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序章

 夏休みのある日のこと、それは起きた。

 両親は買い物に行っており自宅には俺一人しかおらず、家の中は静まり返っていた。

 することもなく、ソファの上で寝転がっていたらいつの間にか寝てしまった。


 ───

 

 見知らぬ街、見知らぬ空、見知らぬ人々。

 だが初めてではない。眠るたび、何度も見た夢の世界の風景。

 一人の少女が駆け寄ってくる。

 走りながら何かを叫んでいるが、よく聞き取れなかった。

 ただ、途切れ途切れに「逃げて!」といったのはかろうじて聞き取れた。

 だが、何から逃げるのかまではわからなかった。


 ───


 誰かが近づくような足音がした。

 ソファから体を起こすと、目の前に見知らぬ男が立っていた。

 全身黒づくめの男だ。

 深くフードをかぶり、口元はネックウォーマーで隠してある。

 黒いゴム製の手袋をしており、右手にはナイフを持っている。

 俺は悟った。俺はここで──

 そう思ったのと同時に、男が俺の喉元目掛けて、勢い良くナイフを振り下ろした。

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