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ハプニングの予感

勇者・ノアのターン。

国王よりお暇を頂きゆっくり骨休め。

ホットスプリングのある田舎にでも行こうかと馬車を走らせる。

なぜか幼馴染のブシュ―だかブスだかがついて来る。

これはあらゆる意味でハプニングの予感。


「ほら告白したいことがあるんでしょう? しっかり! 」

どう言う訳か壮大な勘違いをしている彼女。期待されても困るんだけどな。

「いや何でもない…… 」

「ちょっと! 怖気づいたの? ふふふ…… 」

からかうように笑いだす。

「いや君が嫌なんじゃないかと思ってつい…… 不器用だから」

「何だ気を遣ってくれるんだ。優しい。そう言えばあの時もそうだった…… 」

いきなり過去を語り始める。やめてくれよな心臓に悪い。この展開はまずいぞ。

話せば話すほどボロが。沈黙を貫くにも限度があるしな。


ボクは彼女のことをほとんど何も知らないし覚えてない。

そもそも名前だってあやふやなのに。ブシュ―だかブスだか。たぶんブスでしょ。

でも直接訪ねる勇気もない。

君の名は? そんな風に問えるはずがないじゃないか。

あーあ妖精にメモを残してもらえばよかったな。

仕方ない。ここは開き直って自分を信じてみることに。


「ブス…… 実はボク…… 」

「覚悟を決めたのねノア? 」

「ブス…… 実はこの世界の住人じゃないんだ! ボクは! ボクは! 」


バチン!

怒り任せのビンタが飛んでくる。もう意味が分からない。

ヒリヒリする頬を庇うも束の間再びのビンタ。

一体ボクが何をしたって言うんだ? もう嫌になるぜ。 

「そうやってまた私をからかう! あなたはいつだってそう。

肝心な時はいつもはぐらかすんだから。最低! 」

うわ滅茶苦茶言われてる。でもそれはボクじゃない。元の勇者さんの責任だ。


「済まないブス…… 」

「それとさっきから誰に向かってブスって言ってる訳? ぶっ飛ばすわよ! 」

ついに本性を現した幼馴染。どうやら冷静ではいられないらしい。

そこまで言わなくたっていいのに。

「ブスなだけに? 」

「舐めた口を利くんじゃないわよ! 」

怒りで頬が紅潮する。

まずい。これは非常に危険な状態だ。一体何がそんなに気に入らないんだ?


「許してくれ。ボクたちの仲じゃないか」

どうにか幼馴染を宥め許しを請うがどうやらそれでは収まりそうにない。

「許しません! いつだったかそうやって私を試した時があったでしょう? 」

うわまた唐突に昔話に引き込んでいく。これはまずい。ここは一つ正直に。

「ボクは本当はサラリーマンなんだ! 」

もう真実を告白するしかない。それで分かってもらう。

ボクなりのやり方で彼女に誠意を見せる。


バチン! バチン!

どう言うわけか往復ビンタの憂き目にあう。

あれおかしいな…… どこか間違っていたかな? まあいいさ。

「ふざけないでノア! 何がサラリーマンよ。

まったく小さい頃から何一つ成長してないじゃない! 」

軽蔑の目を向けられてしまう。

「ははは…… そうかな」

頭を掻いて笑って見せるが許してくれそうにない。ボクが何かした?

「魔王だとか何とかマンだとかいい加減そう言うのはやめて! 」

魔王様は実際いるんだけど。サラリーマンだって元の世界にはいるよ。


「ボグ―! 」

バチンバチンドン!

ビンタにパンチまで入った。これっていつまで続くの?


「ねえダーリン。さあそろそろ着くわよ」

いきなり態度が変わる。どうなってるんだ?

「そうか。もうすぐか」

もうボロボロ。反省した振りして下を向くことに。これで余計な話をしないで済む。


「ねえダーリンったら」

うわこれは分かるぞ。キスを要求してるんだよな。

でも俺最近してなかったからな。ついさっき王子にはされたけど。

それはそれ。これはこれ。


「そうだ。王子と踊ったことは? 」

「ないけどそれが? 」

「王子に誘われたことは? 」

「ないけどそれが? 」

「王子に求婚されたことは? 」

「ないけどそれが? 」

「王子にキスされたことは? 」

「ないけどそれが? 」

どんどん紅潮していく彼女。これは危険な兆候?

果たしてこのまま続けていいのか不安になる。


「ほらね。ボクはあるんだぜ。それで…… 」

間接キスしてあげようかと思ったがどうも様子がおかしい。

ここは一旦踏みとどまることに。


「嫌かい? 」

「嫌に決まってるでしょう! あんた馬鹿なの? 」

「でもキスしたがっていたから…… 」

「それはそうだけど…… 王子とキスって何それ? 」

つい口を吐いてしまったがまずかったかな?

喜ぶと思ったんだけど…… どうやら勘違いらしい。


「もう知らない! 」

「いや…… 知り合いの王子がキス魔でね。誰にも彼にもするものだから。

だからその味をと…… 」

どんどんおかしな方向へ。これはまずい。自分でも何を言ってるのか分からない。

「もう寝る! 着いたら起こして! 」

怒り狂った彼女はもう寝るからと口も利かなくなった。

ラッキー。これでいい訳もごまかしもせずに済む。

さあゆっくり今後のことを考えよう。



その頃魔王様の隠れ家では。

「魔王様! カンペ―キが新たな隠れ家の候補地を見つけたそうです。

一度見学なされるようにとのことですが」

「ほうカンペ―キがな。それは仕事が早い。うむ。よかろう」

「さっそく参りましょうか。そうそう今日は女の子たちはキャンセルですね? 」

何てタイミングの悪い時に…… くそ…… 恨むぞカンペ―キ。


「ボグ―! 」

「まさか魔王様ともあろうお方が現を抜かすつもりではありませんよね? 」

そう迫られては弱い。さすがに信頼する者を裏切れないしな。

「ボグ―! ボグ―! 」

「そうですよね。魔王様とあろうお方がそんな軟弱な真似はなさいませんよね? 」

「ボグ―! 」

「ではさっそく参りましょうか」

「ボグググ…… 」

「その表情は何ですか? さあ急ぎますよ」


こうして視察に向かうことに。


               続く

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