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再会したリッカはさわがしい

ちょっと短い。

 結論から言うとめっちゃ買取額は高かった。

 大金貨2枚にクラッテン金貨5枚、つまり250万円相当である。


「よかったな、ソーンマルクス=レック」

「買取額はな……」

「ふうむ? なにか不満があるのかね」

「あるよぉ!」


 俺は涙目で叫んだ。

 ちょっと怪しい買い取り業者だとテムズは言った。「ちょっと」くらいならまぁ、って思ったけど……あれは!


「筋骨隆々でスキンヘッドで謎の紋様が身体中にタトゥーで入ってるおっさんが、ねちっこい目でハァハァしながら俺のこと見つめてくるんだぞ!? どこが『ちょっと怪しい』だよ!」

「見る目は確かだったろう? なに、ただの少年偏愛者だと思えばいい」

「ヤベーヤツじゃん!」


 こいつはどうしてけろっとしているんだ……。

 まあ、いい。もうこの州都に来ることなんてないだろうし。

 ……いや、フラグじゃないぞ?


「ま、まあ、とりあえず高値で売れたのはよかったよ……そんじゃ俺は宿に帰る」

「え?」

「え、じゃないよ。他に売るものはないぞ。もしかして『紹介してやったんだからなんかおごれ』とか思ってる?」

「そうは思わない。ソーンマルクス=レックの動揺する姿を見られて僕は満足だ」

「お前結構性格悪いのな!?」

「せっかくこの街に来たのだから、リッカにも会っていってくれないか」

「あー……それはまぁ、確かに」

「騎士養成校を卒業したら騎士になるのだろう? 君は黒鋼士騎士団(ブラックソルジャー)で、僕らが騎士になるとしたら碧盾樹騎士団(エメラルドイージス)だろうけれど」

「…………」


 は? テムズは碧盾樹騎士団なの?

 堅実、高給、安定と三拍子そろった碧盾樹騎士団なの?


「どうしたんだ。恨みがましい目をして」

「恨みがましいんじゃない! うらやましいんだよお!」

「うらやましい……?」


 心底わからない、という感じでテムズは首をかしげつつ、


「……なるほど。どうやらソーンマルクス=レックはなにか勘違いしているようだね」

「え? 勘違い?」

「リッカのところに行こうか。彼女は今、冒険者ギルド(・・・・・・)にいるから」


 と、およそ騎士がいそうにない場所をテムズは口にしたのだった。




 州都は広いので冒険者ギルドはいくつかあって——テムズによると7つということだった——そのうちのひとつに俺たちはやってきた。


「……これ、大丈夫なのか?」


 俺は思わず聞いてしまった。

 開かれた窓や扉はガタがきており、壁面は泥だらけだった。極めつきは3階部分だ。なんか焦げてる。

 中からは昼だというのに酒場の喧噪のような音が聞こえていた。

 テムズは平気な顔で入り口前で振り返る。


「なにが?」

「いや、なにがって、冒険者ギルドなのに廃墟寸前じゃん……?」

「? ギルドってこういうものではないのか? ああ、州都の中央ギルドはお役所のような雰囲気だと聞いたけど」

「なるほど……あー、いや、別にいいや」


 ギルドにも格差があるのだろうと思い当たった俺は、テムズとともに中に入っていく。

 中の機能自体はあまり変わらないみたいだ。

 カウンターがあってギルド員たちが忙しなく立ち働いている。依頼の受注に発注、精算に素材鑑定、新規登録に冒険者への案内に……彼らのやることは半端なく多い。

 依頼票は壁にびっちりと貼られていて、一面だけでは足りなくて二面に渡って広がっていた。

 奥は食堂になっているみたいだ。昼なのに多くのむさくるしいおっさんたち……冒険者が集まってわいわい話している。酒場と違ってアルコールのニオイはしないから、酒は提供していないようだけれど、それでもうるさい。めっちゃうるさい。冒険者ってのは声がデカいからね。

 一応、おっさんだけじゃなくて若いのもいる。だけど命がけの日々を送っているせいか、みんな筋肉ムキムキで、日に焼けているし、老け顔なんだよな。俺が前に話をしたパーティー「山駈ける鉄靴」のメンバーも実年齢より上に見えたし。

 あと女性もいる。だけどこちらは男顔負けのパワフルさである。


「アハハハ! こいつったら『腕がちぎれたぁ〜』って半べそかきやがってよ!」

「ウケる! ち●ぽついてんのかあ!?」


 年齢で言うと10代後半くらいのふたりの女子……女子、だよな? 腕だけ見ても俺の2倍くらいの太さがありそうだけど、女子と言っていいんだよな? そんな女子が同じテーブルにいるパーティーメンバーらしき男子(?)の背中をばんばん叩いて笑ってたりする。

 ふだん、冒険者と接点が全然ないから思わずまじまじと見てしまった。


「ほら、あそこだよ」


 するとテムズが指差したのは——奥まったテーブルのひとつで、冒険者たちと話し込んでいる少女だった。

 美しい金髪をツインテールにしていて、青色の吊り目はキツそうな印象を与えそうだけれど、よく笑うのでそのギャップが可愛らしい。ウェストライン校の制服であるネイビーブルーのブレザーを羽織っている彼女は、俺と同い年のはずだけど、背の低さもあってかなり幼くも見えるのだった。

 リッカは、おっさんたちを相手に親しげに話している。絵面だけ見ると凶悪犯罪者5人に誘拐された少女が話術だけでなんとかその場を乗り切ろうとしているふうにも見えるけれども。


「あっ、テムズ——」


 こっちに気づいたリッカはテムズに手を挙げると、


「————」


 ぴったり3秒間フリーズしてから、


「ソーマくん!!!?!??!???」


 いや、あだ名で呼ばれるほどの間柄だったっけ俺たち?

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― 新着の感想 ―
店主の情報からして、ご祝儀価格とか拝観料とかお触り料金が入ってないか心配な所。
[良い点] 本当にボろうとしてたんだな、店主。 そしてショタコンの評価額よ。
[一言] 2年以上とか間が空きすぎる リッカとかテムズとか記憶の片隅にもない いったい誰だよ?
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