ハンバーガーを食う高齢者
正信は旅に出る決意をした。
それは人間の本能を探す旅。
太古の時代から受け継がれし本能とはなにか。
ただ感情に身を任せる究極の自己中心的な主張。
食べたい時に食べ、寝たい時に寝て、ヤりたいときにヤる。
一日一日、強いて言えば一秒一秒を大切に生きること。
まずはにんげん たべること
『食欲』という本能。
とある初夏の昼下がり。
正信はハンバーガーショップにいた。
店内は至って平和、主婦グループ数組が楽しくおしゃべりをしている。
正信はするすると注文カウンターに行き、若い女店員にいった。
『ハンバーガー、全部』
店員はしばらく首をかしげ、
『全部とは…一体?』
正信は答えた。
『今、この店にあるハンバーガー、全部ください。』
店員の丸い目が一層丸くなった。
そして絶句。ただ絶句。
マニュアルにはない注文に戸惑っていると、奥からベテラン店員がきた。
『申し訳ありません、一度に大量注文される際は事前にご予約を頂かないと提供が難しくて…』
正信はちょっと困ってこう答えた。
『じゃあ迷惑ならないくらいの量で、最大限の個数のハンバーガーをくれ』
ベテラン店員は少し考えてから、笑顔で
『承知しました。ではしばらくお待ちください。』
正信とベテラン店員の闘いが今、始まった。
一体何個のハンバーガーが出てくるのか?
汗が出る心理戦。いまだかつてない客。
ベテラン店員は言った。
『全てお持ち帰りですよね?』
正信『もちろん』