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クマルの嘘

引き続き宮殿。勇者・ノアのターン。

国王の要望に応え隊長に復帰。


「お前まだ生きていたのか? こんな時にノコノコ帰って来やがって! 」

イライラ気味の元隊長で隊長代理の男が吠える。

自分の能力のなさを棚に上げて文句ばかり。

そんな情けない奴の意見など聞きはしない。無視だ。無視。

だが隊長失格の烙印を押され余裕のない男は敵意を剥き出しに。

それでも相手にしない。無視を続ける。いちいち構っていられない。


今度の敗戦はひとえに国王の暴走と元隊長の統率力のなさによるもの。

作戦も戦略もなしにいきなり戦を挑んだのだから同情する部分は確かにある。

だが思い留まるように進言するのもまた隊長の役割。


「もうよい! 過ぎたことは気にするな。それよりも隊長は交代だ」

こうして正式に隊長に再度任命される。

代理だった男は格下げで庭掃除に回された。

復活は彼の能力次第。

あーあたぶん相当恨まれてるんだろうな。

奴が下手打ったのに人のせいにするから。まあいい。文句があればいつでも。

もう会うこともないだろうけど。


ボクは隊長になりたいとは一度たりとも。でもこちらには情報が入るからな。

一人三役の恩恵は多少与っても罰は当たらないさ。

ボクは奴とは違う。

とは言えボクも決して国王の希望に沿った行動は取って来なかった。

姫奪還も魔王襲撃も却下してひたすら待つことを選んだ訳だからな。


隊長復帰パーティー。

「来たわね旦那様。さあお食事にしましょう」

勝手について来た幼馴染はここでも好き勝手する。

もうボクの婚約者と言い触らすものだからやり辛いと言ったらない。

「お前は帰れと言ったろ? ここは危険だと。村に帰るんだ! 」

説得するが決して首を縦に振らない。困った幼馴染。

「ほらアーンして」

こうして緩んだ生活を送ることに。あーあどうしてこうなるんだろう?


「いいな。俺にもその幸せを分けてくれよ」

同部屋の仲間からからかわれる始末。

「隊長だぞ! ここでは隊長として敬うんだ! 」

しつこく絡む者には容赦はしない。


ボクはブシュ―と結婚するのではなくアーノ姫と結ばれるはず。

ただそう簡単にはいかないだろうな。二人が結ばれるにはブシュ―の存在が。

「さあ食っちまおうぜ。その後作戦会議だからさ」

「勝手に決めるな! 決定権は隊長のボクにある! 」

こうして嫌われない程度に隊員を教育する。ここまですれば再教育だろうか?


「ははは! このノア様が復帰したからにはもうお前たちを失望させない。

いいか。最終決戦はもう間もなくだ。お前たちも覚悟を決めるんだ」

「うおおお! 」

どうやらいつの間にかカリスマ的なリーダーにまで上り詰めてしまったようだ。

そんな自覚まったくないんだが前隊長の失策のお陰で押し上げられた。


皆からの期待は大きい。今度の作戦は絶対に失敗できない。

ただ奴らは単純で頭がいい訳ではない。情けないことに指示がないと動けない。

ボクだって元々そうだったが経験を積んで立派な隊長になった。

後は魔王討伐隊だけでなく宮殿警備隊も巻き込んで行けたらな。

隊長復帰パーティーは夜遅くまで行われた。



その頃魔王の住処では。

「魔王様お呼びでしょうか? 」

ついにクマルが戻る。

「おいクマル! お前勝手にコレクションルームへ入ったな?

その上貴重な品を持ちだしてその代わりにごみを置いて行ったな?

調べはついてるんだ。大人しく白状しろ! 」

帰って来て早々に取り調べる。

少し可哀想な気もするが相手はクマルだしボクは魔王様だから厳しく接する。

当然追及を緩めるつもりはない。


「どうだクマル? 正直には吐くんだ! 」

怒りの魔王様を演じるのは一苦労。

本当はこんなことどうでもいいんだが舐められても嫌だからな。

「何をおっしゃいますか魔王様。このクマルがそのような大それたこと…… 」

「ほう。それではあくまでしてないとそう言い張るんだな? 」

「当然です! 魔王様に誓ってそのようなことは致しません」

魔王様の前で堂々と嘘を吐くクマル。いい度胸だ。

最近甘やかしてばかりいたから調子に乗ってるんだろうな。


「しかし目撃者がいるぞ」

「恐れながら魔王様。それはただの見間違い。または勘違いではないでしょうか?

それ以上の話がないのでしたら戻らせてもらいます」

潔白を主張しつつ急いで逃亡しようとする。


「お前が自慢して言い触らしてるのを聞いた者がいるが」

モンスターは仲間意識がさほど高くない。だから平気で裏切るし争いも絶えない。

ただ魔王様のもとでは誰も恐怖で動けない。

だから魔王様の前では皆借りて来た猫のように従順で大人しい。

それはクマルも同じようだがないのに知恵を働かせるから苦労する。

もう完全にバレてるのに。それでも誤魔化そうと必死。


「そのあの…… 」

「認めるな? 」

「はい魔王様。実は人助けでして…… 」

同情を買うようなことを言って逃げる。だがさすがに人助けはない。

モンスターが人助けをしてはお終いだ。


「もういい。認めて反省しろ! そうすれば今回のことは大目に見てやる」

こうすればクマルは間抜けだからすぐにでも。

「へへい! 仰せの通りに! お許しください魔王様! 」

土下座を始めるがこういう格好だけの奴は信用できない。


「では罰としてカンペ―キの下について貰う。それでいいな? 」

クマルにとってとても受け入れがたい罰を与える。

「そんな魔王様…… それだけはご勘弁ください! 」

「では罰としてアーノ姫の荷物係でいいな? 」

人助けは事実だから軽くしてやることに。

「ええそれはもっと最悪! 」

「何でよ! 」

「ええっ? 魔王様? 」

混乱するクマルだった。


前置きはさておき本番はここから。


                 続く 

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