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誰も信じてくれない!

引き続き宮殿。勇者・ノアのターン。

ボクの予言通り宮殿襲撃は失敗に終わり敵は敗走した模様。

ついに狭い地下牢から解放される運びとなった。


再びの謁見。

「おお来たな隊長」

首を長くして待ちわびた様子の国王。

信頼の証としてお付きをつけずに一人で臨むそう。

ここまでされてはやる気も出ると言うもの。期待に応えようと思う。

宮殿での刃傷沙汰はどうやら不問に付すようだ。

少々甘い気もするがそれが国王の判断なら黙って従うだけ。

「国王様! もう隊長ではなく…… 」

「謙遜はいい。再び部隊をまとめ上げてくれないか? 」

国王上機嫌。敵が訳も分からないうちに退却し勝利したのですこぶる機嫌がいい。


「しかしあのようなことを起こした後では反発する者もいるのでは。難しいかと」

もう一隊員で充分。隊長は責任もあるし面倒ごとも多い。誰が好んでなるものか。

「まさか国王に謝れと言うのか? それなら用意がある」

何と国王は本気らしい。しかしそう問われては否定するしかない。

ずるい。本当に国王はずるい。

頭を下げる振りまでしてボクを意のままにコントロールしようとするんだから。


「いえそのようなことは何一つ…… 」

「では隊長に復帰するな? 」

「はは! ありがたき幸せ! 」

「よしそれでいい。それでこそノア隊長だ」

国王に認められ煽てられて悪い気はしない。

できるならアーノ姫にでも褒め称えられたらな。それがボクの偽らざる気持ち。


再び隊長となった。嬉しいんだか悲しいんだか。

だがやはり隊長復帰は喜ばしいことだろうな。

何と言っても自由に動き回れるのがいい。

もう消滅まで残り僅か。自由の利かない地下牢でただ果てるのだけは勘弁。


「それでお前には今後のことを聞いておこうと思う。

再びこの宮殿が襲撃されるとは真か? 」

真かと言えば事実。しかし相手はあのクマルだから放っておいても恐らく大丈夫。

「ハイ残念ながら。魔王軍によって今日にでも襲撃されるのではと見ています」

「それは奴らが手を組んだと? 」

単純な国王。なぜ小国の王ごときに魔王様が共闘しようと言うのか?

どちらからと言えば魔王軍と手を組んでるのは我々ではないか。


「いえ…… そうではありません。ボクが襲撃するよう命じました」

見当違いなことばかり言う国王につい真実を伝えたくなる。

もはや裏切ったと言っても過言ではない危険で愚かな発言。

国王もカンカン? 直視できない。口が滑ったでは許されない。

ただ再びボクを信じてくれるならばすべて嘘偽りなく告白すべきだろう。

それでたとえ再び囚われようとも本望。処刑は嫌だけどね。


「冗談はさておきお前は今日にでも襲われるとな? 」

国王はさらっと流す。これは全幅の信頼を置いた証? それとも本当に冗談だと?

どちらにしても国王はボクを頼りにしてるのは間違いない。

期待しているのだろう。だから全力で応えたいと思う。

「はい。ですから地下の猛者どもを自由にし我が隊に加えたいと考えております」

「ほう。奴らは使えると? 今度の戦に有効だとそう申すのだな? 」

「間違いありません! 」

「よい。そのようにするとしよう。それでは隊長頼んだぞ! 」

「はは! ではご命令を! 」

「この地の平穏を乱す輩をすべて駆逐せよ! 」

「このノアにお任せください! 」


こうして魔王軍撃退の指揮を授かった。

これでいい。これですべてうまく行く。

さあクマルよ。そろそろ掛かってくるがいい。迎え撃つぞ。



廃屋。アーノ姫軟禁中。

それにしても暇だな。何かやることはない訳?

読書は眠くなるし掃除も草むしりも雑用もすべてクマル任せだから。

やれることって本当に限られてくる。

せめてお客様でもいればいいんですが。いるのは小動物ぐらい。

それはそれで癒されますが…… 


きゃああ!

つい大声を出してしまう。ただのクモに情けない。でも姫様ですから。

「ちょっとお願い! 」

魔女を呼びつける。

一体何の騒ぎと嫌々やってきてため息を吐かれるのでクモを見せる。

「クモですが何か? 」

「知らないわよ! 早くどこかに捨ててきて! 」

「もう本当に人騒がせな姫様なんですから」

そう言って自分の部屋へ戻っていく。

それっきり魔女は自分の部屋に籠ったきり相手もしてくれない。


お父様はお元気でしょうか…… ああ辛い。こんな森の奥で軟禁されて。

ふふふ…… 何てね。お父様なら先ほど謁見したばかり。

元気にしてた。ボクに頼ってばかりで情けない。

クマルに命令したのだってボク。

あーあいつまで一人三役やらなければならないのでしょう?

そろそろ飽きてきた。特に姫は何もやることがなく退屈この上ない。

お付きの者もどこかへ消えてしまい魔女と二人きり。

お助けキャラのはずの魔女は暴走気味。

大事なお世話を放って一人部屋に籠っている。

また片手間に何かよからぬことを考えてるのでしょうね。


「ねえお食事はまだ? 」

部屋に閉じこもったきり出てこない。

出てきたと思ったらはいはいといい加減な返事で相手にするつもりがないらしい。

まったく何を考えてるのでしょう?

もしかしてまた毒リンゴを作ってるの?

「大人しく読書でもしてな。暇つぶしに付き合うつもりはないからね」

きっぱり言うのは忙しいからで何かまた悪さを企んでいるため。

すべて分かってるんだから。


前回は名もなき田舎娘を救った。

それは偶然毒リンゴを作ってるところを目撃したから。

でも今回はそうもいかない。悟られないように部屋に閉じこもっている。


まさか気づかれた? それはないか……

とにかく今度も面白そうだし邪魔をしてみますか。

何だか物語の根幹が変わっていくようなそんな予感。


                 続く

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