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私の現実

癒やしの力を始めとした聖なる力をどれだけ伸ばすか、どれだけ貢献するか。

それが『星キラステップアップ』に酷似したこの世界で、聖女に求められる役割だ。

――まあこれは、学院でしっかり学んで行けば問題ないだろう。聖女の判定を受けた際、神官長から歴代最高峰とお墨付きを受けたくらいだ。初期値が振り切れているなら、なおのこと基礎を固めるのが一番だ。


「ごきげんよう、聖女様」

「やあ、今日も良い天気だね」


さて、次の問題が今日もやって来た。

悪役王女リリナに立ち向かい、国をより良くする為に問題解決に勤しむ――のであるが、この世界のリリナは悪役王女と言うには可愛らしい悪戯しか仕掛けてこないし、私以外には非常に良き王女である。

適当にあしらって、ステータスアップに時間を割くべきだろうか。


「ごきげんよう、王女殿下。メル公爵令息」


昨晩も私の部屋にいたというのに、婚約者に腕を絡めて。一体どういう思考回路してるのか甚だ理解出来ないが――まあ、いい。

それより注目すべきは、腕を組む二人の後ろにいる男達だ。


「……」


――少し調べるか。

意識を耳に集中させれば、周囲の声を拾うことが出来る。聖女の力でも何でもない、聴覚強化の魔法であるが、私が使えばほんの少しどころかちょっとした心の声まで聴こえてしまうのだから、聖女の力とは恐ろしいものである。


「生徒会の皆様よ!」

「ルド様も素敵だけど、学生でありながら音楽家でいらっしゃるキーリィ様もお美しいわ」

「わたくしは騎士見習いのガルツ様が……ああ、逞しい、触れてみたいわ」

「商才溢れるヴァン様だって素晴らしいわ!可愛らしいお顔だって……ああ」


――後ろにいるのが攻略対象ね。

金に、緑に、茶に、水色。

色とりどりだこと。


「キーリィ様とガルツ様……幼馴染でずっと一緒にいるだなんて、これはもう婚約ですわ……」


おっと……これ以上聴くとあらぬ妄想まで流れ込んで来るな。


「リリナと聖女、もっと仲良くならないものか」

「あれがリリナ様を虐げる聖女か」

随分と無愛想ですね」

「平民で特待生っていうんだからすげえよな」

「聖女さん、宣伝に使えないかな」


ご令嬢達から意識を離して、生徒会の面々に意識を向ければ、予想通りの反応だ。

心の声は聞き分けるのが大変なので、頭の中で色付けしたり、順番を振り分けたりしているのだが――順にルド、キーリィ、ガルツ、ヴァンだろうか。


「――生徒会の皆様も、ごきげんよう」

「……」


返事はなかった。

攻略対象も放置で良いか。ゲームでは聖女が生徒会に加入、彼らと関わり、絆を育むシナリオである。原作のリリナは面倒だからと関わりもしないと聞いていた。

しかし、このリリナが何か知らないが頑張っているようなので、私が手を出す必要はなさそうである。


「ルド・メル公爵令息は王家の親戚筋で、キーリィ・ハルト侯爵令息は神官を多く排出された家門であらせられる。

ガルツ・ダン公爵令息におかれましては軍事力の要でいらっしゃるし、ヴァン・ロッソ伯爵令息は若くして御自身の店を複数構えていらっしゃる――

未来の女王陛下、そして生徒会長の王女殿下をお支えするにこれ程まで相応しい方々は相違ないでしょう。

一国民として、生徒として誇りに思います」


ただ、生徒会に誘われても困るので釘は刺しておこう。


「これからも、陰ながらお支えさせて頂きます」


――リリナが何か言いたげにこちらを睨んでいたが、無視で良い。間違ったことは言っていないし、聖女の務めは生徒会ではなく国のために力を使うこと。

例えばこれから向かう神殿で捧げる祈りとか。


「聖女なら王女を側で支えるのが正しいのではなくて?」


礼をして踵を返す私の背中に、我慢ならなかったのであろうリリナの声が飛んで来る。


「私が祈れば、土壌は肥えるし作物もよく育つそうですが……まだまだ国の半分程しか行き届いておりません。陛下より不作続きだから祈るように命を受けておりますが……よろしいのですか?

私の時間を正しく使わなくて」


振り返って問う。

リリナはもう鳴木里々奈ではないのだ。

勿論、私も佐良美鶴ではない。


「……不敬よ」

「構いません。

私は聖女として、王命を優先するまで」


立場も、背負うものも違う。

ここはゲームではない。現実だ。


読んで頂きありがとうございますー!

勢いで書いているのでおかしなところもあるかもしれません。しれっと修正しておます。

※タイトルもちょっと直球過ぎたので変えました

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