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プランB 祈る女神様

妖精はようやく覚悟を決めたらしい。

「ホラ行くわよ! じっとしてる! 」

そう言われては従うしかない。目を閉じ動かないように。


うん…… 痛み? いや違う。温もりだ。

「ご褒美だからありがたく思いなさいよ」

まさかキスをされるとは思いもしなかった。

嫌かと言われたらそんなことはない。とても光栄なこと。

左頬にされたので今度は右頬に。

当然キスだけでなくセットのパンチまで喰らった。

そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。


ここで一つ気になることが。この妖精がいくつなのか?

妖精は永遠に年を取らないからその辺のことがあやふや。

直接尋ねたところで細かいことはいいとか数えてないと言われるのがオチ。

それでもあの魔女がお姉様と慕ってるところをみると何とも複雑な気分。

まあ見た目はすごくかわいい妖精さんなんだけどね。

とにかく暴力的でうるさい。もう少し大人しくしてくれたらなと思わなくもない。


<これはあなたが賞金稼ぎを捕まえたことに対するお礼です。

これで一つ目は解決と言うことで残るは…… >

「お待ちください! まだ解決してません」

女神様を遮り反論する妖精。

「どう言うことだ? 解決してないってのはどの辺が? 」

「あなたバカでしょう? 自分の体に置き換えて考えてみなさいよ」

生意気を言う妖精。

自分の体って言われてもな。ボクは勇者で姫で魔王様。

そんな特殊な変化は見たことがない。


「いい? 仮に姫が捕まっても他の者は影響ないし助けに行くでしょう? 」

「だから? もっと俺にも分かるように説明してくれよ」

妖精が言うには異世界にはもう一人いると。

そちらに魂が入り込んだ場合を想定してるのだとか。

「あなただって助けに行けたら助けに行くでしょう? 

そこで出会えば異世界が崩壊してしまう」

そうか。もう一人を何とかしなければ完全に脅威を取り除いたとは言えない。


<そうですね。もう一人の方を早急に見つけ出さねばなりませんね。

ですが今回あなたをお呼びしたのにはもう一つありまして…… >

「新発見があったんですね? 」

<はい。あなたの体が見つかったそうです>

「最後の瞬間か…… あまり見たいものじゃないな。

それで俺は無事なのかってそんな訳ないよな。ここにいるんだから」

<あなたは不運にもマンホールから落ちましたね? 

ですがそこで即死したのではなく…… 溺死扱いです>

「はあ死因が何かなど聞きたくありませんよ。これはファンタジーでしょう? 」

今更聞かされて何になると言うのだろう。思い出したくないこともある。


<まあ最後まで聞いてください。あなたは先ほど心肺停止で発見されました。

医師の確認が終われば正式にこちらの住人です>

寝言を言う女神様。もう訳が分からない。

「それは現実の話でしょう? 実際には俺はここに来て異世界に飛んだんだ!

今更前の世界に未練などない。意味がないことだ! 」

どうしても抑えきれない。デリカシーがなさ過ぎる。

これはもっとセンシティブなことだ。

せめて放っておいて欲しい。なぜ蒸し返すような真似をするのか。


「あんた馬鹿? 」

また妖精が小馬鹿に。馬鹿はお前じゃないか。

俺だけでなく新たに愚か者を増やしたくせに。

「女神様はあなたを復活させようとしている。そうですよね? 」

妖精の爆弾発言。もちろん今日はエイプリルフールなどではない。

確かに女神様側のミスではあるけれどそれでも何だかしっくりこない。

今までの苦労は何だったのか? 


「まさか帰れる? 」

その可能性があると妖精は言う。だが女神様は黙ってしまう。

「女神様! 女神様! 」

<可能性があります。あなたの魂は完全には失われてはいなかった。

そもそもどの魂もまだ現世にあるのです。

現世と異世界とでは時間の進み具合が違います。

あなたが発見されたのは実は七時間後。今から一時間前の出来事です。

だから仮の魂がここに。そして異世界に旅立ったのです>


「まったく意味不明なのですが? 」

<あなたの心臓は一度動かなくなりました。ですが発見時に動き出したんです。

奇跡的に動き出した。要するに仮死状態だった。そして再び心肺停止に>

「おいおいそれなら救えるんじゃないか? 」

<はいあなたが現世に戻る意思がありその方法が分かれば…… >

「意思はもちろん! 戻り方は分からないの? 」

<ですからあなたのような方は初めて。超レアケースですので。

そもそも戻し方など存在しないはず。でも何らかの方法があるかもしれませんね>

女神様でも分からないこと。これは期待できそうにないな。


「期待させるだけさせて…… そうだ。異世界で死亡した場合どうなりますか?」

念のために聞いてみる。あまり聞きたい話ではないが。

<ですから現世に戻れたら問題なくすべて解決です。

ただもしそうではなく異世界が崩壊した場合は残念ながら…… >

そう言うだけで具体的には何一つ。困ったな。

妖精を見るがただ首を振るだけ。


「分かりました。とにかく異世界を崩壊させないよう努力します」

決意を新たにする。

まさかこの僅かの期間に現世や女神様たちに変化があったと?

<あなたが無事に現世に帰れるように祈っています>

うわ…… 女神様が祈りだしたらお終いだ。女神様の力で何とかしてくれないと。


こうして訳も分からずに異世界へ。

ううう……

とんでもない展開になってきたぞ。

もう生きてるんだか死んでるんだか分からない。


                  続く

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