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クマルとカンペ―キ

魔王軍の隠れ家。

暗くてひんやりそれでいてじめじめして嫌な感じ。

暑苦しい魔王様にとってはいいのだがどうもな……

ここはどこだろう? さすがに聞く訳にも行かないよな。

魔王様がそんなに情けなくてどうする?

もっと堂々としていなければ疑われる。

なぜかここには妖精もいないしな。


「それでいかがでした? 味と言うか匂いと言うか」

根掘り葉掘り聞く。満足したと言うだけでは弱いらしい。

「頬が痛むわ。まったく扱いに困るぜ。ガガガ! 」

もうどう表現していいのか手探り手探り。

俺は魔王様になったことないもんな。それは勇者だってお姫様だって。

だが魔王様は特別だ。そもそもスケールが違うからな。


「お戯れが過ぎます! 」

「ははは! 思いっきり楽しむべきだろうが。それで用件は? 」

睨んで見せる。それでも引き下がらないなら雄たけびでも上げるかな。

とにかく舐められてはいけない。いくら忠実なしもべでもいつ裏切ることか。

ここは人間世界とは根本的に違う。完全実力主義。

隙を見せれば魔王様でさえも追いやられる。


「そうでした魔王様。カンペ―キとクマルが参っております」

醜く恐ろしい化け物二組。まさか食う気か? この爺さんもよく見れば怖いが。

「どうぞご命令ください魔王様! 」

牙が鋭く見た目は醜悪で常に涎を垂らしてる勇猛果敢なカンペ―キ。

それに対して常に畏まって目が泳いでる情けないタイプのクマル。

それでも怖いのは変わらない。ただの比較に過ぎない。

どちらが優秀かと言えばもちろん……


「よかろう。話してみよ」

「どうぞ次の指揮官をこの自分に! 絶対に成功させてみます」

「ううん? 何を成功させるって? しっかり話さんか! 」

何一つ理解どころか聞いてないのでもう一度教えてもらいたいだけなんだけどな。

魔王様でいるとどうも荒っぽい。自分ってこんなに性格悪いの?

いつもは部下には優しくしてるつもりなんだけどな。

どんどん性格が悪くなっている気がする。


「では改めて。魔王様の命でアーノ姫をさらうこととなりました。

そこで自分は独自の分析で効率的な強襲作戦を思いつき話していたところです。

今度の指揮をぜひこのカンペ―キに! 」

そう言って跪く。忠誠を誓っている。

うん。名もそうだがこいつはキレるしできる。優秀な手下。

だが少し優秀過ぎないか? この魔王様を脅かす存在となりかねない。

そうなる前に理由をつけて排除すべきだろうな。今はまだその時ではないが。


「うーむ。それでお前は? 」

一応は平等に扱うかな。どうせこいつは無理そうだが。

「魔王様におかれましてはご機嫌苦しい…… 」

慣れない言葉遣いでさらに動揺する情けないクマル。

苦しいではなく麗しいだろうが。

これでは情けない魔王様になってしまうではないか。

「何でもよいがしっかりゆっくり話せ! 」

おっと魔王様に相応しくない優しさを見せてしまった。これは改めなくては。

「へへい! ありがたき幸せ! 俺っちはそのあの…… 」

ダメだ。もうぶち殺したい。だがいくらなんでもね……

魔王様でもそんなことしてたら手下がいなくなっちまう。

我慢だ我慢。冷静に冷静に。

優しくても厳し過ぎてもいけない。意外にも難しい魔王様の采配。


「早く頼む! 」

そう言って笑って見せるが不気味がられて後ずさりされてしまう。

このまま行けばおしっこちびるぞ。うん本当に情けなくて使えなさそう。

おっといくらなんでも酷いか。

「俺っちの情報では姫はこれから親戚の家に向かうそうです。

その辺の村人を脅して聞いた話ですから間違いないですぜ。

ですから俺っちに指揮をとらせてくだせい。一気に襲撃するつもりです」

どうやら大した作戦はないらしい。その村人が嘘を教えてなければ…… 

ああ記憶にあった。そう言えばお食事にお呼ばれしていたな。

くそどこの村人だよ。まったくこんな情けないのに脅されてよう。


「おい前ら。姫を丁重に扱えよ。傷をつけでもしたら魔王様の逆鱗に触れるぞ」

右腕の爺さんが脅す。俺ってそんな極悪非道な奴なの? 魔王様だけに? 

「では魔王様。お選びください」

「うむ。そうだなお前たちの戦力は互角と見た。

だがクマルお前は今日襲撃すると言ったな? 性急過ぎないか? 」

「いえ俺っちに掛かればこんなこと造作もない。見ていてください」

やる気に満ち溢れるクマル。

「分かった。では奴を優先させる。姫には早くお目にかかりたいものだ」

「ははあ! ありがたき幸せ! 」


「どうやら魔王様にはお考えがあるのでしょう。今回は自分は身を引きます」

それはそうだよね。どう考えてもこちらの方が優秀だし成功するだろう。

「済まんなカンペ―キ。次は必ず」

次があるならだが。とは言えうまく行った。

「魔王様の仰せの通りに! 」

一歩引くところも優秀だ。


しかし危なかったな。カンペ―キに任せたら成功しちゃうだろ?

姫と魔王様を会わせる訳にはいかない。何が起こるか分からないからな。

しかし俺の期待に応えてくれるかなクマルの奴。

絶対に失敗すると信じ選んだが逆に成功したりして?  

まずあり得ないがそうなったらとんでもなく面倒なことになるぞ。


こうしてクマルを指揮官にアーノ姫強襲作戦を開始する。


              続く

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