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ロクデナシ、イメチェンする

よぉ、久しぶりだな。前回からしばらくあいたんだが、まだ見に来る奴がいるなんて変な話だな。

俺はというと城までの移動で馬車にずっと乗ってたからケツが痛いぜ。痔になってなけりゃいいんだがな。

まあとにかく今回ちょっとイメチェンするからよ、かっこよくなった俺を応援してくれよな。

ガラガラガラガラ・・・・。


 俺たちは馬車に揺られて進んでいる。

だが、どこに向かっているかがわからん。

と、いうのもだ。目隠しをされているのだ。


今回の依頼先がどうやらVIPが住んでいるらしい。それで場所がわからないように、こうやって目隠しをされているわけだな。まあ確かに後から俺が盗みに入る可能性は大いにあるわけで、この判断はある意味正しいというわけだ。でももう3日間もこの調子。さすがに疲れてきたぜ。


「グォー。ゴォぉぉぉオオ!!」


 後ろからフィオのイビキが聞こえる。くそっ、こいつはマイペースなやつだ。うらやましいぜ。


「なぁ、まだつかねぇのかよ」


「・・・答えられない」


 これも俺がイライラしてる原因のひとつなんだよな。御者に聞いてもなにも答えてくれねぇ。


「おい、セシリア。暇だからなんか楽しい話してくれよ。」


「うぇ・・・。もう無理ぃぃ・・・。」


 どうやら馬車で酔っているみたいだ。話し相手にもならん。


「ちっ、この役立たずが」


「そんな事言ったってぇ・・・。うっ」


 頼むから馬車の中で吐くなよ。


 そんなこんなで馬車は走りつづける。


 ギッ・・・。


 不意に馬車が止まった。なんだなんだ、トイレの時間か?いや、さっきトイレは行ったよな。じゃあ飯か?


「ついたぞ」


 不意に目隠しが取られる。久しぶりに目が開く。まぶしぃー!!って思ったが目が慣れてくるにつれて、なんか異様な空気を感じる。なんてゆーか、全体的に暗いというか、淀んでいるというか・・・。

セシリアはセシリアでまだ馬車酔いがよくなっていないのか、せっかく目が開いたにもかかわらず、うずくまってるぜ。


「ビューーーーーーーーーーーーーン!!!!」


 目の前をすごい勢いで走っていく物体がある。って思ってたら


「フィオ・・・・。大きな声出さないで・・・・。」


 横でセシリアがなんとか声を出している。というか、さっきのはフィオだったのか。どこからあんな元気が出てきてるんだ。まぁいいや。とりあえず仕事場に行くか。


「職場はこの道をまっすぐ進んだところにある。途中結界が張ってあるがお前たち3人は通れるようにしてある。」


 御者からふわっとした説明を受け、俺たちは歩き始めた。しばらくするとなにかバリアみたいなものが出てきた。これが結界か。まあいいやと思い結界を通り抜けた瞬間、急に城が出てきた。ちょっと待て。さっきから感じていた異様な空気だが、この城から感じるぞ。俺の第六感が全力で警告してくる。この城はやばいって。いや、俺そんな能力ないんだけどさ。それでも感じるんだよ。ここはやばいって。


「ここって、もしかして・・・」


 隣でセシリアもかたまっている。この空気を感じて酔いがどっかに行ったみたいだ。全身でやばさを感じてやがる。フィオだけは相変わらずなんだけどな。


 そして俺たちは入口についた。ただ、王の城みたいな華やかな印象はなく、全体的に暗い。どちらかというと要塞とかの方がしっくりくる気がする。入口は大きな扉というか、城門があった。そして見張りの人と目が合う。違う、人じゃねぇ。魔物だ。見張りが目が3つある。どうやら俺たちはとんでもないところに来たんじゃねぇのか。



ギギィ・・・・・。



 3つ目の魔物の合図で城門が開き、俺たちは中に招きいれられる。そして、そのまま城の中の一室に通された。そこで待っていたのは一つ目の魔物、サイクロプスだった。スーツみたいな服を着てるが、服の下に人間離れした筋肉がついているのがよくわかる。それに部屋の周りにもたくさんの魔物がいる。どいつもこいつも強そうなやつばっかだぜ。


