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世界の終わりの狂想曲  作者: 206941144
悪意の花
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種まき~3~

「ヴァンくん」「ヴァンくんどこ行くの」「ねぇ、ヴァンくん」「ヴァンくん、言われた通りにやったよ褒めて褒めて!」「ヴァンくん、どうしたらいいかな?」「ヴァンくん、今日着る服何にすればいいかな?」「ねぇ、ヴァンくん」「ヴァンくん、この子と友達になっていいかな?」「ヴァンくん、今日は撫でてくれないの?」「ヴァンくん、今日は何すればいいの?」「ねぇ、ヴァンくん」「ヴァンくん、あの店に行ってもいいかな?」「ヴァンくん、明日は何すればいいの?」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」「ヴァンくん」





「ねぇ、ヴァンくん。何でもいうこと聞くから褒めて?」






(うるっせぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!)



川のあの件から、1年。

ヴァンジェアンスは6歳になっていた。


ミミカの調教は、じっくりと時間をかけて行われたようである。


ヴァンジェアンスは、ミミカが言うことを聞いた時は、頭を撫で、一瞬でも戸惑ったり、否定の言葉を発したら思いっきりぶん殴っていた。


幼児期。親にも叩かれたことはなく、もしかしたら怒られたこともないであろう時期に、殴られる。

5歳の殴りが、肉体的にどうだということはさしてないが、精神的なショックが尋常ではなかっただろう。


そして、ヴァンジェアンスは、ミミカが泣くまで殴り続ける。心が折れ、涙が溢れ、「ごめんなさい」以外言わなくなるまで、殴り続ける。


完全にミミカの心が折れたのを確認すると、一転してヴァンジェアンスは慰めだし、耳障りのいい言葉を囁き出す。


ミミカは全く付いていけない心とは別に、体に直接的快楽が与え続けられる。

そして、幼いながらも悟るのだ。


「従えば大丈夫。言うことを聞けば心地いい。逆らったら怖い。」と


ただ、効果が出すぎたのは、ヴァンジェアンスも予想外ではあるようだが。



~*~



ヴァンジェアンスは、自分の部屋で1人物思いに耽っていた。

幼げの残っていた体型は、シュッと引き締まってはいたが、未だ幼さの残る面影ではある。


この1年の間、ヴァンジェアンスはミミカの調教と、基礎体力をつけること、所持魔力量の上昇に努めていた。


既に、所持魔力量に至っては初級魔法使いの内では、中級に届きそうなぐらいには増えていた。


使える魔法の数も、一年前とは比べ物にならないほどに増え、|やれることも増えていた《・・・・・・・・・・・》。


ところで、エミリアのことだが、エミリアは退職(・・)した。

朝起きたら、エミリアの使用人部屋に置き手紙が置いてあったのだ。


そこには、ただ一言



『すみません』



その一言に、どのような思いが篭っていたのかは定かではないが、その手紙がマリアに届くことは無かった。


暖炉に、何かが燃え残ったような、カスが残っていたのは確かだが。


「そろそろか。」


そして、ヴァンジェアンスが動き出す。

その姿は動きやすく、それで影に隠れられそうな、黒色のゆったりした服を着ていた。

そして、懐に何か水の入った瓶を仕舞いこみ。


「お母さーん!ミミカちゃんの家に行ってくるね!」


「はいはい。いってらっしゃい。今日はお泊まりにいくんだっけ?」


「うん!」


「迷惑をあまりかけないようにね?」


「分かった!行ってきまーす!」


ヴァンジェアンスは家を出て、ミミカの家に向かう。



(今日は第3の月ミミカの誕生日。そして、今日はミミカの家が盗賊に襲われる日のはずだ。やっと、下準備が全部終わる。)



世界は繰り返す。

これは、ヴァンジェアンスが体験して気づいたことだ。

世界には流れがあり、ヴァンジェアンスはその舞台に紛れ込んだ部外者。恐らくそういうものだとヴァンジェアンスは認識している。


故に、部外者が舞台で目立ちすぎると困るから、ヴァンジェアンスは殺されるのであろう。


まぁ、それはいい。


世界が繰り返すゆえに、ヴァンジェアンス、いや斉藤 樹が関わらない限り、同じことが起こるのだ。


それが、ミミカ、つまり、レナーシャル家襲撃だ。


前回の世界で、何故ミミカが世界を救う旅などに同行していたのかというと、これが関係している。

前回の世界では、盗賊の襲撃でミミカは攫われ、レナーシャル家は壊滅、そして、ミミカは幼かったので奴隷に出されていたのだ。


それを、前回の世界で斉藤 樹が買い旅を共にしたということだ。

何故買ったのかというと、仲間のリスケに頼まれたからなのだが。



~*~



ヴァンジェアンスが、レナーシャル家に到着する。

扉の前に立ち、ノックを数回行う。


(ノックの回数でどうのこうのってのが、あった気もするけど。まぁ、どうでもいいか。)


