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精霊さんと魔王コレクション

アーノ姫のターン。

現在精霊と散策中。


「精霊って普段何をしてるの? 」

クマルが戻って来るまで暇なので散策。

うーん。いい気持ち。空気もおいしいし気温も上がって絶好のハイキング日和。

魔女の監視も受けずに自由に歩き回れる。これほど幸せなことはない。

後は僅かばかりの刺激があれば文句ないんですが。


「ねえ聞いてるの? 」

「はい。人に見つからないように気をつけながら見回りしてます」

「へえ暇なんだ。ボクも暇で暇で退屈。何か面白いことがあればな」

「はあ? こんなに広いのに暇な訳ないでしょう」

呆れる精霊。きちんと山のお世話をしてると主張。

それこそ愛情をたくさん注いでるそう

精霊は誇りを持ってると胸を張る。

ですがこんなこと言っては失礼ですがこんな山に誰が来ると言うのでしょう?


「ほとんど人が来ないんでしょう? 」

来るとすれば温泉目当ての観光客ぐらいなもの。

「それが…… 冬山にあえて挑戦しに来る困った登山客が後を絶ちません」

どうしてこんな危険なところに無理に登ろうとするの?

どの世界にも迷惑な登山家はいるもの。


「でも今は忙しくないんでしょう? 雪もないし」

だからこそ山小屋でゆっくりしていたのだろう。

やることがないと一日中ボウっとするのが日課になる。

それはそれで羨ましいですが一か月は持たずに恐らく一週間で飽きてしまう。

「そんなことはない。高山植物もありますし…… 日課の見回りだって大変。

たまに迷った動物がやって来ることも。

居つかれては困るので風を吹かしたり雷を落としたり」

精霊の日常って地味に見えて計算尽くされていて隙がないよう。

そして何だか嫌な感じ。邪魔者を追い返している。


「ねえそろそろ疲れた。休もうか? 」

「はああ? まだ一時間どころか三十分も経ってないでしょう? 」

「だってボク姫様だから疲れて…… 」

「ええ魔女の使いでは…… 」

精霊が驚く。そう言えばまだ正体を明かしていなかった。

ボクの正体が何を隠そうあの麗しく慈悲深いアーノ姫だとは誰も思わない。

「魔女の使い…… そう魔女界のプリンセスって意味」

「それが魔女使いしてるの? 」

首をかしがる精霊。少々難しかったでしょうか?


「一人前の魔女を目指し現在修行中。あの怖そうな魔女に弟子入りしてるところ」

大体こんな感じだったと思うけど。身分を偽り続けるのは思った以上に大変。

気づかれて噂が広がってはいけませんからね。

自意識過剰だと分かってますがこれも無用なトラブルに巻き込まれないため。


「へえそうなんだ」

疑うことを知らない精霊。

仮に彼女にバレたところで問題はないでしょうが。

それにしてもボクは一体一人何役演じればいいのか?


「おーい! 持ってきてやったぞ! 」

クマル到着。例のものを用意してくれたらしい。

「確か靴だよな。その辺に捨ててあったものでいいだろう? 」

「はあ? いいはずないでしょう! まったくクマルは…… 」

「待て待て。最後までよく聞け! 

そう言うと思って魔王様のところからコレクションを拝借してきた」

緑色で光沢のある贅沢仕様。


「どうだ。サイズはこれでいいだろ? 」

意外にも気配りのできるクマル。でも一つ気になることがある。

「魔王様のコレクションって何? 」

「いや偶然秘密の扉が開いてな。そこにあったから拝借してきたんだ。

まあ細かいことはいいだろう? 」

クマルは堂々と秘密の部屋から持ち出したらしい。

どうしようもないな。大した活躍してないのに。

魔王様を舐めてる証拠。


「後でお叱りを受けるさ。大丈夫。どうせ気づきはしないって。

それに代わりのものを置いてきたから」

こうしてクマルは魔王様からお仕置きを受けることが決定した。


「それから服だが…… 村娘から借りてきた」

「うそ? どうやって? 」

「洗濯してたところで借りた。後で礼して返すと言ったら黙って貸してくれたよ」

そうは言うが絶対クマルが脅し取ったに決まってる。

何てことをするのでしょう? 鬼ですか? 悪魔ですか? ああモンスターか。


「これで俺の役割は済んだろ。後はもうゆっくりしてるから迷惑かけるなよ」

「もうちょっと…… 」

言うだけ言って飛び立つクマル。

クールでせっかちなんだからもう!

まあいいか。それなりに役に立ったから。


「では精霊さんこの服と靴を」

こうしてたまに出没してはただの村娘として認識されるようになった。


「お前さんどこに住んでるんだい? いくつ? 」

「この辺り」

「あるかいそんなところ? まあいいや気をつけるんだぞ」

「はーい」

それから精霊は恐れられることもなく山に住み着いた哀れな娘として可愛がられた。



その頃魔王の住処。

「魔王様大変でございます! 」

またしてもトラブル発生らしい。

「ボグ―! 」

「はい。宮殿での動きが活発化しております。

間もなくこちらに向かって来る模様」

慌てた様子。それくらいで慌ててどうする?

 

「まったく何の用で来ると言うんだ? 」

「恐らく姫奪還作戦かと思われます」

どうやら反撃するつもりらしい。

国王を止める者がいなくなって歯止めが利かなくなりついには暴走。

「大丈夫だ。未遂に終わるはずだ」

「その根拠は魔王様? 」

そう問われたら何となくとしか言えない。まさかこの魔王様に恥をかかせる気か?


「隊長がいない。それではとても隊が機能しない。バラバラになるだろう」

隊長は何と言っても今行方不明中。ダンジョンで迷子中。

それは紛れもない事実。と言うことは苦し紛れに策もなく突っ込んでくるだろう。

しかしこの魔王軍が本気を出せば蹴散らせるのも訳ない。


さあかかって来るがいい! 人間どもよ。

愚かな人間どもにこの魔王様の恐ろしさを存分に味わせてやる!

ありがたく思え! ははは! ははは!


               続く

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