「さて、ようこそお越しくださいました。わたくしはザイラス・バルクレイ。魔王様不在時にこの場の管理を任されております。」


 ちょっと待て。今魔王って言ったか?やっぱこの場所やべぇじゃねーか!!セシリアを見ると、こいつも驚いた顔して固まってやがる。口も開いてアホ面だぜ。だが、そんな俺たちの反応を意にも介さず、サイクロプスーーーーーザイラスは話を続ける。


「皆様をお呼びしたのは他でもありません。魔王様が出張で不在の為、ペットの世話をしていただきたいのです。とても可愛らしいのですが、なにぶん少し力が強くてですね。それであなた方のような腕に覚えのある方々に依頼をさせていただいたわけです。」


 おかしいと思ったぜ。いくらなんでもチェイサーズに追われるような俺たちにまともな仕事なんてあるわけねぇ。てゆーか、魔王のペットってなんだよ。ドラゴンとかか?


 ザイラスが手を鳴らすと、隣のドアが開いて2匹の屈強な魔物が出てきた。どちらもラスボス間際で出てきそうな強そうなやつ。魔王城なんで当たり前といえばあたりまえだが、こいつらの世話すんの!?俺は不安になってセシリアの方を見たが、こいつまだアホ面で固まってやがる。


「ご安心ください。皆様にお願いしたいのは、こちらのリリィちゃんです」


 俺の不安な顔を察したのか、ザイラスが声をかけると2匹の魔物の間から小さなチワワみたいな犬が出てきた。ん?こんな犬が魔王城にいるのか?こんなんの世話で借金が帳消しになるならいい話だぜ。


「ザイラスさんよ。俺たちがこの犬っころの世話をするだけで本当にいいのか?ほかにこの城で雑用しろとか、魔物どものストレス解消にサンドバッグになれとか言わねぇだろうな。あ、この女だけなら構わねぇぜ。料金も安くしとく」


 セシリアに指をさしながらザイラスに話しかける。


「ハハハッ。まさかそんな事は致しませんよ。皆様のお仕事はこちらのリリィちゃんの世話のみです。それに客室に泊まっていただいて結構ですので。それよりも、犬っころなどとは言わない方がいいですよ。」


 あれ?目の錯覚かな。なんかさっきの犬っころが大きくなってる気がする。さっきまでチワワくらいだったよな。いや、目の錯覚じゃねぇ。ゾウくらい大きくなってるぞ。それになんか牙剥いてこっち見てる。え、これもしかしてやばい?


ゴォォォォー!!!!


「うわっち!!アッツゥ!!!!!」


 急にリリィちゃんの口から火が出てきた。いや、火なんてレベルじゃねぇ。汚物は消毒されるんじゃねぇかと思ったぜ!!俺が必死にもがいていると、犬は満足したのかもとのサイズにもどった。


「かわいいねぇ」


フィオが犬に近づいていく。くそっ、お前も燃やされろってんだ。俺の考えとは裏腹に、フィオをバカ犬はなかよくじゃれあっている。一通り楽しんだあと、フィオが俺の方を指さし、


「アハハハッ!面白い髪形ー!!」


 急に大声で笑いだした。ん?髪形?焦って頭を触ってみたら、確かに髪がおかしい。これってもしかして。


「アフロだぁ!!」


「アフロですな。」


 やっぱりぃ!!チリチリになってなんかやべぇと思ったんだよ。


「おい、クソ犬!!どうしてくれるんだよ!!」


 怒りを犬に向ける、というかこいつのせいなんだから当然だろう。だが、犬はまた大きくなり、牙を剥く。


「あ、やべぇ。えっと・・・。」


 俺はまだ固まっているセシリアの後ろにとっさに隠れる。


ビュオォォーーー!!!


 クソ犬の口から氷のブレスが出てくる。こいつ火だけじゃねぇのかよ!!


カチコチ・・・・・。


 セシリアがアホ面のまま氷漬けになってしまった。まぁいいか。

セシリアです。久しぶりです。本当に久しぶりなのに、今回の私への扱い不遇すぎないですか?どれもこれもおの男のせい。覚悟しなさい。氷漬けから治ったらギャフンと言わせてあげるんだからね!

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