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きつね顔は信用ならない

初めての投稿です。


なんとなくタイトルの言葉が頭に浮かんだので、書きてみました!

きつね顔の女は信用しないと決めている。



細身で切れ長の目、美人だけど笑っているのかいないのか分からないあの目。


正直タイプではある。


ただ、ああいうタイプは大抵、俺より二手、三手先を読んでいる。


それは偏見ではなく、経験則だ。


痛いほどに。


「先輩、おつかれさまです」


振り向くと、そこにいた。


きつね目。


――いや、違う。


正確には、きつね目“気味”の後輩。


丸い頬、丸い鼻、髪の毛も少しウェーブがかっている。

髪は一つにまとめられていて、どこか素朴だ。


だが目は細い。


笑うとさらに細くなる。


油断ならない。


「……おはよう」


俺は慎重に挨拶を返す。


「これ、どうぞ」


差し出されたのはカップに入ったコーヒー。


ブラック。


 ただ、匂いが甘い。


「俺、ブラック派って言ったよな」


「あ、えっと……苦いの苦手かなって、それに、疲れてる時は甘い方がいいかなって?」


何だよその推理は。


「いや好きだよ、苦いの」

「それに、コーヒーくらい自分でいれるから」


「そ、そうなんですか……すみません」


しゅんとする。


演技か?


いや待て。

頬が少し赤い。視線が泳いでいる。


天然か?

それとも計算か?


分からない。


分からないから怖い。


「まぁ、……ありがとな」


とりあえず受け取る。


彼女はぱっと顔を明るくした。


その笑顔が、妙に無防備で。


一瞬だけ、胸がざわつく。


「先輩、明日の会議資料、私が印刷しておきますね」


「え、いいのか」


「はい。先輩、昨日遅かったですし」


知ってるのか。


残業時間まで把握済み?


情報収集が早いな。


やっぱり油断ならない。何か企んでるのか?


「……別に気にするな」


「気にします」


即答。


そしてすぐに目を逸らす。


ほら、きた。


“意味深な沈黙”。


こういうのが一番危ない。


俺は知っている。


ああいう目の女は、

優しくしておいて、最後に切る。


 ――『あなたは悪くはないんだけど、もう良いかなって』


昔の記憶がよみがえる。


細身のスタイル。

冷静な声。

自信に満ち溢れた言動。

きつね目の美人。


胸の奥が少しだけ冷える。


「先輩?」


「……なんでもない」


目の前の後輩は、あの人とは違う。


体型も、雰囲気も、声も。


なのに、目だけが似ている。


笑うと細くなる、その目が。


「先輩、あの」


「ん?」


「仕事終わったら、今日の夕飯、一緒にどうですか」


来た。


距離を詰めるフェーズ。


早い。


展開が早い。


「……どうして俺と?」


「え?」


「いや、他にもいるだろ。同期とか」


「えっと……」


彼女は少し考えてから、小さく言った。


「一番、話しやすいので」


嘘か?


それとも。


いや、待て。


頬がまた赤い。


視線が合わない。


足元のタイルを見つめている。


……演技にしては下手すぎる。


計算なら、もっと自然にやるはずだ。


俺はコーヒーを一口飲んだ。


思った以上に甘い。甘すぎる!

こいつは普段こんな甘さ飲んでるのか?!


あれ?なんかジャリジャリいってる??!


眉間に皺を寄せながら答えた


「…いいよ、仕事が早く終わったらな?」


「ほんとですか!」


ぱっと顔を上げる。


その無防備さに、また胸がざわつく。


危険だ。


こういうのが一番、危ない。


きつね目女は信用するな。


それが俺の教訓だ。


でも。


彼女の笑顔を見ながら、俺は少しだけ思った。


――この狸みたいな後輩は、

本当に“食えない”のか?


それとも。


また、騙されに行こうとしているのか?

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