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囚われのノア 魔王様の判断

魔王様の隠れ家。

「魔王様! 魔王様! 」

動きがあれば知らせるようにと宮殿を張らせていた。

しかし…… まさか隊長不在で襲撃してくるとはな。

これは相当焦ってる証拠。うーん。悪くない兆候だが今戦うのはまずくないか?


魔王軍としてどう対処すべきか悩んでると今度はカンペ―キからの報告が入る。

「何だ? 今は忙しい。後にせい。ははは! 」

つい調子に乗って後回しにしようとする。

「しかし魔王様の判断を仰がれてるようですが」

「放っておけ! 今はそれどころではない」


国王軍対魔王軍のシミュレーション中で頭が一杯。

仮に両軍が争ったとして現在魔女に匿われてるアーノ姫も旅行中のノアもいない。

これなら遠慮なく戦えると言うもの。

ただ全滅させる訳にも行かないから悩む。


「魔王様? 魔王様? 」

「うるさい! こっちは忙しいと言ってるだろう? 」

そういくら言っても聞きはせずにしつこく何度も。

「魔王様! どうか魔王様! 」

「分かった。それでどのような用件だ? 」

カンペ―キなら任せておいても心配ない。最善手を打つだろう。

これがクマルだとそうは行かない。


「恐れながら申し上げます! カンペ―キ様より報告です。

洞窟内で人間を捕らえたとのこと。

魔王様は日頃から人間をいたずらに刺激するなとのことですので判断をと」

「まさか返答がなければそのまま処分したと? 」

「恐らく。カンペ―キ様なら当然のことかと」

「よしカンペ―キに伝えよ。その者たちを丁重にお返ししろとな。

下手に怒らせてはいらぬ争いを生むことになる」

魔王様らしくないと思われるだろうな。でもこれも仕方ないこと。

「畏まりました! ではそのように」


危ない危ない。囚われたのはどう考えてもボクたちじゃないか。

まさかこの手で自分を? そんなのあり得ない。

「よしひと眠りする。何かあれば知らせてくれ」

こうして魔王様は日課のお昼寝タイムへ。



その頃ダンジョン内では。

「ほら早く歩け! 遅れるな! 」

「ちょっと触らないで! 私たちの幸せに嫉妬して」

モンスター相手では無理がある気もするがブシュ―は退かない。

ボクなんかよりもよっぽど肝が据わっていて勇者の適性がある。


「ゴチャゴチャうるさい! 静かにしないと食っちまうぞ! 」

脅しを掛けるモンスター。見ただけで震えが止まらないほどの凶悪な人相。

そうなっては黙るしかない。ボクたちはとても弱い立場。

「ちょっと! どこに連れて行く気…… 」

何かを悟り血の気が引いた彼女は恐怖のあまり黙ってしまった。

ようやくボクと同じレベルまで到達したブシュ―。


ほら見てよ? 手は痺れて足だって震えて…… ない?

あれ…… おかしいな。なぜこんなことが?

そうかもう見慣れたからだ。何一つ怖くない。

脅されようが喚こうがどうでもよくなった。


「カンペ―キ様の指示があるまで大人しく待ってるんだな」

縛られてまではいないが肩を掴まれては身動きが取れない。

すぐにでも処分しようとしている。

どうする気だ? ボクを食ってもうまくないぞ。

「ほらなぜこんなところにいたのか教えろ」

さっきからそればかり。刺客と勘違いされている? 」

この格好と衣装に伝説の剣・プラチナソードがあれば疑われるのも当然か。


「くくく…… 洞窟で作られた天然の牢屋に閉じ込めてもいいんだぞ? 」

そこは話によると溜まった雨水によって半分ぐらい水没してるそう。

そこに今から閉じ込めようとしてる。

あーあブシュ―が大騒ぎしなければ捕まることはなかったのにな。


ではここは一つ取引を。

「おい俺たちを今すぐ解放しろ! さもないと痛い目に遭うぞ! 」

モンスターに脅しをかける。だがもちろん笑って相手にしない。

「おいおい本気で言ってるのか? お前は人間で俺たちはモンスター。

魔王様の忠実なしもべである。あまり怒らせない方がいい」

モンスターも暴力でなく言葉を極力使う。

人間との関係を悪化させたくない。それが魔王様の懸念事項。

ボクが情けなく見えるのか面倒だからなのかどうも扱いが雑なんだよな。


「ボクは魔王様の生まれ変わりだ。だから大人しく言うことを聞くんだな」

だが少し動揺する程度で本気にはしない。

これが現実。魔王様の生まれ変わりの件はスルーされる。

戯言だと思われてるらしい。だがほぼ真実だから恐ろしいもの。


「後で必ず後悔するぞお前ら! 魔王様はカンカンだ。どんな処分が下るか」

「おい本気かよ? 」

「冗談でこんなこと言えるか! ではカウントを開始するぞ。

ワン・ツー・スリー・フォー・ファイブ…… 」

急かして相手に考える余裕を与えない。これではもう従うしかない。

まさか魔王様に反抗する訳には行かないからな。

魔王様の忠実なしもべであればあるほど効果がある。


「よーしお客様を丁重に扱うかな。ははは…… 」

こうして二人は魔王軍の手に落ちてしまった

まさかここがカンペ―キが探し出した新たな隠れ家だとは夢にも思わなかった。


「大丈夫かブシュ―? 怪我はないか? 」

「平気。それよりも私たちこの後どうなっちゃうの? 」

不安で押し潰れそうな彼女。何だかんだ言ってかわいいところがある。

仕方なく優しく抱き寄せる。

「これでいいいの。これで。私は幸せよ」

落とし穴に落ちただけでも最悪なのにダンジョン探索中運悪くモンスターに捕まる。

それなのに幼馴染は満足そう。


いや今はそれどころじゃない。本気でまずい展開。

もし魔王様が判断を誤ればボクたちに未来はない。

カンペ―キが魔王様の判断を尊重しないで暴走しても終わり。

今は思ってる以上に絶体絶命の大ピンチ。

さあどうするかな? どう誤魔化そうかな。


                  続く

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