第28話 異次元デパ地下の秘密解明?
「――さあ、死神が舞い踊る地――禁足地へ出向きましょう」
ポレットがたどたどしく俺とニコルに告げた。
さっきは「悪魔と死霊が飛び交う地獄の門の前」と言っていたが、コロコロ変わってるな……まあいいか。
◇ ◇ ◇
「よっし! 携帯端末――【WENDY】 で、禁足地を動画で撮影しよ~っと!」
ニコルはケラケラ笑った。
もし俺が言ったら、地元民に三メートル助走をつけて殴られそうだ……。
さて――山道の川下に行き、ようやく昨日の古ぼけた神殿を見つけた。
「す、すごい……。全身に妖気を感じるわ……」
ポレットが森に囲まれた石造りの神殿の入り口を見回しながら、恍惚の表情でつぶやく。
大理石のマーブル模様が美しいが、柱も床もツタだらけだ。
カビ臭いし、青臭いぜ、まったく……おや?
『絶対に入るな! 罰金を取ります。呪われます。地獄に落ちます! ――エルサイド島住人』
入口の横には錆びだらけの看板が立てかけてある……。
あ~もう、ひでえことが書かれてあるな。
「やっぱ、ヤバいんじゃねえのか……ここ……」
俺が躊躇していると、ニコルがWENDYをリュックから取り出した。
「さぁ、中に入ってみよう! 冒険の始まりだぁ!」
ニコルがWENDYを片手に神殿内に、さっさと入ってしまった。
行動力の化身か、こいつは……。
◇ ◇ ◇
「うん……?」
神殿の内部に入ると、不思議なことに廊下全体が明るかった。
廊下はエメラルドグリーンに染まっており、壁も床も自ら発光していた。
まるでこの古びた神殿が、生きているようだ……。
「魔導電灯でもついてるのか?」
「ウフフフ……古代の秘められし魔力の輝き……」
ポレットがクスクス笑った。
俺はポレットに気になっていたことを聞いてみた。
「ポレット、お前も『異次元デパ地下』を知っているらしいが」
「ええ……。私も異次元デパ地下から材料を取り出せるわ」
「な、何いっ?」
俺は目を丸くした。
ほ、本当なのか?
しかしポレットはため息をつきながら答えた。
「だけど、私は料理技術があまりないから……」
「う、うん? そうなのか」
「受験のときは材料と道具を取り出したら、協力者のナンシーに調理をまかせっきりだったわ」
「へ、へえ……よく受かったな」
「私は神に選ばれし人間……」
ポレット、お前は自信があるのかないのか、どっちなんだ。
するとニコルが声を上げた。
「ねえ、こっちに何かあるよ! ヤバ~!」
廊下を進んでいくと、病院のリノリウムのようなタイルが敷かれた廊下に出た。
両側に部屋があり、右手の部屋をのぞきこむと……。
「う……わ!」
俺は驚愕した。
「こ、ここは異次元デパ地下じゃないか!」
この部屋の銀色の厨房と冷蔵庫、商品棚の列は、まさしく異次元デパ地下内部そのものだ。
俺の異次元デパ地下よりは狭いが、商品棚が五列並んでいる。
商品棚には何もないが……。
「こ……ここは異次元デパ地下の『原型』が配置された場所だわ……」
ポレットが静かにつぶやいた。
プ、プロトタイプだと?
「『原型』という意味よ。私たちが使っている異次元デパ地下の古いバージョン……だと想像するわ。狭いし……」
「俺の異次元デパ地下と、ここは繋がっているのか?」
「いいえ、こことあなたの異次元デパ地下は繋がっていない」
ポレットは両手を合わせて神に祈るように話した。
「きっとあなたの異次元デパ地下は、別の場所の神殿と繋がっていると思うわ」
「べ、別の場所……」
「でも、ここと誰かのスキル……古い異次元デパ地下のスキルは……かつて繋がっていた」
頭の中の整理が追いつかねえ……。
と、とにかく、異次元デパ地下は幻想のものじゃなくて、実際に存在する……そういうことなのか?
「誰がこんなものを作ったんだ?」
俺がつぶやいていると、ニコルの声が外から聞こえた。
「ねえ、こっち! きゃあああ、マジでついに見つけたわ~!」
神殿の裏口に出ると、そこには大きな川があった。
う、うおおおおっ!
ほ、細長い魚がたくさん泳いでいる!
「リクト、見てよ~! これが『ドラゴンフィッシュ』に間違いないよっ!」
「ほ、本当かよ! ……でも形は長細いな」
「そうね……! これはドラゴンフィッシュ……いえ、違うわ」
ポレットは注意深く川の中の長細い魚を見た。
「これ、ウナギよ……!」
「ウナ……ギ? 何だそれ?」
俺はニコルと顔を見合わせた。
「リクト……。あなたも日本人の前世がついているのなら、知っているはずよ……。この最高の高級魚……ウナギをね……!」
ポレットは断言するように静かに話した。
ウ、ウナギって何なんだ?
こ、こんな細長い魚、本当に食えるのかよ?
【作者・武野あんず からのお知らせ】
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