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夕方、突然の大雨が降った。

 どうりで蒸し暑かったわけだ、と窓の外を見ながら美海は納得し、カーテンを閉める。

 天気予報なんか当てにはならないというのが美尼島の住人の常識で、晴れの日よりも雨の日が多く、観光客が晴天を期待して来てがっかりする姿を何度も見てきた。とはいえ、天気予報は必要だ。チェックするのを怠っていた美海は、ガラケーで美尼島の今の天気を調べる。台風であれば船が欠航になるので、島に食料が運ばれず、翌日の地元新聞に陳列棚ががら空きだと写真付きで報じられるほど、主婦たちがこぞって牛乳やパンを買い占めるので、その前にパンだけでも欲しいなと考えていたが、今降っている雨は台風ではなく、集中豪雨らしい。それならこんな大雨の中、わざわざ買い物に行かなくてもいいと判断した美海は、ガラケーを閉じた。しかし、数年前の集中豪雨で、床下浸水した家もあるので、安心はできない。

 冷蔵庫の扉を開けると、半分ほど使われたマヨネーズと牛乳パックが一本、納豆のパックが一つ。この現状に「うまかっちゃんでも食べるか」と扉を閉め、流し台の下の戸棚を開けると、五食入りのラーメン袋を確認した。

 美空に「ねぇ、夕ご飯、ラーメンでいい?」と台所から大きな声で訊いてみたが返事はなく、祖母の部屋の前まで行き、もう一度訊いた。それでも返事がないので「開けるよ」と声を掛け行動に移すと、部屋に美空の姿はない。トイレも風呂にも、どこにも見当たらない。それならきっと、母親の実家にいったのだろうと推測した美海は「行くなら声かけてよね」と居間で一人、ため息まじりに呟いた。

「おばあちゃ〜ん」

 時々見える祖母を呼んで見るが、祖母も見当たらない。父はどうせ酒を呑みに街に行っているに決まっている。

 一人なら夕食はいらないと、部屋に戻ってベッドに寝転び、ガラケーを開く。悟に教えてもらったSNSのアカウントを見ると、昨日の花火を楽しむ様子が写真と一緒に上がっている。悟の呟きに、明里が一番最初に反応しており『楽しかったね、また行こう!』とハートマークの絵文字も添えてコメントしている。悟の呟きからみんなの呟きを見ることができ、みんなでカキ氷を食べ、金魚掬いをしている写真を見て、自然といいなぁという羨ましい気持ちが湧く。しかし、今の孤独な現状との差に滅入り、その差を埋めるには羨ましさを押し殺すしかなく、電気を消し、眠ることにした。

 私には睦美姉がいる。明日、甚平を返しに行こう。

 そう決めると目を閉じ、ゆっくり夢の中へと入って行った。


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