聞いていた。

 誰と誰を結婚させるか、とか。

 誰それが目障りだから失脚させよう、とか。

 誰それが最近成功しているから今のうちに取り入ろう、とか。


「俺が知る限り……伯爵家以上は全員いないっぽいんですけど」


 白騎クラスのキールくんはもちろん、黄槍クラスのマテュー、フランシスに、蒼竜クラスのヴァントール、そして緋剣クラスのリエリィ。

 誰もいない。


「そうだな……子爵家で王都にいる者も多いと聞いている」

「なにがあったんですか」


 インフルエンザが大流行とかじゃないよな。

 戦争が起きる、みたいなデカい話だったらもっと聞こえてきて良さそうなもんだけど。


「…………」


 ジノブランド先生はそのとき初めて、顔が曇った。


「……わからん」

「わからない……って、先生が?」

「実は学園長を始め、高位貴族である学園関係者も王都にいるのだ。『心配せず、日常業務をこなせ』という指示は来ているからそれに従うしかない」

「え、えぇぇ……先生もわからないってどういうこと?」

「ほんとうにわからんのだ。なにか、情報封鎖がされているような……。実際、王都でも貴族の多く住む区画は出入りが制限されているという」

「もしかして、手紙とかも?」

「公的なもの以外はダメらしい」


 マジかよ。

 それ、結構な重大事じゃない?


「——なにが起きてるんだ?」

「——あーん、マテュー様ご無事かしら」

「——俺たちには関係ないよなぁ」


 黒鋼クラスのみんなもざわざわし始める。俺の横のリットも難しい顔をしているが——これはアレだな、リットも知らなかったんだな。情報を入手できていなかったことを知ってイラついていると見える。


「…………」


 反対側のスヴェンは、腕組みしてむっつりと目を閉じていた。

 寝てた。

ごぶさたしてます。

続編です。

もし連載再開がうれしかったり内容が面白かったりしたらリアクション、評価、ブックマーク等々もらえたらうれしいです!

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再開めちゃくちゃ嬉しいです!
待ってました!
久々の更新きちゃあ
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