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「悟は犬に追いかけられて、無我夢中で走って逃げて、木に登って、そんで木から降りれんくなっとったっちいうオチ」

「ダサっ」

「大変だったんど。その後、怖がって降りれんくせに木からジャンプして、足くじくし、その途中、枝で傷つけたのか知らんけど瞼からいっぱい血が出てケガするし。歩けん悟を負ぶって帰ったからね、私」

 花火もフィナーレを迎え、夜空のキャンバスに色鮮やかな花が咲き乱れる。

話を一通り聴き終えた美空は「でも、消えたの、お前のせいちゃうやん」と話に突っ込んだが、美海は今でもそうとは思っていない。

「お願いっていうか、約束したからね。お嫁さんにならんっち」

「誰に?」

「ん…、神様?」

「アホくさ」

 聞いて損したとでもいうような表情で美空は立ち上がる。

「結婚はともかく。付き合ったらええやん」

 そう言うと、最後くらいきちんと花火を見ようと展望台の柵に近寄り腕を乗せ凭れた。美海も側に寄り「あんただって見えるでしょ、幽霊とか変なの」と覗きこむ。美空は反応することなく花火を見る。美海も美空の視線を辿って花火を見ながら「約束破って本当にいなくなったら…っち思うと、怖い」と打ち明けた。

「だから、今のままでいい」

 美空は素っ気なく「ふーん」と言って、俺には関係ないからどうでもええけどねと言い切った。

「サルが消えたの、偶然やと思うけど。お前がそう思いたいんやったらそう思ったらええ。でも、自分で自分の首、締めてへん?ま、本当にどうでもええけどね。女って何でそーゆー迷信とか占いとか信じたがんねんな…、どうでもええけど」

花火に照らされた弟の顔は、やはり無表情でぶっきら棒なのだが、弟なりに自分の心配をしているのだと分かると「あんた、めんどくさいね」と憐れんだ。

「お前に言われたない」

「私のどこがよ!」

「全部や全部、存在全部や」

「ふざけらんでくれん?っちゅうか、あんたと喋ってたら花火終わるから黙って!」

「は?お前がいっぱい喋ってたやん」

「はいはい」

 苛立つ美空の横でガラケーを取り出し、美海は花火の写真撮影に精を出した。


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