第16話 ジジイ再び。
ジジイ回
生きたかった。
強くなりたかった。
シルに返さないといけないものが沢山あった。
ジジイを殴りたかった。
家族に会いたかった。
友達に会いたかった。
すき焼きが食べたかった。
おうちに帰りたかった。
おうちに帰りたかった!
『条件が達成されました。14の加護が発動します』
『14の加護の発動に成功しました』
『14の加護は13の加護へと変更されました』
『スキル、強欲を取得しました』
『強欲の取得により、スキル、言語相互理解に小鬼言語を追加しました』
『スキル、韋駄天のロックを一部解除しました』
『神性領域へのアクセスロックが一部解除されました』
無機質な機械の様な声が聞こえた。
その直後、ものすごく腹の立つ声が聞こえてきた。
「もっと早くここに来るかと思っとったが、予想より時間がかかったのう。シュンちゃんがそれほど優秀って事かのう。ヒョッヒョッヒヘブン!?」
思わず声のする方へ蹴りを叩き込んだ。
あれ?
痛くない。
さっきまで凄い痛かったのに。
私は目を開けてみる。
ジジイが顔を押さえながら悶絶していた。
とりあえず頭を踏みつける。
「おい……ジジイ。これはどういう状況でアンタは誰で私がどうなってすき焼きがどうなったのか教えなさい! ていうか、おうちに帰して!」
頭をグリグリ踏みつけながら、問い詰める。
「ヒョッ。一先ず足を退けてくれんかのう。か弱いジジイを虐めるのは良くないと思うんじゃ。最初に優しく声をかけてくれたシュンちゃんは何処にいったんじゃ」
ジジイがメソメソと泣きながら言う。
とりあえずもっかい強く踏みつける。
「むぎゅ」
ジジイが変な声を出した。
とりあえず話が進まないし、足を退けてやる。
「ふぅ。シュンちゃん何か性格が違うんじゃなかろうか?見てる限りじゃと、こんな乱暴する子じゃない感じじゃったのに」
ジジイがブツブツ言いながら、のっそりと起き上がった。
「いいから質問に答えなさいよ。早く! ハリーアップ!」
「まぁまぁシュンちゃんや。久しぶりに会えたんじゃ、茶でも飲んで落ち着きなさい」
ジジイがそう言うとテーブルとお茶が出てきた。
出てきた? どっから?
さっきまで無かったよね?
イスは……在ったな。最初に座ってた気がする。
改めて周りを見回してみると、そこは白い部屋だった。
床も壁も天井も。
私も白いワンピースを着ていた。
「それで、シュンちゃんが聞きたいのはさっきの質問じゃったかな?」
ジジイはいつの間にかイスに腰掛けお茶をズズズッと啜っている。
一先ず私もイスに座り、お茶の香りを嗅いだ後、飲まずに置いた。
「おや? お茶は飲まんのか? 美味いぞ?」
「アンタが出した怪しいお茶なんか飲めるか。既にアンタの所為で酷い目に遭ってるって言うのに」
「ヒョッヒョッ。相変わらず手厳しいのゲウッ!?」
ジジイは愉快そうに嗤っている。
とりあえずもっかい、今度は殴った。
「うぅ……非道いのう。こんなジジイに暴力ばかりじゃ」
「いいから、話を進めてよ。」
「わかったわかった。そうじゃのう。まず何から話そうかのう」
ジジイは顎に蓄えた髭を撫でながら、ウンウンと頷いている。
「まず、状況じゃが……」
ゴクリと唾を飲む。
「あの世界に送ったのは儂じゃ」
メシッ! ジジイの頭にチョップがめり込む。
「痛いのう!」「んなことは解りきってるのよ!」
頭を擦っているジジイに叫ぶ。
異世界に跳ばされた。
それはジジイの所為。
そんなことは言われなくても状況だけで直ぐ解る事だ。
「うぅむ。状況じゃな。状況としては、来る前にも話した通り、頼みたい事があって、それは来る時に頼んだ通りじゃ」
頼み? 何だっけ?
こっちで好きに生きて、好きに過ごしてみたいな事だった気がする。
「それで、今シュンちゃんが居る此処は、儂の部屋みたいなもんじゃ」
「それで? その頼み事の目的は? 小鬼の王と戦ってたのに、ジジイの部屋にいるのは何故?」
「それはじゃな……」
『スキル、強欲により、眷族支配、眷族生成を取得しました』
『種族適正により、眷族支配は使い魔支配に変更されました』
『種族適正により、眷族生成は使い魔生成に変更されました』
『スキル、強欲により、狩人、魔物使い、暗殺者を取得しました』
『条件が未達成となった為、スキル、強欲はロックされました』
『強欲の下位スキル、貪欲がアンロックされました』
『13の加護の再起動が行われます』
『再起動作業が開始されました…再起動に成功しました』
「ヒョッ? シュンちゃんすまんのう。今回はここまでのようじゃ。続きはまた今度じゃな」
「は? 今すぐ話しなさいよ! じゃないと困r
足元が抜けた。
私はそのまま落ちる。
またこれ!?
ちょっとジジイ!
覚えてなさいよ!
「あ、そうじゃ、最後に一つだけ教えておこうかの」
何!?
「すき焼きはお主の家族が美味そうに食っておったよ」
またこんなオチかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
ジジイのヒョッヒョッヒョッヒョッという笑い声を聞きながら、私の意識は落ちていった。
本当にもう……
おうちに帰してください!