ドアノブは純金製で、天秤が彫刻されており、金がかかっていることをうかがわせる。



「はい。どちら様でしょうか。」


「ヴァンジェアンスです。」


「ヴァンくん!今開けるね!」


「あぁ、ありがとう」


この世界には、インターホンは当然無いが、魔法によってある程度そういった役割のものは出来ている。


今のは、扉の上部に嵌め込まれている、極々小さい水晶を用いた通信魔法だ。

この水晶に対になるものが、恐らくレナーシャル家のリビングにあるのだろう。


この水晶は、双方向に通信が可能なものであり魔力を流すと映像と音声が通信される仕組みなっている。

この魔法の欠点は、双方向に通信可能なので、扉に付いている水晶に魔法を流すと、外から家の内側が除き見れるというところだ。

その為、扉の水晶はできるだけ小さいものになるというのが、一般的だ。


扉が勢いよく開く。


「ヴァンくん!いらっしゃい!」


「うん!お邪魔します」


「ヴァンジェアンス様ですね。お召し物をお預かりいたします。」


「あぁ、大丈夫です。ありがとうございます。」


「ヴァンくん!早く行こ!」



メイドが、ヴァンジェアンスに声を掛けるが、その申し出を断る。

ミミカが、ヴァンジェアンスの手を引く。とはいえ、引っ張るのではなく、袖を掴むような軽いものではあるが。


ヴァンジェアンスは、ミミカの連れられてリビングに向かう。


(やっぱ、知ってはいたがこの家は金持ちだな。当然といえば当然だけど。なんと言っても、銀行家の総帥だからな。)


レナーシャル家は、この街有数の富豪家である。街の経済を担う大手銀行を経営している。

銀行の主な仕事は、金を預けること…ではなく貸すことそれが最大の収入である。


その為、銀行というのは、恨まれることが多いわけだが、レナーシャル家は利率が低く、農民や、個人商店、つまり庶民に信頼されているのだ。


リビングに到着する。


「いらっしゃい。ヴァンジェアンスくん。今日は楽しんでいってね」


「……」


「ほら、あなたも」


「…いらっしゃい」


「もう!」


リビングでは、パーティのような風体になっており、そこに着飾ったミミカの母親と父親が座ったいた。


母親は、細身の綺麗な女性で、1人子供を産んだとは思えないほどだ。

髪は、透き通るような蒼色でその見た目と中身のギャップが、魅力的な女性であった。


父親は、まさに仕事人のようで、背広が似合うガタイのいい男性だ。

髪の毛は燃えるような赤色。

とはいえ、なかなか寡黙な男らしくこちらもまた中身と見た目のギャップが激しい。


ところで、髪の毛の色についての話がなかったから、ここで説明しておこうと思う、

髪の毛の色は遺伝ではない。

その人物の得意魔法によって決まるというのが通説だ。


赤は火魔法。青は水魔法。茶は土魔法。黒は闇魔法。白は光魔法。


あとは、特異的に無魔法というユニーク魔法が発生することがあるが、分類が出来ないから無魔法なので、髪の毛の色との関連性も分かってはいない。


では、ヴァンジェアンスやマリアのような金髪は何なのか。

つまるところ、よくいえば全て得意、悪く言えば特筆すべきところがないともいう。


あとは、色の濃さでどうのこうのというのは、言われているがそこら辺は定かではない。


「うん!おじゃまします!」


ヴァンジェアンスがそう返答すると、父親、つまりレナーシャル・ド・シラーは、眉間に皺を寄せヴァンジェアンスを、じっと見つめた。


(なんだ?ミミカにやってることを気付かれたか?)


ヴァンジェアンスは必要以上に警戒していたが、自分の娘にくっ付いている男を、見定めようとしているだけであった。

とはいえ、それはそれでヴァンジェアンスは苦い顔をするだろうが。


「どうしたの?パパ〜?」


「何でもないでちゅよー!ミミカは今日も可愛いなぁ!!」


(うっ!)


