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青いみかんの味
要が薄皮を剥かずにみかんの房を噛み締めてみると、みかんの味が口の中に広がる。少し酸っぱいけれども、甘みを帯びた、青いみかん特有の味。
「おいしい!」
思わず言葉が出て
「ありがとう!」
と加代の方を向いて伝えた。
「よかった〜」
という加代はどこか人懐っこい顔をしていた。
要はそのまま、残りの房を食べた、満足した笑みを浮かべながら。
「要は、ほんとみかんが好きみたいね」
という由美は、少し呆れ顔。
「みかん、ありがとう。もし学校のこととかで分からないことがあったら、聞いてくれたら」
コクリと加代が頷いてホッとした表情を浮かべると
「わたし、教室に戻るね」
「そうそう、加代ちゃん、どこに住んでるの? 近所だったら、一緒に帰ろう」
「下河原町」
と加代は由美に答えた。
「下河原町なら、同じ方向だよ。あたし、蛇松町だから一緒に帰ろうよ、そう、要も」
由美が要に視線を流した。




