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運命ドミネイション  作者: 櫟 千一
プロローグ
2/87

1話

「今の現状に、満足?」

 どこからか声が聞こえてくる。女の子の声だ。

「……誰?」

「質問を質問で返さないでよ。満足なの?」

「いや。満足じゃない……です」

 誰かも分からない人物に敬語で返事をする。ただ一つ分かっているのは、女の子と言うことだけだ。

「そうだろう、そうだろう。受験に失敗、浪人できない、おまけにお金もなく家庭状況も最悪……か。おもしろい。君の運命、変えさせてあげる」

「何? 何言ってんの?」

「私は君が信じていない神、なんて言っても信じるわけないか。これを渡すわ」

 そう言うと、空から四角い物体が落ちてきた。

「これは?」

「君の未来を、より良いものに変えてくれるもの。じゃあ、またね」


 あ。寝てた。今何時だ。

 午後五時前。周りは薄暗くなり始めてる。寒くなってきた。帰ろう。

 何だか変な夢見た気がする……。

 土手を登ると、自転車が道を挟んだ奥の小さな神社に止められていた。

 おかしい。川の手前に置いておいたはずなのに。誰かズラしておいてくれたのかな。

 カゴの中には見覚えのないゲームのコントローラーのようなものが入っていた。とにかく、交番に届けておこう。そろそろ山を下りなければ。



 帰りは下り坂だから楽だ。漕がなくても勝手に進む。坂道になっている橋の上を、僕は下っていく。

 何となく予想はしていたが、ブレーキが壊れた。

「え? 本当に? おいおいおい!」

 とんでもないスピードで下り続ける自転車。それに跨っている僕。自転車は僕の事情も知らずに加速を続ける。

 そして、僕はブロックにぶつかり、綺麗に弧を描き、川へと放り出された。脳内では、一瞬で「泳げない! 死ぬ! 死にたくない!」と思った。

 しかし、遅かった。

 川に落ちる寸前、カゴの中にあるコントローラーを握りしめる。まばゆい光に包まれたのを感じた。



 息ができる。服が濡れていない。目も開く。何だこれ。

 僕は白が強調された近未来的な、何もない場所にいた。

「コフタロンシステムへようこそ。お名前をどうぞ」

 どこからか声が聞こえてきた。

弓削ゆげ 玲泉れいせん……」

 少し間が開き、また声が聞こえてくる。

「ユゲ レイセン様でございますね。一致しました」

「ちょっとちょっと! これは何なの?」

「ご変更おめでとうございます。ユゲ様の運命、変えさせていただきました」

 運命を変更? どういうことだ?

「何? 運命? 何言ってるのか分からないよ? あ、そうか! これは夢か! それとも、僕は死んだのかな?」

「夢でも冥界でもございません。あなたは生きています。死の運命を、変えましたからね」

「死の運命? 本当に言ってるの?」

 全方向から聞こえてくる声に対して、疑問も持たずに返事を返していることに気付いていない。

「記憶が混乱していますね。無理もありません」

「と、とにかく返してよ! 現実? に!」

「わかりました。では、ご帰宅しましょう」

 気が付くと僕は家の前にいた。僕の足元には自転車が倒れていた。夢……ではなさそうだ。

 何故なら、僕の手には、あのコフ何とかと言うコントローラーが握られているからだ。

 こいつが、本当に運命を変えるのだろうか。



 自室で、もう一度よくコントローラーを見てみた。

 全体的に四角いデザインだ。中央に四角いスイッチ、右上にはA、B、X、Yのスイッチ、右下はスティック。左部分は全てタッチパネルと化している。

 中央部分の四角いスイッチを軽く押してみると、空中にウィンドウが表示された。

 画面には「何をなさいますか?」と表示されている。

「運命を変えるとかの説明を……っと」

 目の前に、ホログラフィーで作られたキーボードが表示された。もちろん入力が可能。

「そちらの説明は初めに聞いたはずです。お教えはできません」

「……なんて不親切なんだ。もういいや」

 僕はまた、中央の四角いボタンを押してウィンドウを消した。

 今日は何だか、疲れた。ご飯いらないから、寝よう。


「どう? コフタロンの力は?」

 夢のときと同じ声だ。

「誰?」

「だーかーらー! 質問を質問で返さないっ! まぁ良いや。今、君のところへ行くから」

「あ、そう……」

 誰かも分からないやつに、曖昧な返事を返す。誰も信頼できない。思考を停止させて何も考えずにひたすら眠った。このまま、永遠に眠ってしまいたい。


 目が覚めると、朝になっていた。急いで学校へ行く準備をして、家を出た。

 この道とも、あと数日でおさらばなのか。この道、三年間もよく歩いたよ。雨の日も、雪の日も、台風の日もあった。あのときの僕は、まだ未来に希望をもっていた。僕は大学に受かって、四年間のキャンパスライフを堪能するって。

