第37話 本当の勝負が始まる!
「まさか『闇の晩餐』がひそんでいたとは……」
グレゴリー校長が半ば呆れたようにつぶやいた。
黒服の連中はベクターを守るように囲み始めた。
一方、王立警察は黒服の連中を睨んでいる……!
「まったく騒々しい!」
グレゴリー校長は審査員席を立ち、王立警察官と黒服たちに向かって声を上げた。
校長を黒服たちは睨みつけているし、王立警察官たちは敬礼をしている。
「も、申し訳ございません!」
王立警察官の中年の男――おそらく隊長だろうが……校長に深々と頭を垂れた。
「ポレット・モリアーネさんの救出に手間取りましたっ!」
「……ご苦労様。心から安心しました」
ポレットといえば、ニコルや女性警察官と一緒に病院へ向かったようだ。
一方、王立警察官たちは黒服たちに向かって吠えだした。
「闇の晩餐! 暴れると全員逮捕するぞ!」
「王立警察にたてつくか?」
「構わん、総員、剣を抜けっ!」
耳に残る鉄器の音が空気を切り裂いた。
お、おいおい、ヤベぇぞこりゃ。
「リクト、大丈夫? こ、このままだと本当に戦闘が起こりそう!」
アイリーンが青ざめた顔で俺のほうに駆け寄ってきた。
「ふむ……騎士道の考えだと、『敵対者は完全排除する』……。これが平和を維持する唯一の方法だ!」
レイチェルが自分も肉切り包丁を抜き出そうとしたので、俺はあわてて止めた。
しかしベクターは、気色悪い笑みを浮かべて俺や王立警察官たちに話しかけてきた。
「皆さん、落ち着いてくださいよ。殺意があふれ出ちゃってますよ~」
お、お前なあ……全部お前のせいだろうが!
するとベクターは、俺に向かって胸を張った。
「リクト君、君たちと僕らは決着をつける運命にあるようです!」
「あ、ああ?」
「ホワイトクラスとブルークラスの最終決戦……! そろそろ、始めましょうか!」
「お、おい! さっき負けたくせに何を偉そうに言っているんだ」
「は?」
ベクターはぽかんとした顔をして、俺を見つめた。
「僕が君に、いつ負けましたっけ? 僕はガルダスを監督していただけですよ~」
「な、何だと?」
まったく憎たらしい顔で言いやがる。
で、でも確かにそうだ。
こいつは椅子に座っていただけ……つまりベクターの実力はまだわからないってことか!
「僕とホワイトクラスの生徒三名と、君のブルークラスの生徒三名で対戦しましょう!」
「それじゃあ、ついに、あたしの出番だなあああっ!」
獣の咆哮が耳をつんざいた……と思った。
な、なんだこいつは!
白い制服から腕の筋肉があふれ出て、制服が破裂してしまいそうだった。
「あたしはテオドーラ・バウスネルン! ホワイトクラス所属の獣人族だあああっ!」
俺の目の前に立ちはだかったのは、獣人族の少女だ。
顔は美人だが、女とは思えない分厚い筋肉を体に宿しており、頭の上の猫耳を揺らしている。
「ほほう? 獣人族だと? 面白い!」
レイチェルが俺の前に立った。
「テオドーラとやら! 私がお相手しよう!」
「ん? かわいいじゃん!」
テオドーラは自分の顎をさわりつつ、レイチェルを品定めするように見た。
「あたしんところの、グレモラス獣人族は女同士で恋人になり結婚するんだよ! お前も嫁にしてやろうか!」
「な、何……だと? 女同士……結婚……」
レイチェルは理解不能のようだ。
って、なんで顔を赤らめてんだよ……。
「私はゲルダ・ローバルフォードです」
テオドーラの後ろから黒髪の美少女が、静かにさっそうと現れた。
漆黒のロングヘアが草原の風に吹かれて揺れた。
「ベクターの双子の妹です。サイコパスの兄が失礼しました。兄がとんでもないアホですみません」
美人で物静かだが……言っていることがすげぇ。
っていうか、ベクターの双子の妹なのかよ!
「じゃあ、私がゲルダちゃんと勝負しちゃおうかな!」
アイリーンが一歩前に進み出た。
「よろしくお願いします、アイリーンさん。完璧にあなたを負かして悦に浸りたいと思います」
「あ、あんたね……」
アイリーンはピクピクと頬を痙攣させ、ゲルダを睨みつけた。
ベクターの双子の妹は毒舌サイコパス女だった……血は争えねえ……。
「当然、僕はリクト君と戦いますよ!」
ベクターはさわやかな笑顔を見せている。
「どちらかのクラスが二勝すれば……完全決着……」
「マジでやるのか!」
「その代わり、君たちが負けたら……」
ベクターの表情に陰が広がった。
「グレゴリー料理アカデミーは最弱の料理アカデミーとして……」
ん?
「完全閉鎖を要求します!」
な、何いっ?
ベクター……こ、こいつ、何を考えてやがるんだ?
黒服のヤツらは、まだベクターたちを守るように取り囲んでいる。
「こいつら、仲間……?」
黒服とベクターたち……ホワイトクラスは、一体どういう関係なんだ?
【作者・武野あんず からのお知らせ】
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