恋に堕ちました7
遅くなりました…あと5話くらいで終わるはず…
今回は旦那視点でお送りします
政略結婚で結ばれた愛のない両親を見て育った俺はいつも思っていた。
自分はこうなりたくはないと…
父は愛人を、母は装飾品に熱心で家族を顧みることのない冷たい家庭だった。
だからと言って俺は温かい家庭を築きたいとは思わなかった。
誰か一人に捧げる愛などどうもうすら寒いもの感じていたからだ。
誰か一人のものにもならず一夜の遊びと割り切った関係は楽なものだった。それが俺が政略結婚したとしても変わらなかった。
昔からの婚約者であった妻は俺を愛していた。
子供のころはいつでも俺の後をついてきたし、結婚してからもいつでも家で俺を待っていた。
俺はそんな妻を疎ましく感じていた。
そんな俺の態度にいつか妻も愛想を尽かし自分の好きなように生きていくと思っていた。
だがいつまでたっても妻は変わらず俺に愛をささやいていた。
冷たく突っぱねても変わらずに「旦那様、お帰りなさい」「今日も一日大好きですよ」と満面の笑みを浮かべて伝えてくるのだ。
そんな妻にほだされて妻を愛していると自覚して10年…未だに結婚した日に告げた言葉に俺は縛られている。
「君とは約束の通り結婚するがそれだけだ。君を夫人として尊重するが愛することはできない」「君は君で好きなように生きてくれ」
そう今更なのだ。
こんなことを言ったくせに君を愛しているなどと俺は言えなかったのだ。
だからこの10年間妻がこんな俺に好意を寄せてくれることに罪悪感と共に喜びを感じていた。
そんな弱い俺であるがついに決心した!
この結婚10年の節目についに妻に愛の告白をすることに!
俺はその日薔薇の花束と記念のリングをもって屋敷に帰った。
帰った俺に気が付いてよってくる彼女を抱きしめ、新たなスタートを切るはずだった…
だが、妻はもう俺を待ってはいなかった。
妻には俺ではない恋人ができたのだ。
自業自得――馬鹿な俺にはこの言葉がお似合いだ。
妻からの愛に答えなかった俺よりもやさしい新しい男のほうがいいに決まっている。
毎日楽しそうにその男のもとに向かう妻を俺は何も言わずに見送った。
俺がとやかく言う権利もないのだ。
彼女が俺ではない男と映る写真が部屋に飾られていた。
妻はそれを見て幸せそうに微笑むのだ。
それを見た瞬間、何とも言えない感情が湧きあがった。
こんなにも愛しているのに…そう思うと同時に妻は10年間以上もこの気持ちを味わってきたのだ。
一つ弁解しておくが妻一筋となった10年間浮気は断じてしていない!
それはさておき俺は妻が俺ではない誰かに俺にずっと向けていた笑顔を向けることがゆるせなかった。
妻が眠った部屋でその写真を見ていられなくなった俺はそっと写真立てを伏せた。
そして俺は今、修羅場を迎えている。
妻の恋人は噂でも写真からもコーエン子爵が本筋だが妻からは他の存在がいると告げられていた。
それは本当のことなんだろう…
何でそんなことがわかるかだと?
それは今俺が直面しているからだ。
いつもよりも早く帰宅した俺は妻と食事をしようと呼びに来たわけであるが…妻の部屋の前に立ち固まった。
「ああもうルゥたらそんなところを舐めたらくすぐったいったら」
まさに俺は妻の浮気現場に直面してしまったようだ。