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鬼のいない鬼ごっこ

魔王様の隠れ家。

「暇だな…… どれだけ暇なんだ」

あまりにも退屈な世界につい刺激を求めてしまう。

おっと聞こえたらまずいよなやっぱり。

魔王様の威厳にも関わる。


実はアーノ姫以上に暇を持て余している。

動き回らずにどっしりと構えるのが魔王様だからな。

しかも人間がほとんど寄りつかない隠れ家。遭遇する心配もない。

危険なのは出掛ける時。今回のように視察旅でばったり会ってしまうことも。

その時は魔王様では対応できないから他二人が気をつけるしかない。


それにしても遭遇しかけたあの二人は無事に切り抜けられたのか?

結局立場が違えど三人は運命共同体。

世界が消滅しないように鬼のいない鬼ごっこを続けるしかない。

魔王様にとって異世界消滅はある意味成功と言える。

それでも自らの手で世界を地獄に落とすのが魔王様本来の目的。


新隠れ家候補地視察を終えた魔王様は元の住処でただ座っているだけ。

「暇だな…… うーん本当に暇だ」

魔王様らしからぬ発言に皆驚きを隠せずにいる。

「恐れながら魔王様。まだ何も達成されていないではありませんか」

代弁者として右腕として信頼を置いていたが最近小言が多くて困っている。

「それはどういう意味だ? まさか魔王様のやり方が気に入らんと言うのか? 」

機嫌が悪いのではない。ただその言い方では頭にくるのも当然のこと。

魔王様はどうであれ我慢してはならない。それほど恐れ多い存在。

だからこそ畏怖の対象ともなる。


「滅相も…… いえ今一度お考え直しください。

姫を攫い国王を意のままに操る絶好のチャンスになぜ動こうとしないのです? 」

そこを突かれると弱い。なぜ動かないかそれは単純だ。

準備に手間取ってるからというのは嘘で戦いたくないだけ。

戦いを仕掛けたくない。余計なことをすればするだけ自分に返って来る。


「よかろう。望み通り攻め込むとするか」

我々の目的は人間を一人残らずに全滅すること。

それが当初の目標。

今はいかにして無益な争いをしないかそれにシフトしている。

モンスターだって無限ではない。いつかは尽きてしまう。

大人しくしてるのも手。動かないことがどれだけ大変か分かっていないのだ。

無益な戦いをしないと決めたらとことん貫くべき。

それがこの世界の平和につながるのだから。

おっと魔王様らしくないな。これ以上疑われるのはまずい。


「ボグ―! 」

「真面目にお考えください! 」

「分かった。分った。冗談だ冗談。それでどうしろと? 」

「恐れながら攻め込むべきかと。今はその時だと思われます」

機は熟したと主張。

まったくぶれないな。もう言い訳も言い逃れも難しそうだ。

しかし作戦を立てるにしてもな……


「クマルを呼べ! 」

こんな時に絶対に役に立たないのがクマルだ。だからこそ頼りなる。

「クマルでしたら張り切ってどこかへ」

そうだった…… 姫の護衛に回したんだった。

これも魔王様のためと言ってくれるからありがたい。


「それで魔王様。クマルの処分はどういたしましょう? 」

「処分? 何のことだ? 」

充分魔王様の思惑通りに動いてくれてるからな。

表彰すれども処分するなど考えられない。


「また甘やかす気ですか? クマルは処分を受けるべきです」

「しかし…… 」

「これは我々の総意です。なあお前たち」

下っ端を巻き込んでのクマル叩き。どうした? クマルには人望がないのか?

日頃のクマルではあるはずもないか。

とは言えクマルだって魔王軍の一員。仲間割れは見苦しいぞ。


「ボグ―! 」

「またそのようにふざけて。処分を考えるのが魔王様の務めではありませんか」

「分かった。分った。それでどうしろと? 」

言ってくれなければ何も答えようがないではないか。

「クマルを捕らえ八つ裂きにすべきでは。一同の総意ですのでお考え直し下さい」

「どうせ嫌だと言っても無駄なのだろう? 」

「魔王様はクマルを甘やかしすぎました。これでは他の者に示しがつきません。

いつか必ずその甘えが魔王様を窮地に追いやることに。それでもよろしいと? 」

「ほうよく言えたな」

「この際だから言わせてもらいました」

一歩も引かずに膠着状態。


「ではクマルを呼んで来い! 今すぐ片を付ける」

もうアーノ姫の側には置いておけない。

クマルが処分されるなりして失脚すれば実質カンペ―キ時代が到来してしまう。

そうすれば服従していたカンペ―キも牙を剥くかもしれない。

今のうちに芽を摘んでおくべきだろう。


「それがどこへ行ったやら…… 報告も怠る間抜けぶりでして」

呆れる。それにつられて笑いだす手下たち。

彼らは確かに行方を追えてないのだろう。

しかしこの魔王様は何でも見お通し。

今クマルは姫と行動を共にしている。

北の世界で右往左往の真っただ中。

これ以上の危険は冒せない。

だったら人を変えればよいだけ。


「おいクマル兄弟を呼べ」

知ったのは間抜けにも宮殿襲撃で誰が先制攻撃をするかで揉めていたあの時。

みっともない兄弟喧嘩。しかも誰も頼りにならない。

「はあ…… あの役立たずは呼んでも恐らくは来ないでしょう」

断定するから恐ろしい。

まさかコントロール可能なのはあの兄。一番上のクマルだけなのか?

「そうか残念。では仕方がない。ここはクマルが戻るまで大人しく待つとしよう」

こうしてクマルはどうにか処分を免れた。


                  続く

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