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共通の知り合い
「中島章太郎君、知ってる?」
少女が言った。
「あ~、章太かぁ! うん、知ってるよ。そうだそうだ、戸田から来てるって言ってたような気も」
中島章太郎は、要にとって将棋のライバル兼友達だった。要は同居する祖父の影響で囲碁が好きだった。もっとうまくなりたくて、三島市にある将棋教室に通っていたのだが、そこで知り合ったのが同学年の章太郎だった。
いがぐり頭の元気な少年。小五の6月になって章太郎は家庭の事情で将棋教室を休会していた。
「章太郎君がね、あたしがこの小学校に転校すると話したら、こう言ったの。
鈴木要という友達がいるから、転校して不安だったらそいつを探して、頼れって。
信頼できて優しいやつだからって」
章太郎には自分の小学校について話したことがあったが、覚えていてくれたのだろう。
自分のことを「信頼できて優しいやつ」と女子に言ってくれていたのはやはり照れてしまう。戸惑いもあるけれども、章太郎の信頼に応えたい。
そして何よりも自分を頼る、目の前の少女のために役立ちたい気がした。