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恋に堕ちました8

いつも続きを待っていただいてありがとうございます。

あと一話で完結です。

驚いたことに旦那様が急に部屋に転がり込んできました。

目は血走っており、この部屋にテロリストがいるかのような切羽詰まったその姿に恐怖を感じました。


「どこにいる間男は!!」


だからこそ、その第一声は拍子抜けでした。


「間男ではなく間猫たんです」


そう冷静に返してしまいました。


「………」

「………」

「にゃあ」


あの騒がしさがうそのように沈黙+鳴き声だけが辺りに響いて、なぜかお尻がムズムズします。

その沈黙を破ったのは旦那様です。


「その、メルをなめしゃぶっていたのはそのにゃんこか…?」


「なめしゃぶるって、旦那様がにゃんこ…紹介が遅れましたね。私の恋人のルゥです。素敵な方でしょう?」


「コーエンではないのだな」


なぜかコーエン様の名前が出てきましたが、コーエン様は全く関係ない。

まぁ、ルゥの飼い主であるし…


「コーエン様はルゥのお父様…つまり私の義父にあたります」


「意味が分からん」


そう言いながらもなぜか安堵している旦那様は急に挙動不審で私の顔を見たり外を眺めたりしだした。


「今日はどうかされたのですか」


私がルゥを抱きしめそのやわらかい毛並みを堪能しながら、問いかければ行動をやめ私の目の前までやってきた。


「本当にどうなされたの?」


驚いたことに旦那様は急に跪かれた。

あのプライドの高い旦那様が!!



「どうか俺とやり直してくれないか?俺は、俺は、本当にメルが好きなんだ」


恥も外聞もない。

今しかない。

必死に言いつのり床に跪き妻の手を握りしめた。


急な展開に妻はあいた口がふさがらない状態だ。

今、せきを切ったように妻への思いがとどまることなく溢れてくる。

我慢してきた分歯止めがつかない。


好きだ。好きだ。大好きだ。この先もずっと君といたい!!


ようやく元に戻ってきた妻は一度俺を見て、猫を見た。

そして笑みを浮かべて俺を見つめた。

それだけで俺はときめく胸に殺されそうになった。

そして妻はその可愛らしい声でこういったのだ。


「旦那様、無理です」と…


俺は固まった。


頭の中で今妻が発した言葉が繰り返されている。

無理です…?どういう意味だった?

無理、無理無理


俺は立ち直れない。


「今更じゃないですか、旦那様」


固まった俺をそのままににこやかな笑みを浮かべ猫を抱いて、妻は部屋を出て行った。



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