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リンゴはちょっと……

現在魔女と徒歩で南進中。

不老不死の実を求めて彷徨い歩くも体力の限界。

喉も乾きました。足だって立ってるのがやっと。

どこかその辺りのオアシスで休みたい。あればですが。

ですが魔女は決して歩みを止めない。

ああ本当に分かってるのですか? ボクは姫なんですよ?


「大魔女様。どうぞお願いします! 」

ここは煽てよう。そうすれば単純な魔女のことだからきっと……

「もう分かった。馬車を捕まえればいいんだろ? 」

馬車を呼ぶぐらいの能力はあるといい加減なことばかり。


魔女がステッキを投げるとモクモクと煙が上がってきた。

「ああまずい。火事! 急いで消さないと! 」

「はいはい。おふざけはそれくらいで」

魔女の白い目。まるでボクが分かっていてわざと騒いでると。

失礼な。ボクはいつだって真剣。確かに疲れてるし飽きてはいますが。

それだからって真面目にやってないことにはならない。


こうして煙が徐々に広がって行きついには煙に覆われる。

でもその不思議な現象も五分もしないで収束。

ちょっと煙臭いのを我慢すればこれくらいどうと言うことは……

ダメ! ドレスに臭いが移ってしまう。

これだって高級ドレスですから。冗談ではありません。

ずっと魔女の後を追いかけ国々を巡ったからシミに傷に泥にと大変なことに。

洗濯係のクマルがいないんですよ? 

もういい加減そろそろ新しいお召しものに着替えたい。


ゴホゴホ……

ゲッホゴッホ!

煙が消え臭いが収まると前方から馬車が。

どうやら魔女の言ったことは本当だったらしい。全然信用してませんでしたが。

「では行くよ」

「はい。馬車があればもう大丈夫」

これって奇跡? それとも最近流行りの黒魔術?


馬車に揺られて南進。

うーん快適快適。

歩きだったものだから馬車のありがたさが身に染みる。

やっぱり姫様には馬車が似合います。徒歩の旅は最初だけで充分。

無理も無茶もよくない。命取りになりかねません。

魔女だってお年ですからね。本当に気をつけなくてはいけません。


「それでどうやったの? 」

今まではどうにか堪えようと下を向いて歯を食いしばって歩いてました。

だから笑顔もなく笑いもなくただ黙々と。

でも今はリラックス状態で話も弾むし笑い声も。明るさを取り戻した。

「さすがに秘密さ。ただ言えるのはこれのおかげかね」

そう言ってリンゴを取り出す。

これが? 何らかの儀式に取り入れられこのような奇跡が起きた?

まさかこれは毒リンゴ? あるいは単にアップル。いえアプル。アプリ……

馬車ゴー?

うーん何だかよく分からない。


「まあ姫にはまだ早いかね。その頭では理解するのは難しいだろうさ」

「失礼な。これでも眉目秀麗と持て囃されてるんですからね」

あまりにも失礼なので大げさに言ってみる。

ただ姫ですから当然英才教育を受けてるし見た目もそれは比較にならないほど。

だから満更大げさでもない。

「はいはい。知ってるよ」

いい加減な返事。全然信用してないな?

「もう! それで何で馬車を呼び寄せられる訳? 」

「もうしつこい! それはハイカラだからさ」

「ハイカラ? 何ですかそれ? 」

「ハイカラはハイカラさ」

ごまかしたな? これ以上は秘密らしい。


ゆっくり馬車で寛ぐ。

「さあお食事にしようか。ひひひ…… 」

そう言って例のリンゴを渡す。いや絶対これは毒リンゴ。

決して食べてはならないと小人だって。魔法の鏡だって。

「遠慮します。まだお腹いっぱいなの」

どうにか断る。

危ない危ない。自然な感じで毒リンゴを食べさせられるところだった。

「そうかい? では失礼して」

大きな口を開けて豪快にリンゴにかじりつく。

ああやっぱり食べればよかった。

ですがボクは姫様だから。誘惑には負けない。

ここは安全策で行くしかありません。食べないが正しいはず。

目的地までももうすぐ。

それまでは我慢。お腹が鳴っても我慢です。



その頃魔王の住処では。

「ボグ―! 」

クマルを再度アーノ姫の世話係に。

これでピンチの時はクマルが何とかするだろう。


「どうされました魔王様? 」

「書状を国王に」

たまにやってること。ほとんどは余裕こいての悪ふざけと相手の動きを探るため。

「分かりました。早急に手配します」

「うむ。急ぐのだぞ。これも姫との婚姻のためだ」

「はは! それとカンペ―キがおかしなことを…… 」

「うん。申してみよ」

「報告の通り人間を捕まえ判断を仰いでいたところ…… 」

「おお。無益な争いはしたくない。すぐに帰すように命令したが」

「それはいいんです。それは。

ただその命令がカンペ―キに届く前に魔王様の命令だと逃がしてしまったんです」

「それはとんでもない失態だな。だが結果は同じ。細かいことはどうでもよい」

「ですがどうやら魔王様を騙ったとかでこれは一大事。見逃す訳にも参りません」

引かない。もうどうでもいいことなのに。

それは魔王様自身が一番よく分かってること。だから今更蒸し返されても困る。


「よろしい。ではカンペ―キを…… いやいい。

奴には新たな隠れ家を探してもらってる最中。

その辺のことはお前に任せる。調べてこい! 」

「魔王様。どうやって? 」

「魔王様に聞くのか? 少しは自分の頭で考えろ。ボグ―! 」

怒りのボグ―でけん制する。

「はは! お任せください」

「それから急いで書状を! 」

念を押す。これでいい。これで後は隊長に任せておけばいい。


                続く 

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