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落とし穴 二度目の落下

お宝探し中のノア。

案内役の男が姿を消し幼馴染と二人きりに。


「この像って動くんだね」

「ああそうらしいな。本当にびっくりしたぜ」

像は百八十度回転。

石碑に書かれていたお宝を示す方角は北ではなく南だった。

要するに川ではなく反対にある草むらが答え。


この草むらに何があると言うのだろうか?

ボクの身長を超える高さまで伸びた草木。

まさか草を刈れとでも?

とりあえず近づいてみることに。


「気を付けてノア。何かあるかも」

ブシュ―は心配性なんだから。こんなところに何かあるはずがない。

「ほら大丈夫。ただの鬱蒼とした草むらだ。来てみな? 」

「ねえ本当に危険じゃない? 」

ボクを信用してないのか一歩一歩確認するように。

早くしろよな。驚かしちゃおうかな。

まずいまずい。アーノ姫みたいについふざけたくなる。


「ボクがこうしてられるんだから何も危険はないよ。ほらブシュ―」

「じゃあちょっとだけ…… 」

そう言って近づくとバランスを崩したとばかりに抱き着こうとするブシュ―。

「うわ…… 押すなって! 」

「いいでしょう? これくらい幼馴染なんだから」

大変ご立腹のブシュ―。なぜお前が腹を立てる? 

いくら幼馴染でも時と場合を考えろよな。


「もうしょうがないな。さあ…… 」

石碑の確認に戻ろうと振り返った次の瞬間滑って土を食う。

「うわあああ! 助けて! 」

「ちょっと何を…… 」

訳も分からずに体が落下。


生い茂った草木で隠れていたが落とし穴になっていた。

誰かが掘っていたとかではなく自然にできたものだろう。

ここは普段は誰も近づかずに草むらとなっている。

危険はないと放置していたのだろう。


落下したところからさらに下へ。地下へと繋がるであろうトンネルが姿を見せる。

このままではどうせ這い上がれないのでトンネルを下ってみることに。

一度ならずも二度目まで。どうしてボクって落ちやすいんだろう。


現世での最後の記憶が蘇る。

確かあの日近道をしようと工事中の道路へ。

しかし運悪いことにマンホールのフタが開いており暗かったこともあり穴の底へ。

そして女神様のところへ。そこからこの世界に転生。

随分昔の思い出に思えるがまだ十日も経ってない。

おっと…… 今は思い出に浸ってる時ではないな。


草むらは落とし穴に。そこには地下へと繋がるトンネルが。

トンネルで一気に下る。

「おいどこに行った? 」

いつの間にか案内役の男が戻って来たらしい。

大声で呼びかける男。しかしこちらの声は届かない。

「おーい! どこだ? どこにいる? 」

頭上で男の声が響く。

「うわ…… また消えたよ。これはもう呪いだな。

金輪際近づくのはよそう。この辺りを封印した方がいいな。ああ怖い怖い! 」

強面の案内人の声が徐々に遠ざかっていく。

まったく何一つ捜索もしないで置いて行きやがった。無責任なんだから。


「ねえ大丈夫? 」

そう言ってボクの背中を蹴る彼女。

「ちょと重いんですけど…… 」

「だって…… 仕方ないでしょう? 」

「いいから早く降りてくれ! 重くて苦しくて動きが取れない」

幼馴染がこれほど重いとは思わなかった。

「お前また太っただろ? 会った日よりも重くなってないか? 」

つい大げさに言ってしまう。

でもたぶん一キロ以上は太ってるはずだ。

そんな塊が目の前に降ってくればどれだけ重いか。


落とし穴からトンネルを経由してダンジョンへ。

こうして二人はダンジョン探索を開始する。


「なあ暗くないか? 」

「心配しないで。腕を掴んでるから」

真っ暗な上に腕まで思うようにならないなんて最悪だな。

早く光を得ないとまずいぞ。

落とし穴である以上そう簡単には戻って来れないだろうな。

落とし穴方向から多少光は差すがそれでもここにいたら野垂れ死ぬだけ。

ダンジョンの奥へ踏み入れるしかない。

でもそのダンジョンもどうなってるかまったく分かってない。

最悪地図でもあればいいんだが。

このダンジョンを攻略するには光と地図を手に入れること。

さあ一歩ずつ前へ。


その頃魔王様は。日課の散歩。

前はカンペ―キがお供をしてくれたが今は面倒だと一人で。

魔王の自覚がないと側近に言われるがこれくらい自由はあってもいいよな?

人間の住む境界付近まで来てしまった。つい歩き過ぎて……

このままでは大騒ぎになる。カンペ―キもいないので変装もできない。


うおおお!

後ろから突如叫び声が。振り向くと男が剣を手に向かって来る。

うん…… 人間ではないか。後ろから? 先ほどから付けられてたことになる。

この魔王様へ何か用があるとでも言うのか?

「魔王覚悟! 」

目の前には目がうつろな男が何事か喚いている。


うん…… これは何だ? 血か? だがこれくらいどうってことない。

貫いた刃は名刀と呼ばれるもので切れ味は鋭い。

もし差し込まずに切り捨てたらいくら魔王様でもただでは済まない。


「何のつもりだ…… 」

「ははは! 間抜けな野郎。俺がずっと付け狙ってたのを知らず一人歩きとはな」

もう成敗した気でいる。そこまで間抜けではないだろうが。

「最後に一つだけ教えてくれ? なぜこの魔王様を狙った? 」

こんな奴に見覚えはない。

魔王様とは忌み嫌われ恨まれる運命と聞くがこいつの真意が知りたい。

「いいだろう。望みとあらば教えてやろう。俺はお前に直接恨みはない。

それどころか逆に感謝してるぐらいだ。お前の首には相当な金がかけられている。

もう信じられないほどの賞金額がな。だから俺はお前を狩ったんだ! 」

「では恨みはないと? 」

「ああもういいだろう? 魔王も往生際が悪いな」

そう言って大笑い。もう勝った気でいるらしい。


                続く

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