五話 いつもの日々4
(カイリア……ゼロ先輩の母国……)
理由は分からないが、胸が締め付けられるような感覚を覚える。
ゼロが戦争の道具として使わているが、元々の愛国心の強さから自ら望んでやっていること、と──本人の口からではないが──よく耳に入る。
それは学園内や新聞、街で暮らす一般人などから。
でも、やっぱり強制的に道具として使われているという噂も耳にする。
……本当のところは本人の口から聞くしかないため、噂ばかりだ。
それに噂の内容の元となっている根本はカイリアから出ている情報や、長年カイリアのために粉骨砕身働いてきたクリアル家のご令嬢だから、というところ。
「カイリア…………」
「? アリス?」
アリスからなぜか緊張感を感じる。
気になってアリスの顔を見るとアリスはこう言った。
「あーえっとほら! フレンゼがカイリアに戦争を仕掛けるとか、先生も言ってたじゃん。だから、ゼロ先輩がどうなっちゃうんだろうって、思って……」
「……確かに心配になるよね……ゼロ先輩、戦争に駆り出されるのかな……」
今の時代、戦争は前線で魔乃騎士と魔女が戦力になり、兵士と兵器はあくまで、後方支援や自国を守る役割を任される。
それにまず、戦争で魔女が出てこないという可能性はありえない。
だから、ゼロは……。
いや、これ以上考えるのは……やめておこう。
「なんか今日のアイス、美味しくないね……」
今日の授業がすべて終わり、いつものように帰り道はバニラ味のアイスクリームを食べながら歩いて帰っていた。
しかもアリスと二人きりで。
ストームはルルがアリスを好きな事は知っているからわざと席を外してくれていて、ユーラは毎日、他にやることがあるらしく、こうなる。
普通はこの状況を“デート”というのだし──まあ、なぜかデート感覚はないが──普段はルルにとってとても楽しい時間だ。
しかし、戦争の話を聞いた後では……。
「うん……そうだね」
アリスも同じ感覚らしい。
「…………そういえば遊園地行くのいつの休みだっけ」
無理に話題を変える感じでアリスがそう言った。
約二週間前にアルメジア、東エリアにある世界でも超有名の遊園地は二人きりで行く約束をしていたのだ。
……今もさっきのことのように鮮明覚えている。
『二人きりで行こう』と言った時は心臓の鼓動が止まらなくて、これだけ長い仲でも流石に特別な緊張感を覚えることを。
「え、えーと……次の祝日だね。確か……アルメジア創立記念日だったはず」
「そうだったね。アルメジア創立記念日はよく一緒になってる感じがする。なんでだろうね?」
「流石にたまたまじゃないかな……」
でも、そういえば……八才の時、二人で占い屋さんに行ったのも……アルメジア創立記念日だった。
「あ。ほら、あそこって、新しくできた服屋さんじゃない?」
アリスが己の右側にある看板に大きく『New』と書かれ、下に書かれている名前は『The・Rock』という服屋を指差す。
「そうだね。雑誌の表紙にもなってたかな」
ちなみに雑誌はユーラが好きな出版社のもので、お金がないので買わず、二人して立ち読みしただけである。
「ねぇ、あそこ寄ろうよ」
「え! で、でも僕、お金ないけど……」
悔しいことに好きな人へ服を買ってあげるお金がない。
アリスを大切にしたいし、好きになってほしい。
心の底から好きになってもらうにはプレゼントだけではいけないというのは一応分かっているし、お金で結ばれる関係なんて嫌だ。
でも、これくらいのお金ぐらい……。
ただ、それではユーラと暮らすお金が……。
つい迷ってしまう。
するとアリスがこう言った。
「別にいいよ。自分の分くらい買うなら自分で出すから。ほら、ルルはユーラと暮らすお金がいるでしょ?」
なんていい子なのだろう……。
女神……。




