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次の日、選び抜かれたメンバー4人+既に蚊帳の外感満載の俺の計5人は、俺の喫茶店に集合した。
中々錚々たるメンバーではないか。月乃、黎、星美、小雪……濃い、濃い過ぎるぞお前ら。第三者的立場から見れば、美人揃いの恐ろしく神々しいバンドになることは必至だろう。夢が膨らむだろう。さっきから喫茶店の中を覗いて行く常連のオジサマは、皆しばらく見惚れて立ち止まってる。
……だがオジサマは知らない。傍から見れば桃源郷のように見える喫茶店内は、既に修羅の国になっていることを……
「――先輩、この人、誰ですか?」
星美は笑顔で俺に聞いてきた。オカシイな。顔は笑顔なのに無茶苦茶怖いんだが……
「あ、ああ、コイツは小雪だ。月乃の妹だよ」
「へえ……月乃先輩の妹さんですか……」
何かメッセージ性のあるような視線を小雪に向ける星美。それを受けた小雪は、瞬時に戦闘態勢に入った。
「初めまして、星美さん。“晴司さんと仲良くさせてもらってる”、小雪といいます。どうぞよろしくお願いします」
「ちょっと小雪、余計な言葉があるんじゃないの? あなた晴司とは知り合って日が浅いじゃないの」
「あら姉さん、こういうことは日数じゃなくて濃さだと思うけど?」
「だとしたらアタシが一番だろうな。日数も濃さも月乃達には圧倒するだろ」
「黎先輩の場合、先輩に迷惑をかけた回数も圧倒してますけどね」
「何だと!?」
さっきからこんな感じ。言うなれば、ライオン、トラ、クマ、ワニが同じ空間に解き放たれた状況に似ている。外のオジサマ。そんなに羨ましいなら代わってやるって。お~い。
しかしまあ、いがみ合ってる場合じゃない。何しろ準備の期間が圧倒的に短すぎる。さっそく本題に入ることにしよう。
「―――んじゃ、とりあえず担当決めからするかな。ええと、ギター、ベース、ドラム、キーボードってところか。何が出来るか月乃から教えてくれないか?」
「私は何でもいいけど……ただ、ドラムは苦手ね」
「アタシはピアノ系はあんまり得意じゃないなぁ」
「私はベースがちょっと……私手が小さいからちょっと苦手です」
「私は何でも出来ますよ。ただ、ドラムが好きじゃないですね」
なるほど……要約すると、全員何でも出来る、と。どんだけ超人なんだよ。
「じゃあ、さっそく決めようか。なんでも出来るなら、バトルロワイヤルジャンケンでいいだろ」
「……何、それ」
「簡単だよ。それぞれ希望を言う。被ったらジャンケンして勝負する。負けたら残ったのでもう一度同じように決める、といったところだ」
「なるほどね……アタシはそれでいいよ」
「私も、それでいいです」
「私は晴司さんが決めたことなら従います」
「よっしゃ。さっそく決めようか。ちなみに、人気そうな楽器を言ったら速攻で被るからな。上手い事相手の裏をかきながら第二希望くらいを言うのがコツだろうな」
「………」
「………」
「………」
「………」
「せーの、で一斉に言えよ? ――じゃあ行くぞ。せーの……!」
「ギター!!!」×4
「………」
(お前ら……)
コイツらには、カーブという球種が無いのか。何で全員が全員、直球ストレートなんだよ。
「……まあ、どちらにしてもジャンケンだな。ホラ、さっさとやれよ」
「……仕方ないわね」
4人は円状になり、鋭い視線で他の奴を睨み付けた。4つの視線はうねりとなり、重い空気が店内に充満していた。
……どうでもいいけど、早くジャンケンしろって。
そして4人は、それぞれ手を前に出す。その時、月乃が口を開いた。
「……私は、グーを出すわ……」
「……!!」
「……そう来ましたか……」
「……フン」
(裏の取り合いかよ……)
月乃の言葉で、全員が固まる。かと思いきや、他の面々も次々と予告し始めた。
「なら、アタシもグーを出すよ」
「それなら、私はパーを出しますね」
「あら、それじゃ私はチョキを出すわ」
(……をい。相子になるじゃねえか……)
それから黙り込む面々。おそらく、奴らの頭の中では様々な憶測が駆け回ってるだろう。どうでもいいが早くして欲しい。
らちが明かないから、俺が声をかけることにしよう。
「……ジャンケンするぞ。はい、最初はグー……」
全員がまずはグーを出す。凄まじい勢いで。全員の視線は、俄然強いものになる。
「ジャンケン……」
「ポン!!!!」×4
全員、パーだった。相子かよ。
「……やるじゃないの」
「お前もな」
「月乃先輩、黎先輩、グーじゃなかったんですか?」
「あら、正直に出す方がどうかしてると思うけど?」
コイツらの頭の中では、全員が同じ考えに行き付いたのかも知れないな。それこそ、常人では考えつかないくらいの思考で。ジャンケンって、こんなにも考える必要があるやつだったのか?
それからも、壮絶なジャンケン合戦が繰り広げられた。それぞれが宣言し、裏をかき、そして出す。いくら出せども相子となり、激しい攻防が永遠と巻き起こる。いやいい加減にしてほしい。
そして数十分の攻防を経て、ようやく勝負は決した。
「よっしゃあああああ!!!」
勝負を決めたのは、黎だった。
「……なん、ですって……」
「……嘘……」
「……チッ」
月乃達は、この世の終わりみたいな顔をしていた。ジャンケンぐらいで何をそこまで……
「……とりあえず、次な。はいせーの……」
「ベース!!!」×3
「……お前ら……」
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それから数時間の後、それぞれの担当楽器が決定した。
ギター……黎。ベース……小雪。キーボード……月乃。ドラム……星美。
なんかイメージと違うような……特に星美がドラムってどうよ。まあジャンケンの結果だから別にいいけど。
それにしても時間かかり過ぎだろ。どんだけ激しい戦い繰り広げてんだよ。そもそも、ただのジャンケンだろ? 超人達にかかれば、ただのジャンケンすらもアルマゲドン級の攻防になるのだろうか……
「さて、最後にボーカルを決めようと思うんだけど……」
「それは絶対に譲れないわね」
「アタシもだよ。ていうか、普通ボーカルはギターが兼用するんじゃないか?」
「そんなの関係ないですよ」
「仕方がないから、さっさとジャンケンしましょ。時間が惜しいわ」
徐に手を出す4人。また時間がかかりそうだな。
「ちょい待ち。さすがにボーカルをジャンケンで決めるのはダメだろ。正式に歌唱力で決めるべきだろ」
「それもそうだけど……じゃあ、どうするの?」
「そうだなぁ……とりあえず、カラオケ行くか」
「そうだな……そこで、決着付けようか……」
再び視線をぶつけ合う4人。俺を置いてさっさと店を後にした。歩く4人の背中には、何とも言えないオーラが見える。ああ恐ろしい恐ろしい。
ていうか、すでに疲れてしまったんだが……
「……大丈夫なんだろうか……」
溜め息を一つ吐いて、重苦しい足を踏み出した。ホントに、こんなんで大丈夫なのか?
文化祭まで、あと6日と迫る。




