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第6話 シルのおうちにお邪魔します。

 その後、ソルトロッソオジサマとシルが色々な話をする事となった。

 その間、私は最初に出迎えてくれたセフィさんに、屋敷の中を連れられて歩いている。

 この美人でお淑やかな人は、正式な名前はセフィーユさんというらしい。


「セフィとお呼びくださいませ」


 本人からそう言われてはそう呼ぶ他ない。

 自分の名前が嫌いな私は、自分で呼ばれたい名前で呼ぶ方が良いと思ってる。

 だから、呼び方を指定されるのなら、それで呼ぶ。


 セフィさんはどういう訳か、私の事を気に入ってくれたようで、笑顔で屋敷を案内してくれた。


 暫くして、応接間に戻ってきた私を見て、男性二人が口をポカンと開けている。

 いや、そんな見られると恥ずかしいんですが。

 変? やっぱり変かな? 変だよね?


「ほら! セフィさん! 可笑しいんだよ! 私こんな格好したことないもん! 着替えるから! 着替えさせて! お願い!」


 そう、私はセフィさんに連れられていって、何故か着せ替え人形にされてしまったのだ。

 今着せられているのは、淡い緑色のショートドレスの様なもの。

 派手さはあまりないが、とても可愛らしい。

 私としては可愛いものは好きだけど、自分が着るとなると、似合わないと思っている。


「いえいえ、シュン様。とてもお似合いで可愛らしいです。私は娘にこういった格好をさせるのが夢だったんですよ。是非そのままでお願い致します」


 うぅ……そんな事言われると、脱ぐに脱げなくなるじゃんか。

 男性陣が何も言わずに見てるから、余計に恥ずかしい!

 そう思っている事に気付いたのか、二人が口を開く。


「シュン。元の服も似合っていたけど、そのドレスもとても似合ってるよ。可愛いね」


「いやぁ、驚いたな! 可愛らしい嬢ちゃんだとは思ってたが、中々どうして、女ってのは着るもんで変わるもんだな」


 シルに褒められて照れながら、オジサマの言葉でやっぱりデリカシーがない! とむくれるという器用な事をさせられる。


「セフィさん、その……お着替えは楽しかったし、嬉しいんですが、やっぱり私はもっと動きやすい格好の方が良いんですが……」


「そうですか、シュン様がそう仰るのなら……残念ですが、別のお召し物を用意させていただきますね」


 セフィさんは本当に残念そうに眉尻を下げて、トボトボと応接間を出て行った。


 それから暫くして、服を見繕ったセフィさんに連れられて、再度お着替えタイムとなった。

 今度の服装は、レザーチェニック? とかいうものに、ショートパンツのようなものだ、それと革のブーツを用意してくれた。

 あとは、フード付のマントみたいなの。


「あぁ、シュン様。残念です。またセフィの用意した服を着てくださいますか?」


 そう訴えるセフィさんに快く頷くと、とても喜んでくれた。

 私も可愛い服を着せてくれるのは嬉しい。


 応接間に戻ると、シルとソルトロッソオジサマのお話は終わったようで、そのまま屋敷から帰ることとなった。


「シルよ、暫くは村も大変になる。戦闘になった場合、お前を一番頼る事となるが、くれぐれも自分の命を大事にしてくれ。わかったな?」


「理解しています。族長もあまりセフィさんを困らせないでくださいね?」


「馬鹿者。俺はいいんだよ、族長の仕事なんて誰がやっても大して変わりゃしねぇんだ。さっさと次の族長が出てこねぇから、俺みたいな老害が出張らなきゃならなくなんだよ。多少のサボりくらいは目を瞑りやがれ」


 オジサマはカカッと笑いながら、そんな事を言った。

 だけど、私は見てしまった。

 後ろのセフィさんの目が怖いのを。

 後で怒られるんじゃないかな。


 オジサマの屋敷を後にして歩いていると、最初に会ったおじさんがいた。


「よぉ、また会ったな!」


 おじさんは穴の空いた洞から手を振っている。

 カウンターの様にしてあるようだ。


「お嬢ちゃん、どうだった?」


 おじさんは私に向けて笑顔で聞いてくる。

 どう……とは、村での滞在についてかな?


「無事滞在させていただけることになりました。あ、私は伊達 駿っていいます」


「おぉ、良かったな! 俺はそうだな、スリングと呼んでくれ! ほれ、これはお祝いだ」


 おじさんが赤い果実を投げてくる。

 林檎みたいな果実だ。


「丸囓りでいけるからよ。食いな」


 ニカッと笑うスリングさんに御礼を言って囓ってみる。

 あ、おいしい。


「うめぇだろ? 俺は野菜やら武器やら色んなもんを取り扱ってる雑貨屋なんだよ。シルから獲物も買い取ったりしてるぜ。お嬢ちゃんも何か入り用になったらスリング雑貨店を宜しく頼むぜ!」


 スリングさんと軽く雑談をしていたが、夕食の時間なのか、お店が混み始めた為、シルが必要なものだけを購入して、その場を後にする。


「長耳族は皆イイ人ばっかりだね」


 シルにそう言うと。


「昔の長耳族は自尊心が高くて、人族とも長い間争っていたらしいよ。それが400年くらい前かな? 当時の人族の英雄が長耳族の英雄と闘って、長耳族は敗けたんだ。でも人族の英雄は、長耳族は誇り高く、人族がその誇りを汚した事が原因だからと逆に謝罪したんだって。それから長耳族は誇りを保ったまま、その誇りに相応しい大きな器を持つようにしようって事になったらしい。人族の英雄みたいにさ」


 それからは、他種族を無用に見下すような事はせず、意思が疎通できる様な相手であれば、尊重し、受け入れ、交流を持つようになったのだとシルは続けてくれた。


「ここが僕の家だよ」


 そんな話をしていると、シルのおうちに着いたらしい。

 オジサマの所に比べると若い様だけど、それでも立派な大樹だ。


「お邪魔します」


 どうぞ、と促されておうちの中に入ってみると、シルの性格を表したような暖かくて綺麗なおうちだった。


「外に出てることが多くて、埃とかで汚れてる所も多いんだ。汚いところでごめんね」


 シルはそんな事を言っているが、とても綺麗にされているようだった。


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