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アーノ姫到着

現在南進中の姫一行。

再びの徒歩。

一日中馬車と歩きで足が疲れて仕方がない。

歩き過ぎてほとんど感覚がなくなってきている。


「ほら急ぐよ」

「待って! せめて水だけでも」

足が疲れ動けず喉も乾いた。当然お腹も空いている。

先ほど見つけた泉で水を補給するも叶わなかった。

泉は汚染されていて飲料には適さない。

多少ならまだしもあそこまで紫がかっているととても飲めたものではありません。

そう言えばこの辺りに閉鎖された鉱山があるとか。

まさかその影響があるのでしょうか?


「ねえそろそろ休憩にしましょうか? 」

魔女に文句もないし我がままを言うつもりもない。

でもちょっとぐらいなら構わないでしょう? もう充分歩いた。

どの世界に姫にこのような仕打ちをする者がありますか?

いくら暇つぶしとは言えこれならば隠れ家でゆっくり読書をしていた方がマシ。

今回に限っては魔女から強引に誘われたんですから。

それまでは勝手について行ったので不満もありませんでしたが。

ああもう! 暑いしきついし眠い。


「ホラ見えてきましたよ。あの村です」

後どれだけあるか分からない遥か遠くの小さな村。

「今日はこれくらいで。この辺で宿を探すとしましょう」

まだロイデン村には入らずに様子を窺うとのこと。随分慎重ですね。

伝説の不老不死の実探しは慎重さがものを言うのだとか。

やった! これで明日から不老不死の実探しが本格的に開始される。


「それでどこにあるの? 」

不老不死の実を探す旅。

宿の確保が旅行者の最優先事項。

もしなければ人の家。即ち善意の方のお世話になることに。

最悪野宿も考えられる展開。

実際これからどうなるかまったく予想がつかない。


人々と触れ合いつつ宿をゲット。

これが本来の旅行の醍醐味。それが失われるともはや旅とは言えません。

こうしてどうにか目的地周辺までたどり着いた。


突然一匹の野うさぎが元気よく駆け回る。そこへハンターが。

もう何を考えてるのでしょう?

「あれお前たちこんなところで何してるだ? 」

ハンターは自分の世界に入り込んでいてこちらの存在に気づきもしない。

「実は…… 」

魔女が対応。まさか正直に告白するつもりはありませんよね?


伝説の実を求めてやって来た。

それは魔女が新たな薬を開発するために必要なもの。

どれがいいとかははっきり分からない。

ボクは素人なのだから。だから今回も魔女の後について様子を見るのみ。

いたずらもしなければ悪ふざけもない。

後をつけて好きなようにやっていた今までとは勝手が違う。

魔女だってボクを放っておかない。



その頃魔王様の住処。

「どうだ? 国王は怒っていたか? 」

「どうやら話に乗るようです。もう訳が分かりません」

挑発に乗り愚かにも再び襲撃するつもりらしい。

想像以上に上手く行きつい笑みが零れるがそれを不気味だと恐れる者まで。

うむ。これでいい。すべて予定通りだ。さあ次の段階に進むとしよう。


「おい今すぐ手の空いてる者を集めろ! いいか大至急だ! 」

動き出した魔王軍。狙いは憎たらしい人間どものいる宮殿?

「いいかお前たち。集まってもらったのは他でもない。

伝説の実があると言われるロイデン村だ。

ロイデンマウンテンの山奥にあるロイデン村を目指す。

明朝に出発だ。それまでに情報を集めてくれ」


伝説の不老不死の実を隠れ蓑にロイデン村の例の村人を探す。

女神様の話では男だと言うだけで誰かはまったく。

もう消滅も近い。そろそろ動き出さないと命取りになる。

勇者・姫・魔王様の中では一番動きやすく手下を使えばその日にでも。

問題は本人の自覚がない場合だ。それだと単なる村人で区別がつかないことも。


「しかし魔王様。今は人間どもの世話で手一杯でして…… 」

乗り気ではない忠実なしもべたち。

国王軍を迎え撃ちせん滅させることに頭が一杯。

「それは後回しだ。今はロイデン村だ。いいか? これは姫の希望だ。

伝説の実で永遠の若さと美貌を手に入れたいと我がままを言ってな。

ははは! かわいいだろ? だからすぐに向かう! いいな? 」

アーノ姫のせいにするのはどうかと思うが他に言い訳が思いつかないからな。

実際アーノ姫もそれを望んでいる。


「魔王様ともあろう方がそのような情けないことを…… 」

世話役の男は小言を。魔王様を思ってこそだと引かない。

「ボグ―! 」

「うわ…… まずいですよ。魔王様がお怒りに」

慌てる手下たち。


「恐れながら魔王様! 式は近くの会場で予約を明後日に」

勝手に決める。なぜ相談もなしに? 決まったらせめて報告ぐらいしろよな。

「会場は気に入らなかったのでグチャグチャにしておいた。

これで一か月は使えものにならんだろう。ははは! 」

完全な嘘だが誰も魔王様には逆らえない。機嫌が悪い時は特に。


「滅茶苦茶な…… 」

「うーん? 文句あるのか? まさか魔王様に文句でもあると言うのか? 」

そう迫ると世話係はただ首を振るばかり。

「しかし国王軍を放っておく訳にも」

「放っておけ。奴らだってまだ攻めて来ないさ。ここは姫の希望を叶えたい」

「しかし魔王様不在の間に何かあれば…… 」

心配する気持ちもよく分かる。だがここは伝説の実を優先しよう。

「クマルにすべてを任せてしまえ。それで構わない」

危険な賭けに出る。もし国王軍が攻めて来ればクマルだけでは突破されるだろう。

だがそこに魔王様がいなければ全滅も免れる。

「そんな…… クマルには荷が重すぎます。それに最近彼は疲れてる模様」

明らかな嘘を吐く。さすがにクマルは信用できないか?


「でしたらクマルを連れて行くのはどうでしょう? 」

「それはダメだ。奴が居ては足手まといだ」

「そんな魔王様。あまりにも無茶苦茶で…… 」

「ボグ―! 」

「魔王様…… 」


こうして留守番をクマルに任せて翌日早朝に出発。

魔王一行は伝説の実を求めて南進。


                続く

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