ミミカがシラーに話しかけると、顔面の筋肉が仕事を忘れたかのような、デレっぷりを見せる。

少し、いや、かなりえぐい顔になっていることに、本人が気づかないのは、幸運なのか不幸なのか。


「じゃあ、パーティを始めましょうか!」


「「おー!」」


恐怖の宴(パーティ)が始まった。



~*~



パーティはつつがなく進んだ。

食事は美味しく、最初はヴァンジェアンスに険しい顔を向けていたシラーも、アルコールがまわり、ミミカも笑顔を溢れさせていたので段々と警戒を解いていた。


「はい!誕生日プレゼント。」


「うわぁ、ありがと!ヴァンくん!」


ヴァンジェアンスが、ミミカに綺麗に包装されたプレゼントを渡す。

渡されたミミカは、頬を紅く染めながら、とても嬉しそうに笑う。


「じゃあ、私達からもプレゼント」


「ありがと!ねぇ、開けていい?いいでしょ?」


「いいわよ」


ミミカが、プレゼントを開ける。

まずは、父親と母親からのを開けるようだ。


「うわぁ!かわいー!」


プレゼントは可愛らしい熊のぬいぐるみのようだ。

ミミカは喜び、ぬいぐるみを抱き抱え満面の笑みを浮かべる。


「ねぇ?ヴァンくんのも開けていい?」


「いいよ!」


ヴァンジェアンスの包装を一つ一つ綺麗に開く。


「うわぁ、きれー!」


「これは、凄いわねぇ。高かったんじゃないの?」


取り出したのは、ネックレス。

石の部分には、水色の綺麗な石が嵌っている。


「ううん。川で拾った綺麗な石で作ったんだ」


「へぇー、そうなの。でも、ほんと、凄いわねぇ」


ミミカのお母さんとミミカは、ネックレスを見て凄い凄いと、はしゃいでいる。


(まぁ、成功かな)


計画の一部が成功した喜びに浸っているヴァンジェアンスは、そのネックレスをじっと見つめ、一言も言葉を発さないシラーに気づかなかった。



~*~



「ちょっと、トイレ!」


「あら、トイレだったら、廊下の突き当たりを右に曲がったらあるわよ。」


「ありがと!」


「どういたしまして。」


ヴァンジェアンスが、トイレに向かう。


(前回の世界での話だと、深夜に盗賊は襲ってきたとかいう話のはず。仮に俺に向かって襲いかかってきたら、問答無用で殺す。まぁ、上手いこと利用してやるよ。)


ヴァンジェアンスは、今日はの計画の確認を行う。


しかし、計画というのは


『コンコン』


失敗するから、

計画(・・)なのだ。



『誰が来たんでしょうね』


ミミカの母親が何の気なしに呟く。


『大丈夫ですよ。奥様。』


『?』


計画通りですから(・・・・・・・・)


『なにをっ!?』


(ちぃぃぃぃっ!!!!やっちまったか!)


ヴァンジェアンスがトイレから飛び出す。


そして、リビングに戻るとそこにはシラーを短剣で貫いているメイドの姿があった。


「オープン!」


メイドが叫ぶ。


と、同時に返す刀でミミカの母親の首を落とす。

扉が開き男が数人入ってきた。


「おいおい。お頭、全部終わっちまってるじゃねぇか。」


男の1人がメイドに声をかける。


「ふんっ、完全に油断してたからねこいつら。この嬢ちゃんもシラーを刺したら、気を失っちまったから簡単だったよ。」


「じゃあ、俺達は何をすればいいんだよ。」


「そこにいる餓鬼の家族も皆殺しだ。目撃者は全て消さなきゃな」


「くくく、お頭も人が悪い。」


「まぁ、しょうがないだろ。おい、餓鬼!ヴァンジェアンスだっけか?まぁ、事故にでもあったと思って諦めろ」


メイド、いや盗賊のリーダーは俯いて何も言わないヴァンジェアンスが、ショックで立ちすくんでいるんだと思い声を掛ける。


「……」


「あぁ?」


ヴァンジェアンスが、呟いていることに盗賊達は気づく。


「……」


「聞こえねぇんだよ!」


盗賊の1人が、イラついたのかヴァンジェアンスに拳を振り上げ、殴りつける。

6歳ほどの子供に、大の大人が本気で殴りつける。

リーダーは、「死んだかな」と思ったがさして止めることもなかった。


だが、


「あぁ?」


先程とは違い、驚きを多分に含んだ声を上げる。


それは、盗賊の拳を6歳ほどの子供が止めたからだ。

さらに、


「おいっ!離せよ!」


盗賊の拳は、ヴァンジェアンスの握りしめる小さな手から離すことが出来ない。


周りの盗賊達も、最初はふざけているのかと思っていたが、段々とその異常に気付き、警戒をしだす。

そして、


ヴァンジェアンスが視線を上げる。

その両目は血のように赤く、紅く、朱く染まりリーダーを見つめ。


「皆殺しだ」


グチャ


掴んでいた盗賊の右腕が、潰れる音がした。

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