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第11話 対小鬼族戦① 開幕:遊撃

 大樹の枝を跳び廻る二つの影があった。

 影の一つは思い出していた。

 少し前に聞いた話を。


 このルレージュ大森林は広い。

 帝国が、武力で劣るウィスタリア王国を落とせない理由として、土地が挙げられる程に。

 ウィスタリア王国の東には、広大なルレージュ大森林、その東にレシット山脈が続く。

 天然の要塞となるこの二つの防壁により、帝国とウィスタリア王国は均衡を保っていると言っても過言ではない。


 そんな話をシルが教えてくれた事がある。


 現在、私とシルはツーマンセルで行動している。

 本来であれば、シルが部隊指揮をして殲滅作戦の一部を担う筈であった。

 しかし、私がいる事もあり、ソルトロッソオジサマから、遊撃部隊として動く様に指示があった。

 幸い、全部隊の指揮はオジサマが行う為、特に問題はないらしい。

 どうやら長耳族は以前より、しっかりと対策を立てながら動いていたらしく、迅速に戦闘準備が進められていた。


「本来なら、それでもお前と嬢ちゃん二人だけで動いていいなんて指示は出せないんだが、今回は何かおかしい。不足の事態に自由に動けて、且つ充分な戦闘力がある部隊が必要になる。その為のお前らだ。だが、無茶はするなよ」


 先んじて動き出す私達にオジサマはそう言った。


「シュン、右前方。小鬼族の斥候、数は10。長耳族(こちら)の動きが漏れない様に、全部狩るよ」


「了解」


 シルから風囁で指示が来る。


 右前方に進路を変更して、狙いを定める。

 放たれた矢に、5匹のゴブリンが射抜かれる。

 シルは流石だ。

 放った3本の矢で的確に3体のゴブリンを葬った。

 私は2本までしか射てない上に、一匹はまだ息の根が止まっていない。


 手が震える。


 命を奪う事への忌避感か、それとも以前のゴブリンへの恐怖からか、或いは両方か。

 この怖いという感情が何処から来たものなのか、恐怖の対象が多すぎて、絞り込む事が出来ない。


 伐ち洩らした一体に、止めの矢を放ち絶命させる。

 残りの5体を狙おうと矢を番えるも、既にシルが仕留めていた。


「シュン。動きが固いよ? 大丈夫かい?」


 シルが心配そうな顔を入り混ぜた微笑みで聞いてくる。


「大丈夫だよ。ちょっとだけ。怖いだけだから」


 震える手を押さえて、恐怖を押さえようとする。


「安心して。僕が守るから。それに、族長は普段はあんなだけど、闘いに関しては、僕よりも頼りになるよ」


 ?。シルが村一番の腕って事だった筈だけど。


「それに、他の集落からの援軍も来る予定だしね。僕達は出来る限り被害を抑えられる様に動くだけだ」


 シルは前を見て、再度動き始める。

 そう、この広大なルレージュ大森林には、長耳族の集落が複数存在している。

 それでも、オジサマが治めている村が一番大きいらしい為、援軍もそこまで多くは望めないだろう。


 現在の戦況としては、小鬼族が1000を超える数。

 対する長耳族は、戦士だけで250前後といったところらしい。

 個々の戦闘力は長耳族の方が強いが、数の差が大きい。地の利を活かして凌ぐ他には無い。

 それに加えて不安要素がある。


 罠を張ったという小鬼族の行動だ。


 シル曰く、小鬼族は簡単な罠を張ったり、待ち伏せたりはするらしい。

 だが、獲物の習性を利用しての狩りを行ったりするものでは無いらしい。

 街道なんかで待ち伏せて人を襲うこともあるそうだが、あれはあくまで、其処を通るから襲うという、同じところに長年住み続けている小鬼族だけらしい。


 ただの小鬼族ではないのか、それとも小鬼族に知恵を回している者がいるのか。

 現状情報が足りない為、判断は出来ない。


「シュン。次の部隊にはホブゴブリンがいる様だ。充分に気をつけて」


「了解」


 シルからの声が届いたので、弓に矢を番えながら、標的を狙う。

 ホブゴブリン。

 小鬼族の進化個体で、身体の大きくなったものだ。

 賢さも少し上がっているらしく、ゴブリンの指揮も行う。

 それでも簡単な事しか出来ない。


 難なく次の獲物をシルと仕留め、私とシルは森の中を駆け巡った。

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