 しかし、現実は違った。とことん酷いものだ。現実っていうものは。

 そのようなことを考えながら進んでいると、学校に着いた。校門前で生徒会が挨拶をしている。適当にあしらって、生徒玄関に向かう。生徒玄関では、主に女子生徒の挨拶が聞こえる。

 上履きに履き替えて、教室へ続く廊下を歩く。分かれ道かの如く現れる階段。こいつを上る。相変わらず偶数の二十八段。踊り場を曲がり、さらに上る。こいつは何故か奇数の二十七段。設計ミスなのだろうかと、三年間思ってたっけ。それも上り終えると、右に曲がる。長い長い廊下がある。この廊下を少し進んだ先に、僕の教室である三年六組がある。

 教室に入り、一番後ろの窓際にある自分の席に着く。階段を上ったあとなので、少し気分が楽になる。


「おはよう弓削!」

「おはよう……」

 朝の挨拶も元気に返す余裕がない。

「どした? 元気ないな」

「気のせいだよ」

「そっか、お前だけだもんなぁ。受験落ちたの」

 いきなり原因である言葉をかけられる。

「ハッキリ言って悪かった。でもさ。お前本当にどうすんの?」

 一番聞かれてほしくないことを聞かれた。

「分からない」

 この質問をされると、この返事しか返さない。

 いや、この返事しか返せない。

「分からないって、お前このままだとフリーターじゃないのか? 浪人できないんだろ?」

「そうだけどさ。でも僕の家、貧乏だから」

 心配をしているのかもしれないが、あまり過去のことを掘り返してほしくない。

「なら就職、と言ってももう遅いか。フリーター確定か?」

「……うん」

「そうか。あのさ。今日の昼、どっか行かね? 俺、奢るよ」

 彼の優しさはとても嬉しい。でも、同時に自分が惨めに感じる。

「ありがとう。でも、気持ちだけで、十分だから」

「相当参ってるな。何か力に立てればな……」

 予鈴が鳴った。



 彼は同じクラスの織衣おりい 海斗かいと。三年間、ずっと同じクラスで仲もいい。

 しかし、彼は県外の大学へ行ってしまう。中々偏差値の高い大学らしい。あいつなりに努力はしたのだろう。

 僕はと言えば、先ほど言った通り、家にお金もないので、県外には行けない。

 私立でも奨学金を借りるしか方法はないが、僕は国立を選んだ。学費に魅力を感じた。

 そして、見事に失敗した。大学に落ちた。分かってはいたが、ここまで来ると正直かなり辛い。これからどうしようか、どうなるのか。



 考えていると、僕の横の席に、誰かが座った。おかしい。僕の横に席はないはず……。

 隣には金髪で、碧眼の髪が長い、白い肌のとても可愛い女の子がいた。

「やっ、元気? 弓削レイセンくん」

 聞き覚えのある声だった。夢の声と同じだ。

「え? お前、もしかして……」

「運命を書き換えたと、言えば良いのかな? 信じないだろうけど」

「お、織衣……こいつ」

 僕は織衣に聞いてみる。嘘だ、嘘だろ。

「んー? 稟堂りんどうがどうかしたのか?」

「り、稟堂って……」

「もう、忘れたの? 私よ。稟堂りんどう 輪廻りんね

 稟堂 輪廻と名乗るその美少女は僕のことを知っている。だが、僕は知らない。それにしても、輪廻とはまたすごい名前だな。

「輪廻って、すごい名前……」

「良い名前でしょ? 気に入ってんだ」

「そうじゃなくてさ。お前、マジモンなの?」

 どうしても気になったので、つい稟堂に聞いてしまった。

「まだ信じられない? 声も同じなのに? 昨日、君のところ行くからって言ったじゃない。もしかして信じていなかった?」

「あんなの信じるやついるかよ!」

「お? いつになく仲良いじゃんお二人さん! 卒業も近いからか?」

 周りにはやし立てられた。僕は顔が真っ赤だっただろう。

「お前ら席に着けー。ホームルーム始めるぞー。それと、弓削。お前は放課後、職員室に来い。話したいことがある」

 間違いなく進路の話だ。どう説明しようか。




つづく

誤字訂正+追記しました。

3月27日

誤字訂正 4/28

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