僕らの住んでいる世界は風船だ
丑三つ時、山の中にある廃墟になった団地に若いカップルらしき2人ががいる。
「やっぱ肝試しとか危ないよ〜」
「大丈夫大丈夫」
女が男の腕に掴まると、男は女の頭を撫でてこう言った。
「ここに来たら男の子の霊が見えるって。いうても子供だろ?」
そう言いながら進んでいく。団地の入口に立つ。
「ツタだらけだな」
「こわぁい〜」
「こらこらっそんなにくっついたら危ないでしょうよ。」
「キャー。だって怖いんだもぉん」
スマホのライトをつけ足元を照らしながら階段を上る。男女の足音だけが響く。2人は1つの扉の前で止まった。
「ここが404号室か。」
「綴¿↑驘※(化け文字)くん、やっぱりやめよう!」
「ここまで来たからには動画撮ってアップするんだよ!」
男は緊張しながらドアノブを回す。
キィィィィィィィィィバタンッ。
扉を開き、閉める音が山の中に響いた。この音を最後に山は沈黙に包まれる。
家の中
散らかったビニール袋、投げ捨ててあるプリントや服、洗われていない食器、ほこりっぽい空気。・・・懐かしい。
「まじの廃墟だ。カメラ回してるよな?」
「うん。この部屋、忘れ去られた感じがするね。」
男女はスマホのライトを頼りに家中を探索した。
「っだよ!普通の廃墟じゃねーか。動画どーすんだよ」
何も怒らない部屋に男は激怒した。
「ま、まあ何事もないに越したことはないよ。」
「チッ。クソっ!」
男は床に落ちていた物を蹴り飛ばした。それが机に当たった。
バサッ────────
一冊のノートが落ちた。
「あぁ?何だこれ?」
男が落ちた本をひろう。
「・・・僕の日記?」
「読んでみる?」
「そうだな」
〈ぼくの日記〉
5月1日
今日からぼくはこのノートに日記を書いていく。ぼくは9才の男の子。ママにはこの日記を見せないことにする。
今日は近所の⊃與¬◇*(化け文字)ちゃんと遊んだ。ぼくの好きな子だ。将来は結婚したいな。
5月2日
今日はパパと海を見てきた。果てしない海を見ると、ぼくはどれだけ小さいか思い知らされる。
5月3日
今日はパパと宇宙について学べるイベントに行った。そこには色々な写真が展示されていて、宇宙のことについて学べた。宇宙はビックバンから始まり、今もなお広がっているらしい。この宇宙はいつまで広がることが出来るのだろうか?もうすぐ限界が来るのではないのだろうか?
5月4日
今日はママと遊園地に行った。パパは仕事に行っている。ママは楽しそうに笑っている。いつもは何を考えているのか分からなくて、精一杯話を合わせてあげてたけど今日は久々にママと遊べて楽しかった!
5月5日
今日のご飯はハンバーグだった。ぼくの大好物だ!ママとパパも美味しそうに食べていた。ぼくは幸せだ。この幸せがずっと続きますように!
5月6日
最近、近所で行方不明が多発している。登下校に気をつけなさいとママに言われた。行方不明の人は無事なのだろうか?
5月7日
一家惨殺事件が起こったとニュースで言っていた。家の中に入り込んで、めちゃくちゃに刺したらしい。ママとパパは家の戸締りを念入りにしていた。
5月8日
ママとパパはまだ警戒している。ママなんていざという時の包丁まで備えている。そんなに警戒しなくてもぼくらは大丈夫だよ。
5月9日
近所で一家惨殺事件が起こったとニュースで言っていた。手順は同じ。ママとパパは「うちにもやって来るんじゃないか?!」とパニクっていた。そんなに警戒しなくてもぼくらの幸せは壊れないよー。
5月10日
ママとパパが殺された。家の中に無理矢理入ってきた人に刺されて死んだ。ママが死ぬ前に、犯人を刺した。ぼくの目の前で3人死んだ。ぼくらの幸せは当たり前じゃなかった。もろいんだ。風船のように。
5月11日
5月12日
5月13日
5月14日
ようやく分かった。これが答えだ。この世界は風船だ。いつまでも幸せだと思っていた世界が、たった1本の針で割れてしまう。この宇宙もだ。広がり続けるのも誰かが息を吹き入れているからだ。そして、ぼくらの幸せのように一気に壊れる。この世界は風船だらけだ。ぼくの風船を割った世の中の人の風船を割り返していこう。そしてこの素晴らしい答えを教えてあげよう。
「・・・イカれてる。」
「何これ不気味すぎる!この日記9才の子が書いたんでしょ?!」
「お、おい早く帰ろうぜ!」
男女が帰ろうとこっちを向く。
「キャー!おばけぇー!!」
「違うよ、おばけなんかじゃない。ぼくはその日記の持ち主だ。これから君たちに素晴らしい答えを教えてあげるよ。」
パァン───────────────────




