放課後
午後2時を過ぎた頃から雨雲が集まり始め、帰りのSHRが終わる頃には雨がポツポツと降ってきた。
予報では一日中晴れだと言われていたが、所詮予想だからな、と翔は思った。
雨が降ると予報には出てこなかったので傘は持ってきていなかった。友香里は折りたたみ傘を常に持ち歩いているが、同じ傘に入るのは流石に嫌なので、雨が止むまで図書室で本を読んで待つことにした。
図書室には受付の人以外に数人が居た。
机に参考書と教科書、ノートを並べて勉強をしている人や読書に更けている人、本を探している人。
声を発している人は誰もおらず、図書室の中はとても静かで、雨の音だけが響いている。
何か面白い本はないかと本棚を覗いてはみたものの、なかなかこれといったものがない。
すると、急に襟元を後ろから軽くクイッと引かれ、「何かお探しですか?」と聞きなれた女の子が小声で話しかけてきた。
振り向くと、艷やかな黒髪をしたショートカットの女の子、天谷早苗が立っていた。
「…なんだよ、早苗」
「だって、翔が何か探してるように見たから」
「あぁ、雨が止むまで読書でもしようかと思って、面白そうな本を探してるところ」
「そっかー」と、言いながら早苗は胸を上で腕を組み、下を向いて何か考えてる様子だった。
急に顔をあげると首を傾げながら「珍しいよね、翔が本探しに来るの…。あと、何で雨が止むまでなの?傘、無いの?」と聞いてきた。
翔は軽く頷きながらうん、と返した。窓の方に目をやりながら「こんな雨のなか傘ささないで帰ったら絶対風邪引くだろ」と言った。
「そうだねぇ…」と言いながら早苗も翔と同じ方に目をやった。
「早苗、俺帰るよ」
「え?だって、雨止んでないよ!?」
早苗は目を丸くしながら言った。
「だって、このまま雨止むの待ってたらいつまでも帰れない気がするしさ。帰るよ」
「そ、そう。気をつけてね」
「じゃあな」と言いながら軽く手を振り、荷物をもって図書室を出た。
そのまますぐ生徒玄関に向かい、靴を履き替えた。
雨は強さを増すばかりで止む気配は一向にない。
生徒玄関のドアを開け、外に出ると大粒の雨が地面に当たり、雨音で周りの音がハッキリと聞こえない。
強い雨は短い間しか降らないと誰かから聞いた気がするが、果たしてそうなのかと翔は思ったが、そこまで考えたって答えは出てこないので、考えるのをやめてゆっくりと帰路についた。




