第27話 霊能料理人登場
翌朝、午後10時――。
俺たちブルー&グリーンクラス、そしてホワイトクラスの生徒たちは、保養所の玄関ロビーの集合した。
ボウハラ先生が朝っぱらから声を張り上げた。
「これから課題を開始する! 野外の食材は一つだけ使用! あとはどこの食材を利用しても構わない!」
ボウハラ先生は俺たちの目を覚まさせるような、大声で怒鳴った。
「午後4時に課題料理を提出、分かったな! あー……エ、エルサイド島ならどこに行っても、じ、自由だ。ただし、自己責任だからな!」
ボウハラ先生は言いにくそうだ。
横でグレゴリー校長が腕組みをして黙っている。
おっと……三名一組でグループを作るんだっけ?
「ふむ……野外活動なんて楽しみだな!」
「そうね。一緒に楽しみましょ!」
「私、地図を作成しましたから、島を巡りましょう」
レイチェルとアイリーン、ミアは黄色い声を出しつつグループを形成していた。
「ねぇ~! リクト!」
……ん? そのとき後ろから声がした。
「あたしだよ、あたし! あたしと組んでよ、マジ頼むッス!」
「な……何だお前?」
髪の毛は金髪、肌は小麦色の、ちょっと……胸の大きな女子が来たぞ。
あ……ああ、そういえば……同じクラスのニコルって女子か。
「イケメン男子と組みたかったんだけどさあ~」
ニコルは軽い声を出している。
制服は緑色だから貴族か王族だろう……意外だ……。
「余っちまったってことか? ニコル」
「違うって! なんか他の男子はエロ目線であたしを見るし~……。その点、リクトは安全じゃん?」
どういう意味だよ……。
「つーか、あたし、女子に避けられてんだけど」
「……あのな、お前の性格じゃ、女子は全員ビビるだろ……」
ニコルはグイグイくる性格らしく、女子からは「なにあの子……色気出してさ」と嫌がられてそうだな……。
「あたしは最高のギャル料理人を目指してる、ニコル・マルバーノ! 改めてよろしく~!」
ギャル料理人って……ヤバくねぇか?
「あたしはモテたいわけじゃないッス。最高の料理人になって女子からも男子からもモテて、全人類からチヤホヤされたいの!」
結局モテたいんじゃねーか。
するとニコルはブツブツ言いだした。
「つーか、フェリクスとかベクターとかいう男子、キモいよね~あいつら」
「ま、まあ……お前も制服からちょっと胸出してるの、何とかしたほうが良いけどな……」
俺たちが話し合っている間に、ベクターとガルダスはさっさと外に行ってしまった。
本当に禁足地に向かっていくみたいだな……あいつら!
◇ ◇ ◇
「ねえっ! 禁足地に『ドラゴンフィッシュ』って魚がいるらしいの! 東洋の龍みたいな形をしているらしいよ!」
二人で保養所から外に出たとき、ニコルがわけの分からんことを言いだした。
ん? 禁足地にドラゴンフィッシュだと……?
「東洋の龍か。ああ、尻尾が長いヤツ……? でも、ドラゴンフィッシュって聞いたことないぜ」
「新種の魚だよ! そいつを捕まえて調理したら、ウチらヒーローだよ~!」
「ニコル……本当に禁足地に行くのかよ。地元民にバレたら、マジで半殺しにされるぞ」
「な~に言ってんの! リクト、学校のヒーローになりたくないの~?」
こいつの頭の中は中学生か……。
ん? そのとき、頭の中に軽快な音が響いた――。
「異次元デパ地下」のお知らせか!
【◇クエストが発生しました!◇】
【クエスト②:禁足地の『ドラゴンフィッシュ』を捕獲せよ!】
【難易度:レベルC(☆☆)】
【報酬:「異次元デパ地下」の食材、道具類が増える】
俺は素早く、目の前に異次元デパ地下の「インフォメーション・ウィンドウ」を出現させた。
新しいクエストか!
うーむ……そのドラゴンフィッシュとやらを捕獲することが、次の目標になりそうだな。
「それ……異次元デパ地下……呪われし王の魔法……」
うわ!
俺の横から小さいかわいい声が聞こえた。
「は? な、何だって?」
俺が驚いて飛びのくと、そこにはミアより小さい女の子が立っていた。
緑色の制服だが、上に茶色とグレーのボロボロな民族衣装を羽織っている。
顔が病人みたいに真っ青で今にも倒れそうだ……だ、大丈夫か、この子?
「あ、あ、あなた、『スキル』を持っているのね……ひ、ひい~!」
「お、おい……」
「悪魔よ! 悪魔が取り憑いているわ……呪いよ!」
「き、君、だ、誰だ?」
俺が目を丸くしてその小さいクラスメートを見ると、ニコルが説明し始めた。
「この子は、あたしの従姉妹のポレット・モリアーネって子。ま、まあ変わりモンだよ、この子は」
「呪われし恐ろしきスキル……取り憑かれた者は一生料理から離れられない……」
おいおいおい……このポレットって子、唇が紫色だぞ……。
「い、い、異次元デパ地下……料理王『グレゴリー・ジョウイチ』が開発した呪われしスキル……私も持っているわ」
「え?」
俺は耳を疑った。
今、ポレットは重大なことを二つ、言ったように思えたが……。
「異次元デパ地下は何回か使ったことがあるわ。そして、この禁足地にその恐怖のスキルの秘密があるのよ……フフフフフフフフ……」
ニヤ~……と笑うポレット。
「ちょ、超怖ぇ~!」
ニコルは俺の背後に隠れた。
ま、まさか!
俺以外に、異次元デパ地下の使い手がいるってのか? ……この子が?
「ポレットの家系は『霊能料理人』だよ! だからあたし、近づかないようにしているけどさぁ~」
ニコルは俺の背後からつぶやいた。
「おいおいおい! 霊能料理人? そんなジャンルあるわけねえだろ!」
俺のツッコミもむなしく、ポレットはニマニマ笑って口を開いた。
「い、い、行くわよ……悪魔と死霊が飛びかう地獄の門の前――禁足地へ……」
い、色んなヤツがいるぜ……。
だが、このポレットは、どうやら異次元デパ地下の秘密を知っていそうだ……!
【作者・武野あんず からのお知らせ】
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