表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハッピーエンドの法則  作者: yuki
2/3

act 2

店の定休日だと言う事で、散歩をしていた

乃亜だったが、うっと口元に手をやったかと思うと、しゃがみこんだ――。


肩を上下させたかと思えば、何度も深呼吸をして、呼吸を整えた。


「これって……もしかしてつわり……?」

朝食の準備をしている時から、何か体の調子がおかしいとは思っていたけれど

まさかこんなにも早く、体調に変化が現れるとは、思っていなかったので、乃亜は素直に

驚いていた。


改めて、自分がこれから、こう言う事を、全部一人で乗り越えていくんだと考えると、

正直、めげそうにもなってくる。けれど、負けたくないと言う意地と、早くも芽生えた母性

が乃亜を支えていた。


(店と手伝い……どうしよう)

考えると気が重い。働かなければ子供を養えない。けれどそれより何より、まだ母親に何も言っていない

のが問題だった。早くに父親と離婚して、今は、再婚相手と幸せにしている母親だが、乃亜を大事に思っている分、ぶつかる時は、派手にやった。

認めてくれないかもしれない。

たった一人の母親だからこそ、認めてほしかった。そして、もっと言うならば支えて欲しかった。

けれどまだ母親に言う勇気がないのも事実であり……。


乃亜は、自販機でお茶を買うと、口の中に流し込んだ。

空を見上げると、気持ちい風が頬を撫でた。

そのまま何気なく、ふっと視線を向けた先に、鉄哉が居た……。



「乃亜っ!」

視線があった瞬間、背を向けた乃亜に、鉄哉の声が響いた。しかし乃亜は立ち止まらなかった。

その乃亜の肩をぐっと掴んだかと思えば、無理やりに、向き合わされた。

鉄哉は先ほどの乃亜よりも激しく肩を上下させている。

けれど乃亜はその掴まれている手を勢いよく振り離すと、また歩き出そうとした。

数歩、歩いた所で、また乃亜は肩を掴まれた。


「ちょっ! 乃亜待てって」

その肩に置かれた手さえも、乃亜は振り払う。そして、鉄哉の方へと、自分から向き合った。

「もうアンタとは、関係ないから」

冷めた瞳で、そう言葉を言い放った。それは、あの日の鉄哉と重なった。

鉄哉は、言葉を失った。その場から、動けなかった。

そんな鉄哉を放ったまま、乃亜は再び歩き出した。しかしまた『つわり』の揺り返しが来たのか、足を止めた。

口元に手をあて、必死にそれを堪えている様だった。しかし、苦しくて、気持ち悪過ぎて、うっすらと涙が浮かんだ。

「大丈夫か?」

そんな乃亜を目の当たりにした鉄哉が、思わず声をかけた。

真っ青になりながらも、乃亜は鉄哉をつっぱねた。

「もう、関係ないでしょ……。てっちゃんには」

「関係ない訳ねーだろ!」

思わず大きくなってしまった声に、鉄哉はしまったと思いつつも、その乃亜を支えている手に力を込めた。

「とりあえず、どこか座る所を探すから」

「――いい。放っておいて」

そう言った乃亜の体を、鉄哉は、引き寄せ様とした。けれど、それを乃亜は、完全に拒否した。

「もう、こういうこと、する様な関係じゃないでしょ?」


そう言った乃亜の声は、震えていた。そしてそれは、鉄哉にも伝わっていた。

「俺は……」

言葉をいいかけた鉄哉の手から、するりと乃亜は抜けると、よろよろとしながらも、鉄哉に背をむけ歩き出した。


そんな乃亜の背中を見たまま、今度こそ鉄哉は動けなかった。

そして初めて、本当にもう遅いんだと、死ぬほど後悔をしはじめていた――。




宜しければ、応援お願いします ^^

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