ロクデナシ、感動の再開を果たす
どうも、ロクデナシです。
名前の通りの人生を歩んでます。いや、歩まされてます。両手は勝手に聖剣になるし、仲間は勝手に暴れるし、苦労ばっかり。特に今回は、ちょっと酒場で情報集めようとしただけなのに、えらいことになった。
まず、うちのバーサーカーが間違って酒飲んで暴走。止める役のセシリアもついでに酔っぱらって一緒に暴走。俺はひとりで頭抱えてたら、突然知らないおっさんが怒鳴ってきて……なんとそいつが実の父親。
……なんだよ、それ。
しかも、「育てるの面倒だったから適当に人に渡した」とかぬかしやがって。笑えねぇ話を笑顔でしてくんじゃねぇよ。
でも、どうやらこの両手の聖剣は、こいつ譲りだったらしい。納得したくねぇけど、納得しちまったよ。ほんと、人生ってのは、予想の斜め下を平気で突き進むもんだな。
というわけで今回も、どうか鼻で笑いながら読んでくれ。俺も読者も、巻き込まれ体質ってことで。
朝、目覚めたときの所持金は、銅貨3枚と干からびたパンのかけらだけだった。
「よし、仕事の時間だな」
俺は街の広場で人波を観察し、見事な手つきで懐から財布をひとつ、またひとつと回収していく。
「またやってる……」
セシリアは呆れ顔で腕を組んでいたが、特に止める様子もない。最近じゃ完全に“そういうもの”として受け入れているフシがある。
フィオはというと、屋台で「おかわりぃー!」と串焼きを両手にわたしながら、もう四回目の食事をキメていた。なにがバーサーカーだ、ただの胃袋モンスターだろ。
そうして財布を7つ回収し、金貨がちらほらと確認できたところで、俺たちは次なる目的地――情報収集のため、町の一番にぎわっている酒場へと向かった。
情報収集、それは冒険者にとって極めて重要な任務である。
「……だったら、酒場が一番だろ?」
そう思って入ったのが運の尽きだった。
「わぁ〜!これジュースかと思ったーっ!」
開口一番、フィオがジョッキを煽る。
そして即、顔が真っ赤になり——
「おい、それ酒だっつってんだろがッ!」
俺の声はすでに届いていない。
フィオは酒の力を得て、椅子に乗り、机を蹴って宙返りしはじめた。
「いぇーい!人間って飛べるんだねーっ!!」
「飛んでねえよ!跳ねてんだよ!」
止めようとするも、次の瞬間、セシリアがフィオの隣で肩を組んでいた。
「ロクー、ここの葡萄ジュース、ちょっと度数高いかも〜」
「お前もかよ!!!」
セシリアも頬を赤らめ、ハイテンション。
二人はいつの間にか歌いながら店の壁をよじ登り始めていた。
(どうして…俺の仲間はこうなんだ……)
俺は額を押さえ、頭を抱えた。というか、俺がロクデナシだろう。なんであいつらの方がロクデナシやってんだよ。俺の役目を奪うんじゃねぇ!!
仕方ねぇ、俺も飲んでやるぜ!!そう思ったが店内は完全にカオス。客が逃げ出し、店主が泣きそうな顔で皿を抱えて震えている。おいおい、俺は酒も頼めねぇのかよ!!
そんな中——
「うるせえんだよこのガキどもがぁあああ!!!」
遠くの席から怒鳴り声が響いた。
ひとりの男が立ち上がり、フラフラとこちらへ向かってくる。
ボロボロのマント、酒で染まった前掛け、赤ら顔に目は虚ろ。
が、その歩き方、空気感、どこか……俺に似ている。
「てめえらァ、こんなガキが、酒場で何やってやがんだ!子供は!もっとこう!……なんだ、なんかするもんだろ!」
「……おっさん、酔ってるなら黙っててくれよ。こっちは今、制御不能のバーサーカーと女騎士が暴走しててだな……」
「うるせえッ!酒ってのはなァ!心の潤滑油なんだよォ!」
「潤滑油で脳まで溶けてんぞ!!」
しばらく続く支離滅裂な口論。
だが、ふと男の視線が俺の両手へ向く。
「……あ?」
男の目が見開かれる。震える指で俺の手を指差し、ガタガタと震えながら呟く。
「お前のその手……まさか……両手が聖剣……」
「……だったらなんだよ。金でもくれんのか?」
「俺も……昔……そうだったんだよォ……!!」
「なん、だと……?」
男はそのまま、崩れ落ちるように椅子に座り、口を開いた。
「昔なァ……俺にもいたんだ……生まれたばかりの赤ん坊がなァ……でもほら、両手が剣になっちまって……めんどくさそうだったからよォ……酔っ払いに金渡して……押し付けちまったんだよォ……」
「……それ……」
「そう、お前だよ。俺の、息子だよォおおお!!……たぶん?」
「……たぶんって」
「なになにー??え、ロクのお父さんなの?やだぁそっくり……ムググッ」
「ややこしいからお前はだまってろ!!」
セシリアが笑いながら会話に入ってきたが、うっとうしいので手で、もとい聖剣で口を塞いだ。
店内は少し静かになっていた。フィオが酒樽を背負いながら踊っているのを除けば。
俺はゆっくりと拳を握った。いや、剣だから握れないんだけど心理的にと思ってくれ。
「おい、あんた……なんで、そんなことを……」
男は鼻をほじりながら言った。
「いや〜めんどくさかったし。乳も出ねぇしな俺。ははっ!」
なにってんだこいつ。乳なんてもともと父から出ねぇよ。
「まあそれはいいや。あんた両手が剣だったんだよな?……どうやって元に戻した?」
「あー……なんだっけな……酒飲んで寝てたら……なんか戻ってたわ」
「なあ、今ここで殴ってもいいか?」
俺は殺意が生まれて、聖剣の手に力を込めて振り上げた。が、剣が震えながら小さく囁いた。
《…コロス…ナ…コロス…ナ…(※良心が働いている)》
俺は深いため息を吐いて手をおろす。
「マジで最低の親父だな……。というか、実の父親と育ての父親がどっちもクズってなんだよこれ」
その頃、店の天井を破って飛び出したフィオが「星になれーっ!!」と叫びながらどこかへ跳んでいった。
俺は酒場の片隅でうずくまりながら、そっと呟いた。
「俺、この旅終わったら……絶対家族とか作らねえ……」
よぉ〜読者諸君ッ!
お楽しみいただけたかな? この俺様こと、元・聖剣両手男、現・そこらの飲んだくれ親父が語らせてもらうぜェ!
いや〜しかし驚いたね!
なんか似てんな〜と思ったら、まさか昔押し付けた赤ん坊が、立派に育って(?)こんな感じで現れるとは。感動だね!……たぶん。
育てるのはめんどくさかったけど、こうして再会できたんだし、結果オーライってやつじゃね?
手が剣だったのもな〜、なんか痛かった記憶あるけど、酔っ払ってたら治ってたし。人生って案外なんとかなるもんだよな!
あと息子にボコられそうになったけど、あれも愛情表現だよな?な?
……ん? 読者の顔が引いてる?
ま、細かいことは気にすんな!
またいつか出るかもしれんから、その時は「うわ、またコイツかよ」って笑ってやってくれ!
じゃーなー!
次はどこの酒場で会えるかな〜♪




