新たな指令 異世界に散らばった愚か者を探せ!
再びの始まりの地。
なぜか再び戻されてしまう。
目の前には顔を赤らめ怒りの表情を隠さない妖精。
「あなたね! 」
言いがかりをつけようとする妖精。
ずっと睨みつけてるのでとてもではないが目を合わせられない。
まさか俺とんでもないことをしてしまったのか?
記憶にはまったくないがもしそうなら謝らなくもない。
でもできるなら謝りたくないが。
「あの…… どのようなご用件でしょうか? 」
もうここは畏まってどうにか乗り切ろう。
妖精だって紳士的な対応されては厳しくできないだろう。
<非常事態のため無理やり呼び戻しました>
あの女神様がそこまで言うのだから相当なことがあったのだろう。
タイミング的にも妖精報告によって明るみ出たことになる。
でもそれだと俺には関係ないよね?
「非常事態? あの妖精と何か関係あるんですか? 」
大人しく最後まで聞けないのが俺の悪い癖かな。
でも非常事態と言われたどうしても急かしたくなる。
<落ち着いてください。実はあなたの後にもここに来た愚か者がいまして>
酷い言われ方。俺は愚か者などではない。普通のどこにでもいるつまらない男さ。
おっとネガティブになってはいけない。俺は立派な人間さ。
ここは現世と異世界・ザンチペンスタンを繋ぐ中継地点みたいなもの。
女神様によって転生が許された者のみが来ることができる神聖な場所。
だからある程度まともな者が来るはずだが…… なぜこうなった?
「そのバカがあなたのように分裂したのよ」
酷い罵りよう。さすがにそれは言い過ぎ。
妖精の言い方だと俺よりも後にやって来た奴がやらかしたらしい。
「分裂? 」
嫌な言い方。要するに二体に別れたと言うことだろう。
「そう。二つに分裂したの。もう知らない! 」
またしても妖精が目を離した隙に夢を見てその上懲りずに別の夢を見たのだろう。
まったく何を考えてるんだか。馬鹿なのか?
いやそれは言い過ぎか。その男だって何も知らされてなかったのだろう。
だったらやっぱり管理できなかったこの妖精のミスだろうな。
責めるべきはその愚か者でもなければ俺でもない。妖精が責任を取るべきだ。
<本当に残念です。こうなってはどうすることもできません>
悲痛な思いを訴えるがまたしても間抜けにも転生者に引っ掻き回されただけ。
奴は俺に比べて小粒のようだがな。
「それで俺にどうしろと言うんんです? 」
こっちは忙しいのに女神様は俺に頼るんだから。現状を一番ご存じのはずなのに。
「悪いんだけどがあなたに捕まえて欲しいの」
そう言って頭を下げる妖精。やけに素直だ。
怒りは俺にではなかった。逃亡した男か止められなかった自分に対しての怒り。
だから焦りと後悔からあんな恐ろしい表情を浮かべていたのだろう。
でも無関係の俺を巻き込むことないよね?
<ここ始まって以来の大惨事です>
そうは言うがしっかり監視してないから隙が生まれるんだろう?
それに最近もっと大きな大惨事があったような……
「それであなたには二人が出会わないようにして欲しいの」
「はああ? 俺がですか? 」
「そう。もうあなたしかいない! 」
もはや断れないほどの圧力。
「いや…… 」
「ううん? 」
「やってみます。やってみますから睨まないで」
「ははは…… 余計な手間取らせてごめんね。それで彼はワーリー」
その男の名前はワーリーだと言う。
異世界では村人Aだと言う。もう一人も似たようなもので手がかり一つないそう。
うわ…… これは骨が折れそうだ。
村人Aと村人Bを探すことに。
クエスト発生。ワーリーを探せ!
異世界に散らばった二人を探すことに。
「でも女神様。俺にどうしろと? 」
<ですから二人が出会わないようにするのです。以上です>
嘘…… それはない。誰とも知らない二人を会わせないようにしろなど無茶苦茶。
まあいいかと安請け合いは絶対にできない。どこの誰とも分からない者の相手。
それほど大変なことはない。
ただ無理やり押し付けられた感はあるが目標を失いつつあったからいいか。
再び異世界へ。
魔王の住処。
「どうされました魔王様? うなされていたようですが」
「ボグ―! 」
気づかれないように冷静に。
「魔王様それでいかがでしたか? 」
「悪くないできだ。新たな隠れ家には最適だな」
「そうでしょうそうでしょう。やはりクマルよりカンペ―キの方が頼りになると」
「ああ今回はな。それよりも最近おかしな噂を聞いてないか?
どうも人間界に異変が起きてるらしい」
「はあ? 人間に変化が? 」
驚いてる様子。それはそうだろうな。俺だって聞かされたばかりだからな。
「そうだ。奴らの動きを察知してるのだろう? 」
対立国の監視を未だに続けている。
「気にし過ぎでは。取り立てておかしな動きを見せた者はいませんが」
「そうか…… 引き続き何か分かったら知らせてくれ」
「それでは魔王様が本格的に動く時がやって来たのですね? 」
おいおい魔王様を買い被り過ぎ。
「当然だろう? 大人しくしていられるか! 」
モンスターたちの情報網を当てにしてみたが限界がある。
「そう言えばクマルはまだ戻らないのか? 」
「はい。お伝えしたようにどこをほっつき歩いてるやら……
あのクマルですからははは…… 」
奴なら何か知ってそうだったのに。
「では戻ったら来るように伝えてくれ」
こうして打てる手は打つ。
「ではお楽しみの例の奴をどうぞ」
そう言うと女の子たちが集団でやって来た。
「ほら魔王様。お脱ぎになってください」
「ははは! よかろう。この魔王様を捕まえるがいい」
沢山の女の子を侍らして至福の時間を満喫する。
うわ…… もう我慢できない。
興奮し過ぎて自分を見失ってしまいそう。
「ははは…… こっちだこっち」
あれ? こんなことしていていいのかな?
続く




